『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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前話にてラディッツが使っていた『ファイナルスピリットキャノン』はバーダックが最期にフリーザに向けて使った技です。
ラディッツ自身に名前付きの技が少ないこともありますが、父の無念を晴らす意味でも是非使わせてやりたいなと。トドメにはなりませんでしたが。


第83話

 

ナメック星に空いた巨大な穴が、元気玉の威力が如何に恐ろしいかを物語っていた。

真っ暗な空洞の中に周囲の海水が勢いよく流れ込んでいく。

 

これをまともに喰らったフリーザは無事ではあるまい。

無事ではないが……死んではいない。

 

フリーザの気が消えていないことをチャオズがはっきりと感知していた。

今のうちにそれぞれが衣服の中に隠し持っていた仙豆を飲み込み、大穴の近くへと飛んでいく。

 

「……マジで生きてやがった」

 

「はぁーー、はぁーーーーっ!

 流石のオレも今のは死ぬかと思った……。

 このフリーザさまが死にかけたんだぞ……!?」

 

彼らの前で、大穴の奥からフリーザが浮かび上がって来た。

高い戦闘力も威圧感も未だ健在。

しかしようやく底を見せた。フリーザは明らかに負傷・疲弊している。

対して悟空たちは仙豆を食べて完全回復。

もう一度元気玉を作ることは不可能だが、今の彼らなら実力でフリーザを押し切ることができるだろう。

 

「終わりだ、フリーザ!」

 

「…………っ」

 

そしてフリーザもそれを理解している。

 

(敗れる……このオレが!?

 なんという屈辱だ……!

 あんなサイヤ人や、辺境の猿どもに……!

 オレは、フリーザだぞ……!!)

 

空中に浮かぶフリーザの前には、どうやってか知らないが万全の状態にまで回復したらしい8人の敵。

僅かの油断もなく身構え、フリーザを取り囲んでいる。

 

 

「……オレは死なん。

 死ぬのは貴様らだ……!」

 

「……?」

 

フリーザは両手を掲げ、エネルギーの球体を作り出す。

中々の威力が込められているようだが、この程度なら直撃を受けたとしても重傷にはなるまい。

悟空たちはフリーザの意図を理解しかねていた。

……理解しようなどとせず、さっさと攻撃するべきだったのだ。

 

 

 

「この星を消す!!」

 

 

「「「!?」」」

 

フリーザは掲げていたエネルギー球を真下へと投げつけた。

そこは元気玉により巨大な穴が開いており、光は悟空たちが止める間もなく吸い込まれて。

 

「ふっとべーーっ!」

 

「しまったぁ!!」

 

エネルギー球は星の中枢を破壊した。

宇宙から、星が一つ消えた。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

『……くくく、はははは……はぁーっはっはっは!

 ざまぁ見やがれ!このフリーザさまに逆らうからだ!』

 

瓦礫となった星の残骸が漂う宇宙空間にて、フリーザは高らかに勝利を宣言する。

宇宙空間ではその声は響かず、そもそも周囲には声を聞く存在などいないが。

 

フリーザの一族は宇宙空間でも生き延びることができる。

しかしサイヤ人はできないはずだ。ナメック星人と地球人も同様だとは思うが、たとえそうだとしても星の爆発に巻き込まれたのだ。無事ではあるまい。

 

『くっくっく……ん?』

 

だから瓦礫の隙間から見えたわずかな光は、最初は何かの見間違いかと思った。

 

『……なんだとぉ!?』

 

しかしそれは見間違いなどではなく、巨大なエネルギーの球体が宇宙空間に漂っていた。

連中はその中で生き延びていた。8人全員誰一人欠けることなく。

 

 

 

 

「……なんとか、なったか……」

 

ナメック星が爆発する瞬間。

ヤムチャが周辺の大気を可能な限り集めて圧縮し、クリリンが気錬縄で全員を引き寄せ、天津飯が周辺に分身を吐き出し、チャオズが分身に干渉し分解してエネルギーの膜を作り出した。地球人4人が作り出した即席の宇宙船だ。

 

「と言っても、これじゃもう出来ることなんてないぜ!?

 カプセルの宇宙船を出して、脱出しよう!」

 

「それは無理そうだ。フリーザに気付かれた!」

 

フリーザがこちらに向けた指先から、レーザーのような気弾が雨のように撃ちかけられる。

 

「あわ、あわわわわ……!」

 

「うぎっ、こっ、のぉっ!」

 

「貫かれるなよ!?圧縮した空気が炸裂する!」

 

チャオズの武装で同時に干渉できるのは2つまで。全ての攻撃を逸らすことはできない。

膜の表面にクリリンが糸を這わせたが、気弾から吸収する量よりも受ける衝撃の方が大きい。

ヤムチャは集めた大気を膜の内側に収まる大きさに留めておくだけで精一杯だ。

 

「こんにゃろ!」

 

「ちぃっ!」

 

「……くそぉ!」

 

悟空、ピッコロが膜の外側に飛び出しフリーザへと突っ込む。

天津飯は分身だけを外に出して二人の後に続いた。

ヤムチャたちの手が塞がっており連携ができない状態では、悔しいが足手まといにしかならないと自覚している。

だからせめて二人が気にせず巻き込めるように、分身だけを向かわせることしかできなかった。

 

「くっ……こんなことならオレたちも……!」

 

「無茶言うなよ!一番得意だったオレでも3年かかったんだ!

 悟空なんて9年だぜ!?

 1年そこらで習得できるはずなかっただろ!?」

 

ヒノカミが編み出し悟空たちが習得した『天神武装』は、肉体の強度と生命力を強化し極めれば『深海や宇宙空間でも生存できる』。

だが悟空とピッコロは習得しているものの極めたとは言い難く、精々10分そこいらしか活動できないだろう。

ベジータとラディッツは当然習得していない。

クリリンたち4人は数時間以上活動できるが、内3人は悟空やベジータたちのためにこの球体を維持しなければならない。

自由に動けるのが天津飯一人ではフリーザ相手では力不足だ。送り出した分身はあっさりと破壊されてしまった。

 

「せめて二人の気もオレにくれ!

 少しでもこの膜を厚くする!

 今のまんまじゃ、悟空たちがこっちを気にして全力を出せない!」

 

「ちっ……持っていけ!くそったれめ!」

 

クリリンが伸ばした糸がベジータとラディッツに繋がる。

二人の力を吸い取って膜の維持に回し、フリーザの攻撃を受けても揺るがなくなった。

これでようやく悟空とピッコロがフリーザに専念できるようになったが。

 

「……駄目か!やはり二人だけではフリーザを抑えられない!」

 

「くっそぉ……やられるのを先延ばしにしただけかよぉ……!」

 

単純に戦力が足りていない上に、二人の動きが精彩を欠いている。

無理もない。天神武装の維持に失敗すれば即死なのだからどうしてもそちらに意識を割かれてしまっている。

悟空は10倍を超える界王拳を制御する余力もなく、じわじわと追い詰められている。

加えてこの状況では悟空とピッコロのどちらかが時間切れになった時点で戦線が崩壊する。

 

「っ!悟空!」

 

そしてついに悟空が大きく姿勢を崩し、フリーザが止めを刺そうと迫る。

宇宙空間に空気はない。

音が届かないと分かっていても、ヤムチャは大きな声で叫んだ。

 

「「「っ!?」」」

 

しかしその直前、フリーザの背後に何かが現れた。

振り下ろした刃が肩に食い込んだ瞬間、フリーザは刃が進むよりも早くその場を離れて両断されることを免れる。

 

 

「……ヒノカミ!?」

 

 

宇宙空間でありながら炎を背負った鬼が、悟空たちを庇うようにフリーザと対峙する。

 

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