『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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今日から本当に1日1回投稿です。
もしストックがまた大量に溜まったら考えますが、しばらくは多忙なので望み薄です。


第32話

荒れ果てた舞台を整え、表彰式が行われる。

勝者へのメダルの授与はオールマイトが行うことになっていた。

彼は人気ナンバー1ヒーロー。

表に出ると人が集まって混乱を招いてしまい、折角の警戒態勢を邪魔してしまうからと裏で大人しくするよう厳命されていた。

つまり戦力外通告を受けていたのである。

ナンバー2?突如雄たけびを上げて燃え上がる『ヴィランっぽいヒーローランキング』第一位と触れ合いたいのなら本人の自己責任でご自由にどうぞ。

 

ともかく、この表彰式は彼の唯一と言っていい見せ場。

恰好をつけて登場するもタイミングが合わず気まずい思いをするが、めげずに役目を全うしようとする。

3位決定戦は行われていないので、3位の表彰台に立つのは準決勝で敗れた二人。

常闇は静かに、夜嵐はやかましく、オールマイトから銅メダルを受け取る。

 

「さて爆豪少年……どうかしたのかな?」

 

俯いたままの爆豪の首に銀メダルをかけたが、何の反応も示さない。

1年近く前から彼を知っているオールマイトだが、こんなに大人しい爆豪の姿を見るのは初めてだった。

 

「……嗤えよ。あんだけ啖呵きっといて敗北した無様な俺をよ」

 

「嗤わないさ」

 

オールマイトは間髪入れず答える。

 

「聞いてごらんよ。

 誰も君を嗤ってなんかいない」

 

選手宣誓での優勝宣言と、女子である麗日を容赦なく攻撃した姿。

これまで爆豪の言動と行動に眉をひそめる者は多かった。

しかし決勝での彼はただの生意気な小僧ではなかった。

その身を削ってでも勝利へと挑み続ける姿に胸を撃たれなかったヒーローはいない。

そして敗れたとはいえ準優勝という成績を残した彼を弱者と蔑む者など天下の雄英にいるはずもないし、いるべきではない。

 

「むしろ、君が笑うべきだ!」

 

「は?」

 

「受け売りだけどね、『笑ってるやつが一番強い』!

 悔しくても、悲しくても、笑顔で立ち向かい続けるんだ!

 ……効き目は私が身をもって実証済みさ!」

 

オールマイトは自分の頬に指をあて、口角を上げる。

 

「さぁ、みんなにも見せてやってくれ、君の笑顔を」

 

「……ハッ!」

 

顔を上げた爆豪は、どう猛な笑みを浮かべて宣言した。

 

「次だ。次は負けねぇ。

 次こそ俺はトップになる!」

 

「……その意気だ!」

 

あまりの凶悪な形相にオールマイトは一瞬怖気づいたが、気づかれないよう笑顔で返した。

 

「そして轟少年、優勝おめでとう!」

 

轟の首に金メダルをかける。

 

「ありがとうございます。……オールマイト」

 

「うん?」

 

「俺は、あなたのようなヒーローに少しでも近づけたでしょうか」

 

「……HAHAHA!!」

 

オールマイトは轟の質問に答えず、いつもの高笑いで返した。

 

「自己評価低いなぁ……君はそこんとこ、爆豪少年を見習った方がいいと思うぜ?」

 

「?」

 

「まだ教師になったばかりだが、生意気を言わせてもらうよ。

 私たちは、私たちのようになってほしいんじゃない。超えてほしいんだ!

 そう、私たちよりも『更に向こうへ』……プルスウルトラ!

 ……きっとエンデヴァー……君のお父さんも同じ気持ちだと思うよ」

 

「……そう、ですか」

 

轟は一瞬観客席にいる父に視線を向け、再びオールマイトの目を見つめる。

 

「……トップヒーローを目指してきました。

 だけど今日からはそれだけじゃない。

 俺はあなたや親父を超える、最高のヒーローを目指していきます」

 

「ああ!」

 

オールマイトがつけていたマイクが彼らの会話を拾い、観客席にまで伝わった。

むせび泣きながら雄たけびを上げ始めたエンデヴァーの放つ炎は、ヒノカミに操られ圧縮され天高く昇り、大輪の花を咲かせた。

 

「花火か……相変わらず器用だよねぇ、彼女」

 

「はい。あの人もまた、俺の目標です」

 

「……そうかい」

 

轟はオールマイトの声の陰りに気づかなかった。

オールマイトも轟から目を背けるように後ろを向いた。

 

「さぁ!今回は彼らだった!

 しかし他の者にもここに立つ可能性はあった!!

 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!

 てな感じで最後に一言!!」

 

オールマイトが天に指を掲げる。

 

「皆さんご唱和下さい!せーの!!」

 

「「「プルスウ「お疲れ様でした!!!」ルトラ!!?」」」

 

音頭を取った当人だけが、誰よりも大きな声で違う言葉を叫んだ。

会場中からのブーイングを受けながら必死に釈明する。

 

「ああいや……疲れたろうなと思って……ぶほぁっ!」

 

折角空気を読んで叫んでやったのに台無しにされたことで生じたエンデヴァーの怒りの炎を、舞火が圧縮してオールマイトの足元まで移動。

彼が気づく暇もなく爆発し、オールマイトは天高く打ち上げられた。

観客の笑い声が響く。なんとか笑顔でこの場を締めることができて舞火はほっとした。

隣の兄は誰よりも良い声で嗤っていた。




雄英体育祭編、なんとか完結です。
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