『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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遂にヒロアカ編の61話(60話+最終話) を超えました。
やはりドラゴンボールは大長編漫画……加速していきますが3桁は確実に超えます。
……続けられるかなぁ、続けたいよなぁ。


第62話 界王さま

 

「うへぇ~~……でけぇおっちゃんだなぁ」

 

「これ、無礼であるぞ。

 申し訳ございませぬ、閻魔さま」

 

「い、いや、構わぬぞ。

 連絡は受けている。界王さまの下へ向かう許可であったな?

 しかしお前ならば自由に出入りして良いと界王さまから言われていたはずだが?」

 

「此度は儂一人ではありませんので、改めて閻魔さまに許可をいただければと」

 

「……殊勝な、心掛けであるな、うむ」

 

あの世を統括する閻魔大王。

宇宙全ての死者の裁きを行う資格を持つ、星の神ごときとは比較にならぬほど偉大な存在であるが、彼は目の前で深く頭を下げているヒノカミという神を苦手としている。

 

自由に死者を蘇らせることが出来る。

個人でありながら事実上灼熱地獄を内包している。

辺境の星の神でありながら自分どころか界王すら遥かに超える力を持っている。

……だというのに偉ぶった態度を取ることなく、純粋な敬意を持って自分にへりくだる。

端的に言えば、不気味でよくわからない存在だった。

 

ちなみに彼の感覚の原因はヒノカミにある。

彼女はかつて別世界のエンマに酷い目に合わされたことがあり、初めて対面する際に当時を思い出してちょっとだけ殺気が漏れてしまった。

今ではあの外道と比べるなどおこがましい立派なお方と理解しており、勝手に死者を蘇生してあの世に迷惑をかけているなどの負い目もあるので、ヒノカミは閻魔に対しては特に礼節を持って接する。

そのギャップのせいで一層不気味に映っているというわけだ。

 

「……生者を通すのは好ましくないのだが、界王さまからも連絡を受けている。

 通るが良い。蛇の道を使うか?」

 

「いえ、このまま儂が連れて行きます。

 これ以上あの世の方々のお手を煩わせるわけにはいきませぬので」

 

「そ、そうか。では界王さまによろしくお伝えしてくれ」

 

「はい。お時間をいただきありがとうございました」

 

ヒノカミは隣にいた悟空の頭を自分と同じように下げさせ、そのまま転移して消えた。

 

「……ふぅ」

 

「お疲れ様です、閻魔大王さま。

 相変わらずヒノカミさまの前では緊張されてしまうようですね」

 

「何故だろうな……休憩にしよう。茶を入れてくれ」

 

「丁度良いお茶請けがございますよ」

 

「ほぅ」

 

「ヒノカミさまから頂いたお土産の中に」

 

「……一言余計だ、馬鹿者」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……?ばあちゃん、ここは?」

 

「蛇の道の終点じゃ。

 本来界王さまに会うにはこの道を通らねばならんのじゃがな」

 

閻魔大王がいた場所からここまでの距離はおよそ百万キロと言われている。

今の悟空でも三日はかかる距離だ。わざわざ道を通るのははっきり言って時間の無駄。

ヤムチャたちの修行もある。ヒノカミは急いで地球に戻らねばならない。

 

「……で、界王さまってのはどこにいるんだ?」

 

「あそこじゃ」

 

蛇の道以外は一面に雲海が広がっている。周辺には何もない。

ヒノカミにつられて上を見上げた悟空は浮かんでいる小さな球体を見つける。

よく見れば非常に小さな星であるらしい。

 

「ゆくぞ」

 

「あ、うん!」

 

ヒノカミの後ろに続いて飛翔した悟空だったが、星に近付くと違和感に気付く。

 

「ぐっ!?な、なんだ!?引き寄せられる!?」

 

「ここは重力が強いんじゃ。気を付けろよ」

 

直接界王星に転移しなかったのもこれが理由だ。

転移直後に超重力に晒されるのは危険だろうから。

ヒノカミは軽快に降り立ったが、悟空は『ドスン』と音を立てて着地する。

 

「ウホ」

 

「おうバブルス。界王さまはいらっしゃるか?」

 

「ウッホ!ウホ、ウホッホ」

 

直径20メートルほどしかない小さな星だが、それでも界王星。

界王がこの星を離れることはまずないが、念のため丁度目の前にいた界王のペットの猿に所在を尋ね、案内するという彼の後ろをついていく。

 

「おぉ、ヒノカミか。よく来たな」

 

「ご無沙汰しております、界王さま」

 

ほんの少し進んだ先には変わった形の触覚とドジョウのような口ひげを生やした、身長は低いが恰幅の良い男がいた。

悟空もヒノカミに倣って頭を下げる。

 

「ほぅ、そ奴がお前の推薦する者か?」

 

「あ、こんちは。オラ孫悟空です」

 

「ふむ……よく鍛えられておるようだな。

 地球人がここまで強くなるとは」

 

「いえ、それがサイヤ人だったようでして」

 

「なぬっ!?」

 

既に界王には地球の状況を説明済み。

何故地球のような辺境にサイヤ人が攻めてくることになったのか疑問に思っていたようだが、直接話を聞いてようやく納得した。

 

「サイヤ人の生き残りなぁ……何故お前が直接戦わぬのかと思っていたが」

 

「この騒動の原因であるというのもありますが、こ奴なら勝ち目があるやもと思いましてな。

 ですが1年は流石に短い。そこで是非、界王さまにお力添えいただければと」

 

「『界王拳』と『元気玉』……確かにこれらを極めることができればサイヤ人すら敵ではあるまい。

 だが本当にこの者が身に着けられるのか?」

 

「『界王拳』はもう一人候補がいましたが……『元気玉』もとなれば、悟空以上の適任者はおらぬと確信しております」

 

「『界王拳』?『元気玉』?」

 

「昨日話した、界王さまが編み出した技じゃ」

 

肉体に多大な負担をかけるが自身の戦闘力を一時的に何倍にも引き上げる『界王拳』。

大自然や周囲の動植物から生命エネルギーを集めて気弾とする『元気玉』。

どちらも凄まじい技だが習得難易度はとんでもなく高く、技の開発者である界王でも極めることはできなかった。ヒノカミも同様だ。

『界王拳』だけならクリリンも可能性は高いが、彼は邪念が多すぎる。

慈愛と博愛の心が必要な『元気玉』の習得はおそらく無理だ。こちらに関してはヒノカミが習得できなかったのも同じ理由ではないかと推測している。

それは神としてどうかとは思うが、自覚しているだけまだマシということにしておこう。

 

「他ならぬお前の言葉だ。信じよう。

 孫悟空よ、儂の修行は厳しいぞ!?」

 

「わかった!ありがとう界王さま!!」

 

「よろしくお願いいたします。

 サイヤ人が地球に到着する前日には迎えに来ますので。

 つきましては……コレ、例の物となります」

 

「おぉっ!!では修行前にちょっと失礼……」

 

ヒノカミから紙で包まれた四角い板のようなものを受け取った界王は、一言断りを入れてそそくさと離れていく。

 

「何渡したんだ?」

 

「界王さまにはご趣味があっての」

 

 

 

……うははははは!ぶっ!ぷっくっくっく……!

 

 

 

「なぁ!なんか変な声がすっぞ!?」

 

「しばらくすれば収まる。それまで待っておれ」

 

「えぇ……?」

 

「では儂は戻る。頑張るんじゃぞ」

 

「うん……」

 

 

……ぶはっ!ひ~っ!ひ~~~っ!!

 

 

「…………」

 

 

結局それから1時間ほど。

界王はヒノカミから渡された『地球のダジャレ全集』に腹をよじらせ続けた。

ヒノカミ自身が収集と編纂を行った、世界で一冊だけの本だ。

地球圏全域をテリトリーで覆い、人々の会話を盗み聞きし、記憶して記録する。

その期間はなんとトータル10年。

彼女は端末で悟空を育てながら陰でこんなアホなことを続けていたのだ。

これほど無駄な力と時間の使い方もそうそうないだろう。

 

 

 

そして修行開始から約1年。

ついに二人のサイヤ人が地球へと襲来する。

 

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