『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第59話 ラディッツ

 

チチと結婚し家庭を持った頃、悟空は己の身の振り方に悩んでいた。

悟空は過去の冒険で一生かかっても使いきれないほどの財宝を手に入れていたし、義父となった牛魔王もまた同様。

はっきり言って、働く必要はない。

しかし『大人として責任を持った行動を心がけるように』とヒノカミから口を酸っぱくして言われているため、無責任に好きなことだけして生きるわけにはいかないと理解していた。

だがやりたくない仕事や合わない仕事を始めても長続きする気がしない。できるなら『続けたい』と思えるような仕事が理想だ。

 

悟空はチチと牛魔王と話し合い、ヒノカミや亀仙人にも意見を求め、やがて思い至ったのが『畑仕事』。

亀仙人の下で修業していた頃は重い亀の甲羅を背負い、訓練を兼ねて色々な仕事をしていた。素手での畑仕事もその一つだった。つまりわずかだが経験がある。

何より悟空は修行も好きだが、食べることも大好きだ。

だから自分で美味しい野菜を作ること、ついでに料理もできるようになることは趣味と実益を兼ねた立派な仕事ではないか、悪くない考えだろうと胸を張ってチチとヒノカミに同意を求めた。

どれだけ作っても自分で全部消化してしまうだろうから仕事と言えるのか怪しいが、本人もやる気があるようだしチチやヒノカミは苦笑しつつもそれに賛同した。

 

しかし今更ちょっとやそっとの重りを付けたところでまともな修行にはならない。

過剰に身に付ければ大きすぎて邪魔になるし、それこそ畑の土と作物が踏み固められて台無しだ。

だからその代わりにと神のヒノカミが用意したのが『呪霊錠』。

彼女の霊力で作った特殊な枷はそれを身に着けた者の力を大幅に制限する。

霊光波動拳継承者は代々この技を使って後継者を育ててきた。

悟空を後継者にするつもりはないが、ヒノカミは使えるものなら何でも使う派だ。実際に過去も他の者たちのトレーニングにギプスとして使用している。

 

この修行は見事功を奏し、悟空は仕事をしながらメキメキと成長した。

彼の修行法を聞きつけたヤムチャたちやピッコロさえもこぞって同じものを用意するように頼んできた。

大幅に力を制限されても元のスペックがとんでもないので十分以上に超人だ。これで彼らの日常生活すべてが修行となった。

しかも成長する度に枷の力を強くすれば、いつまでもどこまでも鍛え続けることができる。

生活面での不自由なく、肉体的に不自由な状態を維持できると修行中毒者たちもご満悦だ。

 

そして呪霊錠を用いた日常生活という修行を始めて5年。

悟空たちはかつてとは比べ物にならぬほど強くなっていた。

最低ランクとは言え、フリーザ軍の上級戦士に当たるラディッツですら手も足も出ないほどに。

 

「……そんなハズはない!スカウターの故障だ!!」

 

彼以外の二人のサイヤ人はエリートであり、その戦闘力はラディッツより遥か上。

そして5000と言えばその内の一人と同格。落ちこぼれの下級戦士として飛ばし子にされた弟がそんな力を身に着けているはずがないと、ラディッツは攻撃を加える。

 

「づぇあっ!……!?」

 

しかし渾身のパンチはあっさりと受け止められてしまった。

 

「くっ……はぁーーーーーーっ!!!」

 

それでも果敢に猛攻を続けるが、全て片腕で受け止められてしまう。

 

「はーっ、はーーっ!ば、馬鹿な……!?」

 

「……だぁっ!!」

 

「ぐおぅっ!?」

 

そして悟空の反撃、たった一度のパンチがラディッツの腹にめり込む。

 

「お……ご、あ……!

 こんな……ことが……!?」

 

「無駄だ。おめぇじゃあオラにゃ勝てねぇ」

 

膝をつき腹を押さえ、ラディッツは蹲る。

信じがたくとも信じるしかない。目の前の弟は、本当にエリートに匹敵する戦士に成長していたのだと。

 

「た……け……」

 

もはやラディッツに勝ち目はない。

彼はサイヤ人の中でも非常に珍しい、小心者で臆病者。

生き延びるためなら敵に背を向けることも、命乞いすら躊躇わない。

しかし腹の痛みで満足に声を発することができず、ついに絶体絶命かと思われた。

 

 

「……けぇってくれ。

 そんで二度と地球にゃあ来ねぇでくれ」

 

「……!?」

 

だがその前にカカロットの方から見逃すと言ってきた。

 

「悟空、そ奴は数多の星々を荒らして来た悪党じゃ。

 それこそ大魔王よりもよほどのな。

 それを許すというのか?」

 

「だけどオラの『兄ちゃん』なんだろ?

 家族は大事にしろって、ばあちゃんいつも言ってたじゃねぇか」

 

「……そ奴が約束を守ると思うか?

 他のサイヤ人を連れて再び侵略してきたらどうする?」

 

「そん時ゃまたオラたちがやっつけてやるさ!

 そのくらいに強くなってみせるって!なぁ!?」

 

悟空はヒノカミの後ろにいる仲間たちに同意を求める。

真っ先に反応したのはピッコロだった。

 

「……ふん、確かにぬるい日々には飽き飽きしていたところだ。

 刺激としては丁度いい」

 

「おい!」

 

「……いえ、ヒノカミさま。オレも同意見です。

 フリーザ軍が健在でいるかぎり、いずれ起きたことだ」

 

「天さん……」

 

「ってことだ。オラたちの気が変わらねぇうちにさっさと行ってくれ」

 

「げほっ……わかっ、た……!」

 

よろよろと立ち上がったラディッツは悟空たちに背を向けようとするが。

 

 

 

『ほざいたな、落ちこぼれが』

 

 

 

「「「!?」」」

 

ラディッツのスカウターから声が響いた。

 

「ベジー、タ?」

 

「仲間のサイヤ人か!?」

 

スカウターには通信機能があり、ベジータとやらはラディッツと悟空たちの会話を聞いていたようだ。

 

『フン、そんな情けない奴は仲間でもなんでもない。

 しかしオレたちを倒すとは聞き捨てならん。

 ……こちらから地球に出向いてやろうじゃないか』

 

「「げげげっ!?」」

 

『首を洗って待っているがいい……貴様もだ、ラディッツ!』

 

「なっ……ベジータ!?」

 

『落ちこぼれに手も足も出ずに敗れ、情けを懸けられるなど……サイヤ人の恥さらしが!

 貴様もカカロット共々始末してやる!あの世で兄弟仲良くやるんだな!!』

 

「ベジータ!?ベジータ!!」

 

ラディッツは必死にスカウターに叫ぶが、通信を切られたようだ。

やがてその場で力なく崩れ落ちる。

 

「……ベジータはサイヤ人の王子だ。

 オレなんかよりも遥かに高い戦闘力を持つ……!

 オレもお前たちも、この星も終わりだ……!」

 

「おい悟空!お前があんなこと言うから!!」

 

「わ、悪かったってぇ……」

 

クリリンに詰め寄られたじろぐ悟空を余所に、ヒノカミは項垂れるラディッツに近付き胸倉を掴み上げる。

 

「ぐっ!?」

 

「他の二人のサイヤ人の情報を洗いざらい話せ!

 奴らが地球に来るのはいつ頃になる!?」

 

「ふ、二人がいる星からここまでなら……およそ、1年だ……」

 

「1年あればどうとでもなる!対策を練るぞ!貴様も来い!!」

 

「そいつも連れていくんですか!?」

 

「儂の知識は偏っておる。

 本格的に事を構えるなら事情に通じた者が欲しい。

 こうなれば一蓮托生よ。良いな?」

 

「わ、わかった……」

 

もはや反抗する気力も失せたのか、ラディッツは促されるまま頷く。

 

「よし!これよりサイヤ人の襲来に備えた会議を開く!全員神殿に集合じゃ!」

 




ラディッツ、Z戦士入りとなります。
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