『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第57話

 

当時パオズ山に住んでいた、亀仙人の弟子である老人の方の孫悟飯。

彼はある日空から飛来した物体を隕石かと思い、墜落地点に確認に向かった。

しかしそこにあったのは金属の球体で、その中には赤ん坊の姿。

状況はまるで分らなかったがこのまま放置しては赤子が死んでしまうと思い、彼は赤子を『孫悟空』と名付け育てることにした。

 

拾ったばかりの悟空はとんでもなく気性が荒かった。

力も非常に強かったので、悟飯はほとほと困り果てていた。

しかしある時、悟空は誤って谷に落ち頭を強打した。

孫悟飯の献身的な看病と持ち前の恐ろしい生命力で悟空は一命を取り留めた。

そしてこれを境に悟空の性格が豹変し、大人しく聞き分けの良い子供になった。

 

そして悟飯と悟空のやり取りをヒノカミはずっと天から観察していた。

凶暴なまま成長し人々に害をもたらすならば処断せねばならぬかと覚悟していたが、これならば問題なかろうとヒノカミは胸をなでおろした。

 

それでも念のため二人の観察を続けているとやがて問題が発覚した。

悟空は満月を見ると、凶暴な大猿に変貌し我を忘れて暴れまわることがわかった。

幸い一度目は悟飯の奮戦により事なきを得たが、放置すればまさしく地球の危機。

年老いた彼一人に重荷を背負わせるわけにはいかない。

 

「よって儂は端末を悟空のもとに向かわせた。

 万が一の時には、力尽くで止めるために。

 ……これが、儂が悟空のもとにいた理由の全てじゃ」

 

「「「…………」」」

 

悟空が大猿に変貌することを知っているブルマとヤムチャすら言葉を失っている。

その場にいた全員が、恐る恐る視線をヒノカミから悟空に移す。

 

 

 

「……はぁ~、オラ宇宙人だったんかぁ」

 

 

「「「ゆるっ!?」」」

 

多少驚いた顔をしているが気の抜けた悟空の声を聞き、ヒノカミすらもその場で崩れ落ちる。

 

「じゃあ『満月の夜に出る大猿の化け物』ってのはオラのことだったんだな。

 ん?でもブルマが神龍にやっつけてもらったって言ってなかったか?」

 

「あ、アンタが変身しないようにって神龍にお願いしたのよ!

 なんでアンタが一番平然としてんの!?」

 

「つったってよぉ……『今ここにいるオラ』がオラだしなぁ。

 オラがどこの誰だとしても、突然なんかが変わるわけでもねぇし……」

 

「……!」

 

悟空が何でもないことのように放った言葉こそが、ヒノカミが長年をかけてようやく辿り着いた真理だった。

生まれ、死に、また生まれ、そして死に。

何度も人生を繰り返してきた彼女はずっと『自分がここにいてもいいのか』という悩みと共に生きてきた。

しかし平行世界をさ迷って、多くの人々と触れ合い支えられ、彼女は彼女なりの答えを導き出した。

 

(余計なお世話、じゃったなぁ……)

 

悟空はそれを本能で理解している。

物事は思っているより単純なものだ。それを難しく考え難しいものにしてしまうのが人間だ。

自分が気付かぬ間に、自分などよりよっぽど強い人間に育ってくれた。

 

(もう子供じゃない、か)

 

年齢だけの話ではないが、未だにどこかでそう思っていたのかもしれない。

悟空は立派な大人になった。

ヒノカミが気付かう必要もなかったし、気負う必要もなかった。

 

 

「……かかか!まぁ儂も『異世界人』じゃしな!」

 

「「「はぁ!?」」」

 

「かつて大魔王の支配に苦しむ人々の救いを求める声に、先代さまは応えることができなかった。

 故に『異界』の神である儂にその祈りが届いたのじゃ。

 そんで儂はこの世界に訪れたわけじゃな。かかか!」

 

「ふざけるなっ!どういうことだそれは!?」

 

「そのまんまの意味じゃよ。

 異常や超常も案外ありふれておるということじゃ。

 かく言うお主も怪しいぞピッコロよ。

 能力も生態も地球の生物とはまるで異なるではないか。

 案外お主と先代さまも宇宙人だったりしてな」

 

「……ふぉっふぉっふぉ。

 たしかにピッコロの方が悟空やヒノカミよりもよほど人間離れしておるわい」

 

「見た目だけでしょ?

 頭と中身のぶっ壊れ具合ならヒノカミがぶっちぎりよ!」

 

「かかか……結局何が言いたいかというと、近隣の他の惑星を無視して地球を目指して来たということは悟空が目当てである可能性が高い。

 そして悟空が地球に送られて来たことを知っておるということは、悟空に近しい者である可能性が高いということじゃ。

 フリーザ軍なんぞに所属しとる時点で碌な人間でないじゃろうがな」

 

「……ってそうだ!侵略者が来るんだった!

 だ、大丈夫なんですか!?」

 

「もう10分そこいらで到着するじゃろうな。

 しかし近づいてきたことでそ奴の実力を推し量ることもできた。

 この程度ならお主らで事足りる。儂が出るまでもなかろう」

 

「よかったぁ……え”?ボクらだけで戦えってことですか!?」

 

「近隣の星でフリーザ軍相手に暴れまわっとる儂が地球にいると感付かれる方が不味いからな。

 儂は端末で同行する。なぁに、死んでもちゃんと蘇生してやるわい」

 

「オレたちもすっかり命が軽くなっちまったよなぁ……そりゃ死んだままよりはいいけどさ」

 

「これより転移で向かう。

 亀仙人、ブルマ、チチ、悟飯は悟空の家で待っていてくれ」

 

「おとうさん……」

 

「悟飯、おかあさんを守ってやるんだぞ!」

 

「うん!」

 

「気ぃつけるだぞ、悟空さ」

 

「ちゃんと帰ってきてね、みんな!」

 

「あぁ!じゃあ行ってくる!!」

 

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