『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第66話 大猿

 

「馬鹿な、馬鹿な、何故だ!

 間違いなく満月のはずだ!

 ……まさかこの星では満月になってもブルーツ波が1700万ゼノを超えないのか!?」

 

だとすればカカロットがこの星で地球人として受け入れられていることに納得がいくと、ベジータは誤認し始めていた。

実際にはカカロット……悟空が変身しないのはドラゴンボールのお陰であり、ベジータが変身できないのはこの星の神が好き勝手した結果。

しかし仮に原因を知ったところで対処できることではなく、ベジータが変身できないという状況は変わらない。

 

この状況でベジータが取れる選択肢は三つ。

 

一つ目。先ほどまでと同様今の姿、今の力で戦う。

だがカカロットとラディッツの二人を相手にするだけでも攻めあぐねていたのに地球人共まで合流してきた。

戦闘力1万はベジータとて無視できない戦力だ。

それが5人。認めたくないが、正直に言って手に余る。

 

二つ目。自力で大猿に変身する。

サイヤ人には人工的に小さな満月を作り出す技がある。

しかしこの技はかなりのエネルギーを消耗する。

地球人共は無視できるようなるかもしれないが、大幅に戦闘力が落ちては同様に変身したカカロットとラディッツの二人に敗れるかもしれない。

 

三つ目。地球から撤退する。

 

「っ!?ありえん!!

 サイヤ人の王子であるオレさまが落ちこぼれや下等民族から逃げ出すなど!!」

 

ベジータは弱気になり始めていた自分を奮い立たせる。

数の差で追い詰められているが一番戦闘力が高いのは自分だというちっぽけな自負が、辛うじて今の彼を支えていた。

 

「ぐ……ぬぅぅ……!」

 

一つ目か、二つ目。どちらを選ぶか。

一つ目は実際に体験した結果から推測すれば敗北は濃厚。

二つ目もうまくいく可能性はかなり低い……かなり低いが、可能性は確かにある。

大猿化したときの戦闘力増加は多少の個人差があるのだ。

ラディッツは10倍だとわかっているが、カカロットはそれに満たないかもしれない。

逆に10倍以上という可能性も捨てきれないが。

 

「……!?」

 

スカウターがラディッツたちの接近を知らせてきた。もはや迷っている時間はない。

 

「くそったれぇーーーーっ!!」

 

変身には邪魔だと取り外したスカウターを握りつぶし、そのまま掌からエネルギー球を生み出す。

疲労で息が上がるが構うことなく遠くへ投げた。

 

「はじけてまざれっ!!」

 

エネルギー球は星の酸素と混ざり合うことで人工の満月となる。

酸素が必要なのだ。すなわちそこは大気圏の内側であり、ヒノカミの張った結界の内側でもあった。

 

 

「はぁ、はぁ……ははは、目にもの見せてやるぞ、ラディッツ!カカロットぉ!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「なんだっ、あの光は!?」

 

「ぐっ、グォォォォオオオオオ!!」

 

「ラディッツ!?」

 

「離れろ貴様らぁ!

 ベジータめぇ……やりやがったなぁっ!?」

 

上空から降りてこないベジータにしびれを切らした悟空らはこちらから向かうことにしたが、突如向かう先に現れた光の球が目に入る。

直後ラディッツがうめき声をあげ、彼の体が膨れ上がり全身から毛が生えだす。

 

『グルルルル……!』

 

「これは……ガキの頃の悟空と同じ!?」

 

「じゃあこれが『大猿』化!?とんでもねぇ気だ!」

 

「だが地球には結界があるはずだ!

 ……そうか、あの光がその代わりか!」

 

『ハァ、ハァ……来るぞ!!』

 

大猿と化したラディッツが上空を見上げ叫ぶと、彼らの視線の先からラディッツとよく似た大猿、おそらくベジータが突っ込んでくる。

 

『ラディッーーーーツ!』

 

『ぐぅぅぅっ!?』

 

空中でぶつかり合った二体の大猿がそのまま地上へと墜落していく。

 

「オレたちも追うぞ!」

 

置き去りにされた6人が急いで地上へと引き返すと、2体の大猿が壮絶な殴り合いを始めていた。

その巨体故に戦いの規模も周辺の被害もとんでもない。

スーツの形と頭髪の量で判断できるが、ラディッツがわずかに劣勢のようだ。

 

「コノヤロー!!」

 

悟空がベジータに向けてかめはめ波を放つ。

 

『ぐっ!鬱陶しいわ!!』

 

ベジータの側頭部に直撃したが与えたダメージは僅か。

そしてベジータの視線が悟空へと向き、彼の姿が変わっていないことに気付いた。

 

『!?カカロット、何故変身していない!?

 まさか……変身できないのか!?

 ハハハ!これは飛んだお笑い種だ!

 落ちこぼれどころか出来損ないだったとはな!』

 

悟空は変身すると自我を失い暴走するので、その点では確かに欠陥品だろう。

ともかく、ベジータは賭けに勝った。

カカロットが変身できないならば相手はラディッツ一人。

人工満月を作るために消費した力は大きいが、それでもまだ自分の戦闘力はラディッツより上だ。

 

そして更なる幸運が彼の下に舞い込む。

 

 

『グォォァァアアアアア!!!』

 

「「「!?」」」

 

3体目の大猿が現れた。

 

『ナッパか!?』

 

「嘘だろ!?瀕死まで追い込んだんだぜ!?

 もう意識を取り戻してたってのか!?」

 

クリリンがナッパを倒したとき、確かに眼を閉じ、うつ伏せに倒れていたはず。

そんな状態では頭上に現れた月が目に入るはずもない。

サイヤ人のタフさを見誤ったクリリンたちのミスだ。

 

 

「みんなはあっちの方をなんとかしてくれ!

 こっちの方はオラと兄ちゃんでなんとかする!」

 

「「「!?」」」

 

『ハハハ!笑わせるな!

 変身できない貴様なぞもはやオレの敵ではない!』

 

大猿になったサイヤ人の戦闘力は10倍になる。

ベジータは強引な変身で疲弊しているようだが、それでも戦闘力16万はあるだろう。

変身したラディッツの戦闘力が15万とすればその差はわずか。

しかし戦闘力1万5000のカカロットは、もはやそのわずかな差を覆す要因足りえない。

 

「へっ、そいつはどうかな……?」

 

「……死ぬなよ、悟空!」

 

しかし悟空は笑みを浮かべる。

強がりではないと理解したクリリンが皆を引き連れ、暴れ始めたナッパのもとに向かう。

 

「兄ちゃんはやりてぇように戦ってくれ!

 オラもやりてぇようにやる!」

 

『何をする気だ、カカロット!?』

 

「なぁに……ようやくオラも全力でやれそうだってだけさ!」

 

『『なんだと!?』』

 

 

 

「……界王拳!!」

 

悟空の全身から赤い光が迸る。

 




悟空の戦闘力1万5000は界王拳抜きの数値です。
原作では8000以上だったので倍近く。

あとラディッツは悟空と同じく大猿になったら理性を失うらしいですが、本作では興奮状態になるものの維持できるとします。
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