『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第65話 ベジータ

 

戦闘力1万8000対戦闘力1万5000。

しかし一対一ではなく一対二。

戦闘力は単純な数字の足し算ではないため後者が圧倒しているわけではないが、では前者が有利かと言えばそれも違う。

 

「何を腑抜けた攻撃をしている!カカロット!」

 

「わりぃわりぃ。

 どうにも一人相手に何人もでってのは苦手でさぁ……ばぁちゃん相手ならともかく」

 

「……こいつらぁ……!」

 

サイヤ人の王子であるベジータを前に余裕すら見せる落ちこぼれの兄弟。

しかし彼らにそれを許している自分自身の力不足が、ベジータにとって何より腹立たしかった。

 

(……!?ナッパめ、もうやられやがったか!)

 

地球人とナメック星人、戦闘力1万程の連中が接近してきた。

彼らはラディッツの少し後ろの岩山の上に着地する。

 

「ナッパはどうした?」

 

「とっ捕まえたさ。向こうの方で転がってる。

 もちろん、こっちは誰もやられてねぇよ。

 そっちはどうだ?」

 

「流石に手強いが、この調子なら何とかなる。

 今のところ仙豆を食う程のダメージもない」

 

「……『何とかなる』?

 このベジータさまを相手にして『何とかなる』だと!?

 随分とデカい口を叩くようになったな!

 えぇ!?弱虫ラディッツさんよ!!」

 

「はっ!デカい口を叩いているのはお前の方だベジータ。

 アイツと比べれば、お前もオレもゴミ同然……ゴミ同然のボロクズに……うおぁぁぁぁっ!!」

 

「やめろラディッツ!思い出すんじゃない!」

 

「……ばぁちゃんは兄ちゃんに何やったんだ?」

 

一人界王星で修業していた悟空だけは、彼がどんな責め苦を味わってきたかを知らないのだ。

まさに知らぬが仏というもの。

しかし問題なのがその責め苦を与えた当人が、どちらかと言えば仏のポジションにいることである。

相手が悪人でありその罰を兼ねているとは言え、躊躇いなく人をミンチにするのは絶対に仏の所業ではない。

 

 

 

「オレを……馬鹿にするなぁ!!!」

 

「「「!?」」」

 

目の前で自分を無視して寸劇を始められ、遂にベジータの堪忍袋の緒が切れた。

 

「このオレをコケにするやつは……どいつも、こいつも!

 跡形もなく消し飛ばしてくれるわぁーーーっ!!」

 

「っ!?ヤベェ!」

 

上空に飛翔したベジータが腕を引き技を構える。

あれほどの力を込めた気功波を地上に向けて放てば、地球は木端微塵だ。

 

『……ちっ』

 

ヒノカミの舌打ちが悟空たちの頭に響く。

そして地球の表面に強い気が張り巡らされたことに気付いた。

今の一瞬で地球を気で覆って補強したのだろう。スカウター頼りのベジータは気付いていないようだが。

 

「サンキュー!ばあちゃん!」

 

『さっさと済ませぃ』

 

地球を守るよりもベジータを処分する方が、彼女にとっては遥かに楽なはずだ。

だがそうしなかったのは『自分が出るのは悟空たちが敗れたら』と約束したから。

そんなちっぽけな約束に彼女は全身全霊で応える。

ならば自分たちも全力を尽くさねばなるまい。

もはや地球が壊れる心配は無くなったが、だからと言ってあんなもので地球を傷付けさせてたまるものか。

 

「やるぞ、皆!」

 

「「「おう!!」」」

 

上空のベジータを見上げる全員が、各々の最高の技を構える。

 

 

「地球諸共宇宙のチリになれーーーー!!」

 

ベジータが突き出した腕から放たれたギャリック砲。

 

「「「かめはめ波ぁーーーーっ!!」」」

 

「気功砲!」

 

「どどん波ぁ!」

 

「魔閃光ーーーっ!」

 

「ウィークエンド!」

 

それを地上の7人の気功波が迎え撃つ。

 

「うっおっ、おおおおお……っ!!

 おっ、押され……!?」

 

戦闘力は数字の足し算ではない。

だが一歩劣るとはいえ自分に匹敵する二人と、それに追随する5人の戦士たち。

『たった一人の王子さま』は、悟空たちの気功波に飲み込まれ天高くへと昇って行った。

 

 

「どうだっ!」

 

「駄目、まだ生きてる」

 

「これでもか……サイヤ人の頑強さは恐ろしいな」

 

「だが流石に無視できんほどのダメージを負ったはずだ。

 次で畳みかけるぞ。今のうちに仙豆を食っておけ」

 

「う~ん……やっぱオラ正々堂々と戦いてぇなぁ」

 

「……気持ちはわかる。

 だがナッパの方はともかくベジータとやらは強敵だ。

 確実に倒せる保証がない内は最善を尽くすべきだろう」

 

「そりゃわかってるけどさぁ……」

 

「……そういう性格はお前の方がサイヤ人らしいな、カカロット」

 

ラディッツは冷酷で残忍な性格だが、『弱虫』『泣き虫』を自認している通り小心者だ。

対して悟空は好戦的で真っ向からの戦いを好むが、温厚で優しい性格。

後者は頭部を強打したことが原因と思われるが、なるほどこの二人の性格は真逆でも、サイヤ人らしい性格とサイヤ人らしからぬ性格を兼ね備えているという点では似た者兄弟だった。

 

「……?降りてこないぞ?」

 

「チャオズ、ヤツの様子は?」

 

「上を向いて叫んでる。

 理解できないことが起きて混乱してるみたい」

 

「上を……?

 なるほど、そういうことか」

 

皆が上空を見上げる中でラディッツだけは念のために『下を向いていた』。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「ふっふっふ、サイヤ人よ。いくら月を見ても無駄じゃ。

 お前は大猿には変身できんぞ」

 

界王星から千里眼で地球の様子を観察していた界王が呟く。

 

悟空たちを倒した後で地球を侵略するつもりだったベジータは、満月の日に到着するように時間を調整してきた。

まだ日は高いが、日中でも満月は見える。そして満月を見たサイヤ人は大猿に変身する。

変身すれば巨体故の欠点も生じるがその戦闘力は10倍となる。

腹立たしいことだが、ベジータは地球人たちもまた脅威だと認めざるを得なかった。

同じサイヤ人であるラディッツとカカロットも変身してくるだろうが、連中の横やりは無視できるようになるはず。そう考えて決意したようだが。

 

「……だが、予想できるはずもないか」

 

満月を見つめるが変身できないことにいら立つベジータを見て、その内心を予想しながら界王は半ば呆れながら言葉を続ける。

 

 

 

「まさか孫可愛さに地球を覆う結界を張る『馬鹿()』がおるなど思わんだろう」

 




ラディッツ「サイヤ人は満月が放つブルーツ波を見ると尾が反応して変身するのだ」
ヒノカミ「なるほど、そのブルーツ波とやらを減衰する結界で地球を覆うか」
チチ「これで悟飯ちゃんも安心だべ」

ラディッツ「 」
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