『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第70話 帰郷

 

サイヤ人との戦いから一週間。

捕らえたベジータは神殿の奥に厳重に幽閉し、悟空たちは日常へと戻って行った。

ラディッツも今はパオズ山にいて、悟空一家の世話になっている。

もはや悪逆を行うとも思えなかったので地球を離れるなら止めるつもりはなかったが、今のところその気はないとのことだ。

理由はいくつかあるだろうが、本人は『飯が旨いから』と言っていた。はてさて本音か強がりか。

ともあれ、ヒノカミも神殿へ戻り平和な地球を見守る日々を再開していた。

 

「ヒノカミ。相談がある」

 

その矢先に、先代から声をかけられた。

彼の表情を見てヒノカミは要件を察する。

 

「旅立たれるのですね」

 

「お見通しか……」

 

先代は己の故郷、ナメック星へと向かうつもりだ。

ベジータたちから自分が異星人と明かされてから、彼はずっと故郷に思いを馳せていた。

 

界王に情報を求めると、かつてナメック星は異常気象に襲われたらしい。

先代はおそらくその際にナメック星から地球へと避難させられた。

幼い頃に彼が住んでいた住居は家ではなく、ナメック星人の宇宙船だったことも判明した。

そしてナメック星にはわずか100人ほどだがナメック星人が確かに生きているとのこと。

 

「地球から居を移すつもりはない。

 だが行ってみたい……どうしても、一度故郷を見てみたいのだ」

 

「なるほど。であれば帰還の手段が必要ですな……」

 

ナメック星の座標も界王から聞いている。

かなり遠いが、先代の想いを『大願成珠』で増幅して『書国漫遊』を発動すれば送り出せるだろう。

しかし一方通行になる。

ヒノカミは地球の神だ。ナメック星ほど遠い場所にまでは同行できない。

ヒノカミの転移能力は自分と一緒に連れていくか、自分が別の場所に送り出すか。

遠くの人物を自分のもとへ呼び寄せることはできない。

 

「先代さまの船は丁度ブルマに預けておるわけですし、カプセルにできるようにしての返却を依頼しましょう。

 あのサイズのままでは転移させづらい」

 

「恩に着る」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「SU83方位の……9045YX!?

 先代さまってそんな遠いところから来たの!?」

 

「界王さまが言うにはな。

 んで、先代さまの船を帰還に使おうと思うんじゃが……」

 

「そういうことだったら私たちの作る船を使ってみない?

 孫くんとラディッツさんの宇宙船の解析が終わったから、とうさんと一緒に新しく作ってみるつもりだったのよ。

 まだ設計段階だけどこっちの方が断然速いわ」

 

「それはありがたい。

 ではそうじゃな……余裕を持って搭乗員10名のサイズで仕上げてもらいたい」

 

「10人?アンタは行かないんでしょ?

 先代さまとピッコロはわかるけど……他は?」

 

「ラディッツには同行を依頼するつもりじゃ。

 侵略者としてではあったが、宇宙を飛び回っていた経験がある者がいると心強い。

 後は念のため悟空らにも声をかけておこうかとな。

 行きたがる者もおるかもしれんし。

 ちなみに片道はどのくらいになりそうか?」

 

「一週間まではかからないと思うわ」

 

「ん、わかった。

 今回は試しじゃし滞在は数日で良かろう。

 およそ1週間の旅行として皆に伝えてみる。

 宇宙船の完成はいつ頃になる予定か?」

 

「そうねぇ……1ヵ月ちょうだい。

 それまでには仕上げておくわ」

 

「……一から新造するんじゃよな?

 やっぱぶっ壊れはお主のほうじゃろ」

 

 

その後全員に声をかけ、全員が『一緒にいきたい』と言い出した。

先代、ピッコロ、ラディッツ、悟空、ヤムチャ、クリリン、天津飯、チャオズ。

そして悟空の息子である孫悟飯を含め、総勢9名。

 

「お主がよく認めたのぅ、チチよ」

 

「ピッコロさんの故郷だと聞いたら、行きたいって言いだしたでな。

 思えば悟飯ちゃんがワガママなんて初めてだべ。

 一週間の旅行くらい大目に見てやらねぇと」

 

「お主も同行してもいいんじゃぞ?」

 

「いい妻はダンナが帰ってくる家を守るモンだ。

 それに悟空さと義兄さんもついてるし、悟飯ちゃんもとっくにおらなんかより強くなっちまったしな」

 

父親である悟空が修行をしているからと、悟飯もまたピッコロやラディッツに一年間修行を付けてもらっていた。

先日ブルマの新型スカウターで計測してみたら、戦闘力は2000近くまで上昇していた。

わずか5歳でこの強さは異常だ。ラディッツも『サイヤ人とはいえこれほど戦闘力が高い子供は珍しい』と驚愕していた。

本人は争いを嫌う、学者を志す優しい少年なのだが才能とは不条理なものだ。

ちなみにその新型スカウターでもヒノカミの全力は計測できなかったので、今もブルマはスカウターの改良に勤しんでいる。

 

そして出発当日。

全員が神殿に集まり、中央に鎮座する巨大な宇宙船を見上げていた。

 

「うひゃ~~~……これ、オラと兄ちゃんの宇宙船をまねて作ったんだろ?

 こんなにデカくなったのか……」

 

「中央の広間は特に頑丈に作ってるけど暴れるのはほどほどに。

 性能は少し上がって、片道は4日ってところね。

 とうさんは『スピーカーの位置が納得いかない』ってごねてたけど……」

 

「4日だと!?

 地球人の科学力は恐ろしいな……」

 

「地球人で一括りにせんでくれ。ブルマがおかしいんじゃ。

 そういえばブルマ、結局お主は行かんのか?」

 

「興味がないって言ったらウソになるけど、人類未踏の地って聞くとちょっとね。

 それに今度は先代さまの船の解析もしたいもの。

 そっちの調査が終わった後ならもっと速い船も作れたかもね~」

 

「そ、そうか……」

 

ブルマに異界の知識を与えてみたらどうなってしまうのか。

興味はあるが、絶対とんでもないことになるだろう。ヒノカミはぐっと飲み込んだ。

 

ヒノカミの戦慄を余所にブルマは宇宙船をカプセルにしてケースに仕舞い、ラディッツに手渡した。

 

「操縦方法は元の宇宙船と大して変わらないから、ラディッツさんにお願いするわ。

 あ、でも緊急時用に一人用の脱出ポッドも10人分作ってこのケースに入れてるから、ナメック星を離れるまでに全員操縦は覚えておいて。

 と言っても、ボタン一つ押せば地球に戻ってくるようにはしてるけど」

 

「「「…………」」」

 

ようやくヒノカミとラディッツ以外もブルマの規格外っぷりが理解でき始めたようだ。

 

「……で、では!送り出すとするか!

 先代さま、ピッコロ。

 『ナメック星に行きたい』と強く念じてくれ」

 

「あ、あぁ」

 

「……『大願成珠』、補助を頼む。

 彼らを、彼らが願う場所へと……!」

 

ヒノカミの胸に埋まった球が光り輝き、祈りに応える。

 

「じゃあ、行ってくる!」

 

光が収まると、そこに悟空たちの姿は無かった。

 




原作ではナメック星の宇宙船を発見したのが戦い翌日、改造するのに10日、移動に1ヵ月でした。
本作では思い立ったのが1週間後、帰還用の宇宙船製作に1カ月、移動は一瞬となっています。

ちなみに原作の大型宇宙船は片道6日ですが、本作ではブルマとブリーフ博士の共同制作だし重力室もないので絶対スペック上がってるはず。
よって片道4日としました。まぁ設定だけの数値ですが。
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