『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第67話

 

『界王拳』。

 

北の銀河の界王が編み出し、悟空が彼の下で修業して習得してきた技の一つである。

全身の気をコントロールして増幅させ、一時的に自らの肉体のスペックを何倍にも倍化させる。

しかし当然デメリットもあり、気のコントロールを誤ったり過剰に出力を上げようとすると肉体に多大な反動が襲い掛かってくる。

今の悟空が肉体への反動なく使用できるのは4倍まで。すなわち戦闘力6万。しかし。

 

「へへっ……下手くそなまんまだけど、続けててよかったな!」

 

界王拳の赤い闘気に『天神武装』の光が混ざり合い、更に色が濃さを増す。

習得開始から9年。クリリンに遅れること実に6年。

悟空はようやく『天神武装』の第一段階を習得していた。

天神武装第一段階も界王拳と同じく肉体を強化する術だが、その特性は真逆に近い。

 

天神武装は防御力と生命力を飛躍的に高めるが、維持に気を消耗する上に戦闘力を何倍にもするほどの劇的な効果を得られない。

界王拳はあらゆる能力を何倍にも高めることができるが、肉体への負担が大きく制御を誤ると命の保証はない。

 

この二つの技は互いのメリットで互いのデメリットを打ち消し合うことができるのだ。

即ち『天神武装で肉体の強度と自己治癒力を高め』、『界王拳での反動を強引に抑え込んで己の限界以上に強化倍率を引き上げる』。

そして『界王拳により気の量すら倍増される』ため『天神武装での消耗が相対的に減少する』。

技の相乗効果により、制御が可能なら理論上は何倍にでも戦闘力を高めることができる。

 

「6……7……8倍界王拳!!」

 

戦闘力12万。

大猿化したベジータにもラディッツにも及ばないが、彼らとの戦闘力の差を埋めるには十分だ。

 

「だぁっ!!」

 

『ぐおぁっ!?』

 

ラディッツに拳を振り上げていたベジータのわき腹に悟空の拳が突き刺さり、痛みで思わず動きが止まる。

 

『だあぁっ!!』

 

『がはっ!?』

 

そして大猿ラディッツの拳が大猿ベジータの顔面に叩きつけられ、そのまま吹き飛ばされていく。

 

『ぐっ、がっ、なんだと……!?』

 

幾つか岩山を砕いてようやく止まったベジータは口元の血を拭いながら、驚愕の表情で真紅のオーラを纏うカカロットを睨みつける。

 

『おいカカロット!貴様先ほどまで手を抜いていたのか!?』

 

「そんなわけじゃねぇさ。ただとんでもなく無茶なことしてっからな。

 こうまで追い詰められなきゃ、使おうなんて思えなかったんだ」

 

何しろ異なる2種の強化術を併用しているのだ。

肉体への反動は抑えられても気のコントロール難易度は跳ね上がっているため、こうして会話している今は界王拳の倍率を2倍にまで抑えている。

8倍にできるのは一瞬だけだ。

 

『ちっ……いいか!メインはオレだ!

 お前はオレとの戦いでできたベジータの隙を突け!

 間違ってもオレを攻撃するなよ!?』

 

「わぁってるって!」

 

『この……落ちこぼれ共がぁーーーーーーっ!!!!』

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

『さっきは良くもやってくれたなぁ!このクソチビがぁーーっ!!』

 

「で、でけぇ……ベジータって奴やラディッツよりも一回りデカくねぇか?」

 

「元の体格差も反映されているのか?

 それとも大猿の変化にも個体差が……?」

 

『……大猿になったら髪が生えるんじゃな。

 ハゲのままだったらどうしようかと……』

 

「「「ぶぷっ!?」」」

 

「余計なチャチャを入れるなヒノカミ!……来るぞ!!」

 

滞空していたクリリンたちを狙い、大猿の大きく開いた口からエネルギー波が放たれた。彼らは散会して攻撃を躱す。

 

「どうする!?手っ取り早く尻尾を斬っちまうか!?」

 

クリリンが気円斬と気錬縄を出現させて叫ぶ。

 

尾を斬られると変身が解けることはラディッツから聞いている。

だから向こうで戦っているベジータとラディッツは被弾率を下げるため尾を腰に巻き付けている。

しかしナッパは見せつけるようにぶらぶらと動かしている。

変身した今なら地球人たちなどもはや敵ではないと慢心しているのか、それとも怒りでその程度のことにすら意識を向けていないのか。

 

 

「ふっ……冗談じゃない」

 

 

しかしクリリンの提案に、ピッコロは明らかな反対の意見を示した。

 

「この1年、オレたちは今日という日のために備えてきたんだ。

 それがちょっと戦ったくらいであっさり終わっちゃつまらん!

 ……オイ、ヒノカミ!それくらいは構わんな!?」

 

『……死にそうになったら仕留めにかかれよ?』

 

「!?ありがとうございます!」

 

内心ではピッコロと同じ気持ちだった天津飯が感謝を叫び、ヤムチャも続けて吠える。

 

「……大猿になって、確かにオレたちより強くなったようだ。

 だが全員でかかれば勝てない相手じゃない!」

 

直前に瀕死の状態にまで追い込まれていたからか、それとも強化倍率の個人差か。

ナッパの今の戦闘力は4000の10倍で4万、とはいかないようだ。

2万は超えているだろうが3万まではおそらく届いていない。

ヤムチャの言う通り5人で一斉にかかれば勝てる可能性はある。

殺されるかもしれないが、そんなことヒノカミの修行で慣れっこだ。

仮に失敗してもそのヒノカミがケツ持ちをしてくれる。

 

「そりゃ……オレだって呆気なさすぎだと思ってたけどさ!

 流石にこんだけ体格差があるとやり辛いぜ!?」

 

「ふん!そいつはどうかな!?

 ……かあああああぁっ!!」

 

突如全身を震わせ叫び声をあげるピッコロ。

 

 

『な、なんだとぉっ!?』

 

「「「げげげっ!?」」」

 

『ははははは……デカくなれるのが貴様らサイヤ人だけだと思うなよ!?』

 

「思うに決まってんだろ!やっぱお前宇宙人じゃねぇか!!」

 

ピッコロの体が大猿と変わらぬ大きさにまで膨れ上がった。

本当は更に大きくなれるのだが無駄に力を使うし、自分より小さな相手と戦うというのは中々にデメリットも多いものだ。

 

そしてピッコロは更に全身を闘気で覆う。

彼もまた悟空と同様、天神武装の第一段階までは習得していた。

これでピッコロの防御力と生命力が大幅に強化される。

それでも1万以上の戦闘力の差は覆せないが、少なくとも大猿化したナッパであっても容易に殺すことはできないだろう。

 

『貴様らはオレを援護しろ!

 ウロチョロするのはいいが、オレに巻き込まれるなよ!?』

 

「「「お、おう!」」」

 

『くそっ!こいつらぁぁぁあ……!!』

 




天下一武道会ではピッコロは巨大化していません。
悟空には通用しないとわかっていたし、絶対に観客に被害が出るので。
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