『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第73話 サイヤ人の怒り

 

「でけぇ船だ!もう降りちまってる!?」

 

「いや、まだ散らばっていないようだ。間に合ったか……!」

 

戦闘員用の丸いポッドとはまるで異なる、巨大な円盤状の宇宙船が開けた場所に着地していた。

スカウターで悟空たちの接近を察知していたのだろう。

船のハッチからわらわらと戦闘員が飛び出してくる。

 

「ドドリア!ザーボン!」

 

「ラディッツ!?

 アイツは地球とやらにいたんじゃなかったのか!?」

 

ラディッツを先頭に一行が着陸し、フリーザ軍の集団と向かい合う。

 

「戦闘力1万5000……間違いないようだな」

 

「周りの奴らは地球人か……ん?アイツの顔、どこかで見覚えが……」

 

「ナメック星に何の用だ。

 ここはフリーザ軍が侵攻しているエリアから遠く離れているはずだ」

 

ドドリアの思案を遮るようにラディッツが声を上げる。

 

「へっ、調査さ。フリーザさまの命令でな」

 

「調査だと?一体何の……」

 

「貴様のだよラディッツ。

 貴様の劇的な戦闘力向上の秘密を知るためのな」

 

「「「!?」」」

 

「……貴様ら、オレとベジータとの戦いを傍受していたのか!?」

 

「そういうこった。んで、ナッパの野郎と戦ってたナメック星人ってのがそいつか?」

 

「……それがどうした」

 

「前々からナメック星人には妙な噂があった。

 特に……『なんでも願いを叶える球』があるとか」

 

「「「……!?」」」

 

「与太話かと思っていたが、お前の件から信憑性が出てきたのでな。

 軍で本格的な調査に乗り出すことにしたのだよ」

 

「だがナメック星人は高い戦闘能力を持つって話だからな。

 少なくともそいつみてぇな戦闘力1万クラスが居やがるとしたら下級戦闘員じゃ相手にならねぇ。

 なんで、わざわざオレさまたちに命令が下ったってわけだ」

 

「しかしどうやら調査の必要もなさそうだな。

 当の貴様が地球から遠く離れたナメック星にいる。

 ……噂の裏付けは取れたようなものだ」

 

「……くそっ!」

 

ザーボンたちの考えはとんだ見当違いだ。

ラディッツの成長は彼自身の努力と鬼コーチの存在によるもの。

だが問題は『願い球は間違いなく存在しており、連中がそれを確信してしまった』ということ。

 

「兄ちゃん!ここでこいつらをやっつければ!」

 

「無駄だ、このやり取りも傍受されているはず。

 すでに情報はフリーザにも渡ったものと思え!」

 

「……『兄ちゃん』?」

 

そこでドドリアがようやく既視感の正体に思い至る。

 

ラディッツを兄と呼ぶ、カカロットとかいう地球育ちのサイヤ人。

 

それと全く同じ顔をした、とあるサイヤ人。

 

ラディッツは上級戦士だが、その父親は下級戦士。

しかし下級戦士でありながらその戦闘力は1万を超えていたと有名だった。

確か、名前は。

 

「……『バーダック』だったか?」

 

「!?」

 

「兄ちゃん?」

 

「……オレたちの父親の名だ。

 バーダックがどうしたというんだ!?」

 

「がははは!ようやく思い出したところだ!あのバカなサイヤ人のことをな!」

 

「……なるほど、そういうことか。

 おい、ドドリア」

 

「どうせここで皆殺しにするんだ。

 最後のサイヤ人に、冥途の土産に教えてやろうじゃねぇか。

 オレさまは優しいからな」

 

ベジータ達との戦いの途中で彼らのスカウターが破壊されたため、ドドリアたちは結末を知らない。

しかしラディッツたちがこの場にいるのでベジータとナッパは殺されたと判断したのだろう。

故に目の前の二人がサイヤ人の最期の生き残り。

ここで連中を始末するのなら、サイヤ人への秘密を明かしても問題ないと考えた。

 

「……惑星ベジータは巨大な隕石がぶつかって消失した……のではない」

 

「なんだと……!?」

 

サイヤ人は圧倒的戦闘力の差からフリーザに従っていたが、従順とは言い難い連中だった。

そしてサイヤ人の中にベジータのようなとびぬけた戦闘力を持つ者が生まれ、増え始めた。

このまま数が増え団結し反抗されては厄介なことになる。故に。

 

「サイヤ人を集めた惑星ベジータ諸共、フリーザさまが消し去ったのだ!」

 

「!!」

 

「ひでぇ……!」

 

サイヤ人の暴虐と傲慢さを知らされたクリリンたちでさえ、思わず非難の声を上げる悪行。

 

「どいつもこいつも、そうとは知らずのこのこ集まったバカだった!

 だがその中でも飛び切りのバカがいやがった!

 フリーザさまの思惑を察知し、サイヤ人たちに訴えるも無視され、結局たった一人でフリーザさまに挑んだバカなサイヤ人がな!」

 

「まさか……!」

 

「そうだ!そこのサイヤ人と同じ顔した、バーダックとかいうサイヤ人だ!

 まさかてめぇの親父だったとはな!

 揃いも揃ってフリーザさまに逆らうとは、バカのガキも結局バカってことか!

 がははははは!!!」

 

ドドリアにつられて周囲のフリーザ軍の兵士たちも馬鹿にしたように笑い声をあげ始める。

ラディッツは顔を上げることが出来ず全身を震えさせている。

 

「……んあ?」

 

それが事実を知ったショックによるものと考えていたドドリアだが、スカウターの反応に気付いて笑いを止める。

 

「なんだ?戦闘力が……!?」

 

『サイヤ人は死の淵から蘇る度に戦闘力を高めていく』。

ベジータとの命がけの戦いはラディッツの戦闘力を大きく底上げしていた。

そして彼の激しい怒りが、彼の限界を更に押し上げた。

 

 

「がぁぁあああああああーーーーーっ!!!!」

 

ボボボンッ!

 

 

「「「!?」」」

 

兵士たちのスカウターが音を立てて一斉に爆発する。

唯一破壊を免れていたのは戦闘力測定の上限が高い、ドドリアの新型のスカウターだけだった。

 

「な……戦闘力、2万5000!?」

 

 

「ドドリアぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

 




原作ではナメック星についた時点のベジータが2万4000。
怒りによりそれを上回ったとしました。

バーダックの『たった一人の最終決戦』。
本作ではここを逃せば悟空たちがそれを知る機会はありません。
ですが息子たちには勇敢な父の最期を知ってほしかった。
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