『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第64話 ナッパ

 

この1年、悟空とラディッツがどれほど苦しい修行をしても『1万8000』という数値には届かなかった。

だがベジータと同じ舞台には辿り着いた。

逆を言えば、この二人でなければベジータの相手は務まらない。

だからベジータには悟空とラディッツだけで当たるよう厳命されていた。

ヒノカミがいる限り死んでも生き返るが、だからと言ってわざわざ死にたいわけではなく、死なせたいわけでもない。

 

「行くぞ!遅れるなよカカロットぉ!」

 

「へへっ、おぅっ!」

 

「ちぃっ!?」

 

流石のベジータでもこの二人を相手取るだけで精一杯。

よってもう一人のサイヤ人、ナッパが相手をすることになるのは。

 

 

「う、うぐ……ぐぅぅぅうっ!?」

 

「おいおいどうしたよ、そんなに震えて」

 

「なぁに、武者震いだろう。

 何せ宇宙に名だたる戦闘民族、サイヤ人さまらしいからな」

 

ナッパは震える指で何度もスカウターをカチカチと押すが、突き付けられた現実は変わらない。

先ほどまでは戦闘力1000前後だったはずが、今スカウターに表示されている数字は約1万。

それが5人。戦闘力4000ほどのナッパ一人に対して過剰すぎる戦力である。

 

「それじゃあオレたちも始めようか。

 あの二人なら大丈夫だとは思うけど、万が一もある。

 いざという時に手を貸せるようフリーになっておきたいからな」

 

「っ!?そうだ、ラディッツ!!

 アイツの戦闘力は1500だったはずだ!

 それが何で1万5000なんて数値になってやがる!?」

 

「聞いてただろ?地獄の特訓を乗り越えたからさ」

 

「特訓なんぞであそこまで強くなれるかぁっ!

 聞いたことがあるぞ……ナメック星人は魔法使いみたいな力を持っている奴もいるとか!

 さてはテメェが何かしやがったな!?そうなんだろ!!」

 

「さぁてな、組手の相手ぐらいはしてやったか?」

 

お前の想像力が欠如している、と言うのは簡単だが無理もない。

実際に目にしたヤムチャたちでさえ戦慄し、敵だったはずのラディッツをヒノカミから庇い始めるほどの地獄だったのだから。

ナッパが同じ特訓を受ければ彼以上の強さを手に入れたかもしれない。

その前に心が死ぬと思うが。

耐え切ったラディッツは、本当に凄い奴なのだ。

ヤムチャたちはもちろん、ピッコロですら敬意を払うほどに。

 

「そもそも……たとえオレが何かした結果だとしても、この状況が変わるわけでもあるまい?」

 

「うぐっ……くっ、そぉぉぉおおおおおお!!!」

 

右腕にエネルギーを集中させたナッパが正面にいたクリリンに気功波を投げつけるが、彼は焦ることなく右腕を頭上に掲げる。

 

「『気円斬』」

 

広げた右手の上に浮かぶ、高速回転する円盤状の気弾。

クリリンの掌と円盤の中心は光の紐で繋がっており、彼は円盤を掌ごと『前に傾けた』。

 

「……っ!?」

 

「なんだ、こんなもんか。

 こりゃわざわざ防御するまでも無かったかな?」

 

大きな円盤は小柄なクリリンの体を隠す盾になっていた。

円盤にはわずかな揺らぎすらない。

 

「さて、どうやらオレをご指名のようだし、コイツはオレ一人で戦っていいか?」

 

「構わん。オレたちには『弱い者いじめ』の趣味はない。

 何より貴様の『ソレ』に巻き込まれてはたまらんからな」

 

「く……ぐ……!」

 

そう言ってクリリン以外の4人が距離を取る。

ベジータの方に向かうかと思えば離れた場所からナッパたちの方を向いている。

まるで『どうせすぐに終わるだろうから待っていよう』と言っているようではないか。

ナッパは血管が張り裂けそうなほど激怒していたが、5人を同時に相手にするよりは遥かにマシだと何とか言葉を飲み込んだ。

事態が好転したとはとても言えないが。

 

「んじゃ改めて……行くぜ!!」

 

クリリンが円盤をもう一度頭上に掲げ、ナッパへと投げつけた。

 

「ちっ……なにぃ!?」

 

元々当てるつもりがなかったのか、ナッパの速度でも辛うじて円盤を躱すことが出来た。

円盤は彼の頬を掠め、その先にある岩山を真っ二つにする。恐ろしい切断力だ。

 

「まだまだぁ!!」

 

彼は手元の紐を引っ張って通り過ぎた円盤を『引き寄せる』。

 

「うおぉっ!?」

 

「もういっちょ!」

 

カーブを描いて後ろから襲ってきた円盤を、ナッパは今度は大きく飛び上がって躱す。

しかしクリリンは引き寄せた円盤を投げ縄のように頭上で回転させ、遠心力を利用して上空のナッパに向けて再び投げつける。

やがて気の紐が縮んでまた手元に戻り、それをもう一度投げる。

何度も何度も。まるで『ヨーヨー遊び』のように。

 

「はーっ、はぁーっ!」

 

必死に飛び回るナッパの巨体に少しずつ生傷が増えていく。

肩のプロテクターがあっさりと斬り落とされた。自分の体に直撃すればどうなるかは言うまでもない。

 

「はーーーっ……ここだぁ!」

 

「おっ?」

 

しかしナッパも反撃の機会を狙っていた。

円盤を躱すと同時に円盤に繋がっている気の紐を引き千切ろうと手刀を振り下ろす。

 

 

「ひっかかったぁ!!」

 

「なにぃ!?」

 

だが紐は千切れるどころかゴムのように伸びナッパの太い腕に引っ付く。

紐の先端にあった『気円斬』はいつの間にか消え、細い紐は縄のような太さになっている。

 

『気円斬』はただの気功波だ。

この『気でできた紐』こそがクリリンの天神武装『気錬縄(きれんじょう)』。

当の昔に第三段階に至っており、その特性は『ゴムのように伸縮し、人やエネルギー体に繋げてエネルギーのやり取りができる』こと。

 

「なんだっ!?あ?あぁぁぁっ!?」

 

紐の先端にあった気円斬の気を吸い取って太い縄となり、ナッパの全身に巻き付いて彼の気を容赦なく吸い上げていく。

ナッパは暫くもがき続けたがやがて抵抗する力を失い、立っている力も失い、そしてついに気を失う。

このまま続ければ命を奪うこともできたがクリリンはそこでエネルギーの吸収を止め、縄を途中で千切った。

 

「殺しゃしねぇよ。オレの仕事は悪人を捕えることだからな。

 地球の『おまわりさん』舐めんじゃねーぞ」

 

彼の足元には『お縄についた』悪党が一人転がっていた。

 




クリリンといえば『気円斬』。
それを活用する武装を考えたらこんな形になりました。
原作にてフリーザの尻尾すらスパッと切り裂いたアレにゴム紐付けて、ヨーヨーや投げ縄みたいに振り回す。
さらに前に傾けて気を注ぎ補強したら強固な盾になる。
そして本当の武器は紐そのもので、これを千切ろうと攻撃すると逆に気を吸い取られたり捕まったりするわけです。
勿論限界はありますが、相手を弱体化させつつ紐が強化されるので相対的に非常に強固。
……強くし過ぎたけど、このくらいしないとサイヤ人たちには追いすがれないのでこれでいきます。
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