『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第77話

 

およそ1カ月前の戦いにて、ラディッツと相打ちになり気を失っていたベジータは神殿の奥の牢に放り込まれていた。

瀕死の重傷のままで。

ラディッツの意見を聞き入れ見逃しはしたが、そのまま息絶えるならそれも良しと、ヒノカミは彼を寝台の上に放置した。

しかしそこは流石のサイヤ人。伊達に戦闘民族は名乗っていないということか、恐ろしい生命力で一命を取り留め、やがて目を覚ました。

 

その直後、大層暴れた。

しかし牢はヒノカミが多重結界を張った強固な部屋だ。ベジータ程度の力ではビクともしない。

反省の色が見えれば対話も考えたがこの様子では話の途中でうっかり処分してしまいそうなので、彼の監視と世話はポポに丸投げしていた。

 

そして大食漢のサイヤ人に食わせる飯が神殿に常備されているはずもなく、なのでポポは神殿でヒノカミが栽培している仙豆をベジータに与えていた。

最初は飯が『粗末な豆だけ』という状況に激昂していたベジータだったが、やがてその効能を理解してからは独房の中で過酷な訓練を始めるようになった。

なお、ヒノカミがその事実に気付いたのは仙豆の減りが早いことを疑問に思い、ポポに尋ねてから。

随分前に『仙豆は自由に使っていい』と伝えていたのがあだとなったか。

 

「今の戦闘力は4万くらいか……失敗したのぅ。

 お主より遥かに強いぞ?本当に一人でいいのか?」

 

「あぁ、オレを殺したところで待遇が悪くなるだけだ。

 ベジータもそれくらいわかっている……開けてくれ」

 

独房の壁でもある結界の一部を、一瞬だけ解放した。

 

「ラディッツ……!」

 

「話がある、ベジータ」

 

「ちっ、失せろ!貴様と話すことなど……」

 

「聞け。俺たちサイヤ人と、フリーザに関わることだ」

 

「……なんだと?」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……事実か?」

 

「あぁ、ドドリアがベラベラとしゃべってくれたぜ」

 

ラディッツはベジータに全てを伝えた。

ナメック星に向かったこと。

フリーザの命令を受けたドドリアとザーボンが侵攻してきたこと。

フリーザがナメック星、そして地球に願い球があると確信していること。

惑星ベジータとサイヤ人滅亡の真実。

 

「奴らはどうした?」

 

「オレたちで始末した」

 

「チッ、この手で八つ裂きにしてやりたかったぜ。

 まさか貴様なんぞに獲物を奪われるとはな」

 

「獲物ならいるだろう。オレたちの仇はまだ生きている。

 オレたちサイヤ人を負け犬にしやがったフリーザがな」

 

「……戦うつもりか?」

 

ベジータの問いかけに無言で、しかし迷うことなく頷く。

本当に、これがあの弱虫ラディッツなのか。

強者にこびへつらい、格下に粋がることしかできなかったアイツが。

 

「それで、お前はどうする?」

 

「どうするとは?」

 

「決まっている。オレたちがフリーザを倒すのを指を咥えて見ているか、魔女に頭を下げてオレたちの戦列に加わるかだ」

 

「このオレに頭を下げろだと!?

 そんなことができるか!!」

 

「魔女には他者を短期間で劇的に成長させる方法がある」

 

「!?」

 

「オレの成長もソレだ。

 地獄だったぜ……奴に言わせれば軽いもんらしいがな。

 そして今回はいよいよ出し惜しみはなし、あらゆる手段を講じるそうだ。

 オレもカカロットも本気で挑む。

 ……魔女に頭を下げることと、オレたちに置いていかれて最弱のサイヤ人になること。

 どっちがいい?」

 

「貴様ぁ……!」

 

「選べ、ベジータ。今すぐにだ」

 

「くっそぉ……!」

 

長い葛藤の末、ベジータは前者を選んだ。

ラディッツの懇願もあって、誰も見ていない場所で、ヒノカミと二人だけで。

後頭部を見せるベジータの全身が怒りと屈辱で震えていた。

そんな彼にかつての弟子の姿を幻視する。

こういう手合いは、強くなる。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

ラディッツが連れてきたベジータに天津飯たちは何か言いたげだったが、全員言葉を飲み込んだ。

彼らもヒノカミの厳しさはよく理解している。

その彼女が認めているのならばこの場は受け入れることにした。

 

「さて、これよりフリーザとの戦いに備える。

 残念ながら儂ですら力不足と判明したわけじゃがもはや衝突は必至。

 この短期間で急激な成長を遂げねばならぬ。

 そして強くなるにはやはり強敵との競い合いが一番よ。

 よって儂がお主らを鍛え、お主らで儂の相手を務めてもらう。

 我らは互いに高め合い、団結してフリーザを討つ」

 

「でも、あと1か月って予測なんでしょ?

 いくらアンタや孫くんたちでもいきなりそんな……」

 

「方法はある……が、その前に最長老さまのお話を聞いてほしい。

 この窮状を見かねて、素晴らしい提案をしてくださったのじゃ」

 

全員の視線が、大きな椅子に体を預ける目を閉じたナメック星人に向かう。

高齢の最長老にこれ以上負担を懸けまいと、隣にいたネイルが一歩前に出た。

 

「私が説明しよう。

 最長老さまは、触れた者の潜在能力を引き出すことができるのだ」

 

「潜在能力……?」

 

「試してみればわかる。

 そうだな……クリリンと言ったか、最長老さまの隣へ」

 

「へ?へ?」

 

「いいから行ってこい」

 

ネイルに指名され、ヒノカミに促され、クリリンはおっかなびっくりで最長老の傍へと近づく。

そして最長老が彼の頭に掌を乗せた。

 

「そんな力なんか残ってないと思いますよ……?

 散々修行したんですから……」

 

「いえ、あなたは飛びぬけた力を眠らせておられる。

 それを引き出して差し上げましょう……」

 

 

そして突然、クリリンの全身から凄まじい量の気が溢れ出した。

 

 

「「「!?」」」

 

「あ、あわわ……!」

 

「せ、戦闘力が無茶苦茶上がってる!?

 10倍くらいになってるわよ!?」

 

ブルマが念のために持ってきていた予備のスカウターが、クリリンの変貌を数値という形で表した。

 

「……最長老さまや相手に負担はないのですか?」

 

「これはきっかけをお与えになっただけに過ぎない。

 互いに負担はなく、力が眠っているならば誰であろうと何度だろうと可能だ」

 

「じゃあこれでオレたちや……ヒノカミの力を引き出すことが出来れば!」

 

「凄いぞ……希望が見えてきた!」

 

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