『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第84話

 

「ヒノカミ、何故ここに!?」

 

『神の座を先代さまにお返しして来た!

 これで儂にも縛りはない!』

 

「なんだと!?

 ……貴様、その戦闘力は!?」

 

悟空とピッコロを膜の中に転移させつつ鬼が答える。

ラディッツのスカウターに表示されたヒノカミの戦闘力は地球にいた時の半分ほどにまで低下していた。

『地球の神』の座を離れたことで自由を手に入れた代わりに、神としての恩恵すらも失ってしまったようだ。

 

「どういうつもりだ!

 オレたちが倒せなければ地球で迎え撃つはずだっただろう!?」

 

『事情が変わった!フリーザはここで仕留める!

 コイツを地球に近付けるわけにはいかん!』

 

「何言ってんですか!逃げましょうよ!

 アンタならオレたち連れてこの場を離れるなんて簡単でしょ!?

 一旦地球に引いて態勢を……!」

 

『わからんか!コイツは既に味を占めた!

 『こうすれば勝てる』と理解してしまったんじゃ!

 儂らが地球で待ち構えていると知れば、地球に降りる前に地球を破壊するぞ!』

 

「「「!?」」」

 

『大気のある星で出会えば即座に星を破壊し、宇宙で出会えば時間切れまで逃げ続けるじゃろう!

 貴様らと戦うつもりがもうないんじゃよコイツは!

 もはや貴様らでは戦いの舞台に上がることすらできんのじゃ!』

 

「そんな……!」

 

フリーザは武闘家でも戦士でもない。悪を成す支配者だ。

『自分が強者である』ことだけが重要であり、『自分が強者となる』必要はない。

自分の地位や命を脅かす存在が現れたのならば強くなって追い越すのではなく、あらゆる手段を用いて蹴落とせばよいのだ。

そのためならば幾らでも星を砕き、住民を皆殺しにし、必要ならば部下すら切り捨てるだろう。

ヒノカミも含めて、彼らはフリーザの悪辣さを理解しきれていなかったのだ。

 

前提条件が間違っていた。悟空たちがいくら強くなっても意味が無かった。

フリーザが宇宙空間で活動できるタイプの宇宙人である以上、同様に宇宙空間で永続的に活動できるヒノカミしか同じ土俵に立つことができない。

そしてフリーザに劣る彼女に勝機があるとすれば、フリーザが悟空たちとの戦いで弱っている今しかない。

だからこそ界王の力を通じて戦況を監視していたヒノカミは、フリーザがナメック星を破壊した直後押し付けるように神の座を先代に返還し、地球からこの場へと転移してきた。

ナメック星がまだある内に最初からヒノカミも悟空らと共に戦っていればそこで倒せたかもしれないが、もはや後の祭りだ。

 

『貴様らは距離を取れ!後は儂が引き継ぐ!』

 

「ですが……ヒノカミさまだけでは!」

 

地球の神という恩恵を失った彼女の戦闘力は3000万。

そして既にヒノカミは鬼相纏鎧も天神武装も発動している。

つまりこれが正真正銘、神ではない彼女の全力だと言うことだ。

数値だけなら悟空どころかピッコロにも劣る。それこそ天津飯たちと大差がない。

対してフリーザは消耗しているとはいえ、未だに1億近い戦闘力が残っている。

一対一では勝負になるはずがない。

 

 

 

『……怒髪焦天(イグニッション)!』

 

 

 

「「「!?」」」

 

「戦闘力が……!?」

 

ヒノカミの鎧の隙間から炎が噴き出すと共に、スカウターの数字が跳ね上がっていく。

 

『ずぁぁぁぁ……かぁぁああっ!!』

 

「戦闘力、6000万!?」

 

ヒノカミは炎の翼を羽ばたかせフリーザへと飛翔していく。

 

『貫け赫月!』

 

『カァァァァアア!!』

 

接近しながら、ヒノカミは右腕の拳を突き出した。

赤い手甲から放出されたエネルギーの矢がフリーザへと迫る。

しかしその動きはフリーザにとってあまりに遅く、わざわざ受けてやる理由もないと回避を選択する。

 

『白星、押しつぶせ!』

 

『シャァァァアア!!!』

 

続いてヒノカミはフリーザの進行方向に左腕を突き出した。

真っ白な左腕が巨大化し、壁となってフリーザの行く手を阻む。

驚きつつも速度を緩めずそのまま体当たりで弾き飛ばそうとしたフリーザだが、この巨大な腕は予想以上のパワーと強度でありわずかにしか動かなかった。

フリーザは赤い矢を回避することができなくなり、やむを得ず防御を選択する。

 

そして矢がフリーザの体に触れた瞬間、フリーザは体を捻って矢との接触を最小限に抑えた。

防御しようとしたフリーザの左腕の、矢に触れた部位がごっそりと抉り取られていた。

 

『鬼火ぃ!!』

 

『……!!』

 

続いて大きな肩当が展開し巨大なかぎ爪を持った腕となる。

掌に開いた砲口から爆炎が吐き出されフリーザに直撃した。

 

『……ちぃっ!!』

 

ヒノカミはその場を大きく離れる。直後爆炎の中から光線が飛んできた。

煙が晴れた後には煤で汚れたフリーザが右腕の指を突き出していた。

左腕以外のダメージは大きくないようで、忌々し気に鬼を睨みつけている。

 

振動する大気がない宇宙空間では、互いに声は届かない。

念話は可能だがヒノカミはフリーザとの対話など望んでいない。頼まれたってお断りだ。分かり合うことはありえない。

 

殺す。必ず殺すという強い殺意を露わにして、白い異星人と異形の鬼がぶつかりあう。

 




それこそ『一瞬でケリを付けられるほど圧倒的な実力差』でもない限り、悟空たちではフリーザを倒すことができません。
悟空たちを強敵と認めたフリーザは、二度と彼らと同じ土俵に立とうとはしないだろうから。
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