『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第78話

 

「まるで生き返ったような気分だぜ……!」

 

「信じられん……オレにこんな力が眠っていたとは!?」

 

「……キヒヒッ」

 

クリリンに続いて潜在能力を解放されたヤムチャに天津飯にチャオズ。

ブルマのスカウターで計測したところ、彼らもまた戦闘力が十数倍にまで向上していた。

しかし彼ら以上に劇的な成長をしたのは、やはり異星人たちだ。

 

「……くっくっく……はぁーーーはっはっは!!」

 

「落ち着けベジータ。

 ……まぁ、気持ちはわかるがな」

 

ピッコロやサイヤ人たちは十数倍どころか、数十倍という爆発的な成長を遂げた。

ベジータは戦闘力100万の大台に乗っている。ラディッツもあと一歩というところだ。

悟空に至っては全力の界王拳を使えば瞬間的には1000万に届くかもしれない。

ラディッツはともかくベジータに力を与えることは最長老もヒノカミも大層悩んだが、今は少しでも戦力が欲しい状況だ。

『ことが終わっても地球やナメック星には手出しをしない』という言質も取っている。

仮にも王族を名乗る者が簡単に約束を反故にすることもないだろう。

 

しかし話はそううまくは行かなかった。

いや、ある意味で失敗だったと断言してもいい。

 

「なぁばぁちゃん、機嫌直せってぇ」

 

「……もうしばらく、そっとしておいてくれ……」

 

「本当にめんどくさい奴だな貴様は」

 

肝心要のヒノカミの中に『潜在能力が無かった』。

彼女は既に自分の力を一滴も残すことなく絞り切った後だった。

『凡人』でしかない彼女には『秘められた力』なんて都合のいいものは存在しなかったのだ。

 

「以前ヒノカミが自分を『凡人』と定義していたのは、こういうことじゃったか……」

 

「自力で持てる力の全てを引き出したというのは偉業ではあるのだがな」

 

折角だからと亀仙人や先代、ついでに悟飯とブルマまで潜在能力を引き出してもらったと言うのに、一切成長しなかったのはヒノカミだけだった。

特に悟飯はハーフとは言えやはりサイヤ人なのか、2000そこそこだった戦闘力が6万近くまで伸びていた。

ブルマは身体能力はほとんど変化はないが『妙に頭がさえてきた』とか。

それはそれで頼もしくもあり、恐ろしくもある。

後で早速スカウターの改良に取り組んでみるつもりらしい。

 

「……ま、お主らを鍛える手間が減っただけでもめっけもんと思うか」

 

体育座りで神殿の外周部に座り黄昏ていたヒノカミがようやく立ち直ったらしい。

広場の中央の円卓に改めて全員が集まる。

 

「では改めて言うが、お主らには儂を相手に全力で戦ってもらう。

 殺す気で来い。儂も全力でお主らを殺す。

 殺すたびに生き返らせる。とにかく『死ぬ気』で強くなれ。

 そしてどこで修業するかじゃが……『精神と時の部屋』を使う」

 

それは神殿の中にある特殊な部屋。

地球と同じ広さがある真っ白な世界、酸素が地上の4分の1しかない、重力が地球の10倍、気温が50度からー40度まで変化するなど実に過酷な環境であるが、最大の特徴と言えばやはり『時間の流れ方が違う』こと。

扉を閉めた状態では部屋の中は地球の360倍の速さで時間が進む。

即ち、その部屋の中で1年過ごしても地球では1日しか経過しないことになる。

元々は『同時に入れるのは2名まで』、『一人の人間が滞在できるのは地球時間にて最大48時間まで』といった制限があったのだが、それらはヒノカミがすでに改良したことで撤廃されている。

空間制御・存在改変のエキスパートの名は伊達ではないのだ。

 

「そんなものがあるなら、なぜ今まで黙っていた!?」

 

「そうですよ!それさえあれば幾らでも時間が……!」

 

「老けるぞ」

 

「「はぁ?」」

 

「それだけではない。

 地球と時間の流れが違うということは、お主らとお主ら以外の者たちとの時間の感覚がズレるということじゃ。

 他の者にとっては1日でもお主らには1年。絶対に記憶の齟齬が出るじゃろ。

 あとまぁ単純に、あまり時間を無駄遣いするような行為はな。個人的に好かん」

 

自分だけが世界から置き去りにされるのは、彼らが思っている以上に堪える。

人々との繋がりがあればなおのこと。経験者は語るという奴だ。

 

「なんで1日2時間、1カ月を12回に分けてトータル1年の修行とする。

 各々仕事が終わったら夕方に集合な」

 

「!?この状況でまだ日常を生きろと!?」

 

「メリハリは大事じゃよ。

 修行とはただ体をいじめればいいというわけではなかろう。

 ……じゃがお主らは後一週間は『旅行中』ということになっとるからな。

 突然職場に戻るのもおかしいじゃろうし、精神と時の部屋に入る以外は好きにしてよい。

 神殿で修業するも、カプセルコーポレーションに顔を出すも、実家に戻るも自由にな」

 

もっとも、ヒノカミはこれから戦いの時までずっと精神と時の部屋に入り浸るつもりだが。

地球を守ることこそが彼女の仕事であり日常。

加えて厳しい環境に適応できる能力を持ち、彼女の記憶力は何年経過しようと風化しない。

ヒノカミといえど年単位で孤独を味わうのは精神的にはかなりキツイが、地球を守るためには仕方がない。

……こんな重荷を背負うのは自分一人だけで十分だ。

 

「……納得しておらんようじゃな。

 だったらまずは今日の夕方からの2時間を乗り越えよ。

 それでもまだやる気があるなら検討する。それで良いか?」

 

「「「おうっ!」」」

 

高揚する気分のままに力強く返事をした戦士たち。

ヒノカミは彼らのやる気に応えて『あらゆる手段を講じて彼らを鍛え上げる』と決めた。

 

 

 

 

これからが本当の地獄だ。

 




便利なものは何でも使うヒノカミですが、彼女にも彼女なりに好き嫌いや線引きはあります。
『安心院なじみの世界』にて『不知火の里』に4000年間閉じ込められたり、死神の世界で1000年間グレートスピリッツを務めたりしてきた彼女は他の者に似たような経験をさせることを嫌っています。
浦島太郎のように戻ってきたら世界が丸ごと変わっていたわけですので。
なので『不可死犠』により若返らせることもできるのですが悟空たちに『精神と時の部屋』を使わせることに抵抗があります。

ただし今回は手段を選ぶ余裕がなく、悟空すらも含めた全員に対し『シャーマン式修行法』を『精神と時の部屋』で敢行します。

これからが本当の地獄だ。
大切なことなので2回言いました。
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