『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第63話 サイヤ人襲来

 

周囲に人のいない荒野で、戦士たちが待ち構える。

 

『あと3分。覚悟はいいか?』

 

「「「おう!」」」

 

悟空、ヤムチャ、クリリン、天津飯、チャオズ、ピッコロ、そしてラディッツ。

この場にいないヒノカミの声に応えた彼らには迷いも恐れもない。

それだけの備えはしてきた。

 

『よし、では呼び寄せるぞ』

 

二つの宇宙船が落下する予測位置は東の都のど真ん中。

そんなところに降りてこられたら大惨事だ。

だから大気圏を通り抜けたところでヒノカミが宇宙船の座標を戦士たちのいる荒野の上へと入れ替える。

 

「っ!来た!」

 

彼らの視界の先、いくつかの岩山を挟んだ向こう側に、二つの球体が激突する。

 

「すげぇ気だ……こいつが戦闘力『1万8千』ってやつか……」

 

「実際に相対すればこんなものではない。気を抜くなよ」

 

ラディッツも以前はそうだったが、サイヤ人……というかフリーザ軍全体で戦闘力をコントロールする技能を持つ者はごく少数らしい。

技を使う際などに瞬間的に少し上昇することはあるが、悟空たちのように気を隠したり気を抑えて温存したりといったことが出来ないそうだ。

彼らが力を誇示する侵略者であることを思えば、そもそも隠れたり自分を弱く見せたりする理由がないのだろう。

 

 

「……くっくっく、逃げずに待っていたか。

 それとも首を差し出す覚悟ができているということか?」

 

「久しぶりだなぁ、ラディッツ。

 悲しいぜ、テメェとここでお別れなんてよ」

 

「ベジータ……ナッパ……!」

 

少し小柄で髪を逆立てた方がベジータで、坊主頭で図体がデカい方がナッパ。

それぞれ戦闘力は1万8000と4000。

 

……ラディッツとの戦いで高い戦闘力を見せたのは悟空だけ。

だから二人は『戦闘力が高いのは自分たちと同じサイヤ人であるカカロットだけ』と思い込んでいる。

周りの連中も同等の実力者と知っていれば、ナッパはこのような態度ではいられなかっただろう。

 

「で、アレがカカロットで……?

 おいベジータ、ナメック星人がいるぜ」

 

「そのようだな。

 ナメック星人は高い戦闘力を持つと聞く。

 少しは楽しめそうだ」

 

「「「!?」」」

 

サイヤ人たちの発言を聞いた者たちは、一斉に連中が指さしたピッコロを見る。

 

『……ホントに宇宙人じゃったんか?

 冗談のつもりだったんじゃが……』

 

『知らなかった……この私が宇宙人だったとは……。

 道理で”みんなとちょっと違うかなー”って……』

 

悟空たちの頭の中で神殿にいるヒノカミと先代の気の抜けた会話が響く。

 

「……」

 

『……ピッコロ、行けるか?

 ショックが大きいなら下がってよいぞ?』

 

「へっ、馬鹿を言うな。むしろモヤモヤが晴れてスッキリしたくらいだぜ」

 

その言葉が嘘ではないと示すように身構えるピッコロに、悟空やヤムチャたちも倣う。

しかしラディッツだけは無言で目を閉じ、腕を組んだまま佇んでいる。

 

「おいおいどうした、弱虫ラディッツ。

 まさかここにきて怖気づいたってんじゃないだろうな」

 

「……いや、ふと思い出していただけさ。

 まさかお前たちに戦いを挑むことになるなど、1年前は欠片も思っていなかった。

 そう……この1年……」

 

呟きを止めたラディッツがわずかに顔を上げると、目尻から一筋の涙が流れる。

 

「!?くははは!なんだソレは!?

 貴様はいつから『泣き虫ラディッツ』に改名した?」

 

ベジータに嗤われても流れる涙を止められない。

無言で静かに泣き続けるラディッツに代わり食いかかったのはクリリンたちだった。

 

「バカヤロー!ラディッツを馬鹿にすんじゃねぇ!!」

 

「そうだ!ラディッツはなぁ、凄い奴なんだぞ!

 いやもう……ホント凄かったんだからな!!」

 

「乗り越えたんだ、コイツは!あの地獄を!

 生まれと才能に胡坐をかいているだけの貴様らに、コイツを嗤う資格はない!!」

 

「はぁ?随分仲良しこよしになったみてぇじゃねぇか。

 がははは!ザコ同士お似合いだぜ!」

 

「こんにゃろ……!」

 

我慢できず飛びかかろうとしたクリリンを、ラディッツが手を広げて静止する。

 

「構わん。オレが弱虫で泣き虫なのは事実だ。

 それに語るなら言葉ではなく拳で。それが武闘家なのだろう?」

 

「!……だな!」

 

そしてラディッツは涙を拭い、ベジータたちに向かって一歩踏み出す。

 

「ふん、ようやくやる気になったか。

 あっさりと死んでくれるなよ?」

 

「先に言っておこう……スカウターの故障ではないぞ」

 

「「?」」

 

「……やるぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

ラディッツの叫びに呼応した悟空やクリリンたちが、一斉に気を解放した。

 

「「「はぁぁぁああああああ!!!」」」

 

「なっ!?9800、9400……1万800!?馬鹿な!?」

 

ようやく自分よりも目の前の連中の方が戦闘力が高いと気付いたナッパが、目に見えて狼狽える。

 

「見せてやろうぜ、兄ちゃん!」

 

「あぁ……!」

 

今まで目の前の二人に『弱虫』と蔑まされてきた恨み。

弟に手も足も出ず敗北するという屈辱。

そして何よりも、あの『魔女』から受けた数々の仕打ちへの鬱憤。

 

 

「その全てを……貴様にぶつけてくれるぞ!ベジータぁ!!」

 

「ラディッツ……!貴様!!」

 

 

戦闘力1万5000。

落ちこぼれと見下したサイヤ人の兄弟の下剋上に、サイヤ人の王子は確かにたじろいだ。

 




ラディッツ:1500→1万5000(×10)
悟空   :5000→1万5000(×3)

ラディッツの修行方法はシャーマン方式です。
即ち『戦って殺して蘇生しての無限ループ』を、1年。
悟空と悟飯に対してはよほど切羽詰まった状況でもなければこんな修行法はできません。
ですが投降してきたとはいえ悪党だったのは間違いないので「罰にもなるしラディッツなら良いか!」となりました。ヒノカミの中で。
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