『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第86話 超サイヤ人

 

時は遡り、地球での修行中。

12日間を予定していた修行期間の10日目、精神と時の部屋で換算して10か月目にして、ようやく。

 

「……だぁ~~~っ!!負けじゃ負け!儂の負けじゃぁあ!!」

 

武装や能力を解除して白い地面の上に大の字で転がるヒノカミを、8人の戦士たちが肩で息をしながら見つめていた。

 

「……勝った……のか?」

 

「……勝ったんだ、オレたち勝ったんだよ!」

 

「「「……っしゃあぁぁぁっ!!」」」

 

8人掛かりで協力してとは言え、遂にヒノカミを超えた。

戦闘力5000万を超える神を、遂に降した。

仙豆を食べることすら後回しにして、彼らは肩を抱き涙を流して念願の勝利を噛み締める。

 

「はぁ~~……不条理じゃよなぁ、30年も生きておらぬ若者たちが。

 儂の数千年の努力はなんだったんじゃろうなぁ……」

 

「は、ははは!ようやく膝をつきやがったな!」

 

「もうすぐだ……もうすぐ完全に貴様を超える!

 首を洗って待っていろヒノカミぃ!」

 

ヒノカミに対する恨みと殺意が高いベジータとピッコロは、遥か彼方と思えた目標が目の前にまで迫って来たことで特に強く息巻いている。

 

「……そうじゃな。もうそろそろじゃろうし、話しておくか」

 

今はまだ彼ら全員が協力してだが、このペースで成長するならやがて一人でもヒノカミを倒せるようになるだろう。

ヒノカミは上半身を起こし、胡坐をかいた。

 

 

 

「儂はな、『一度死んだら終わり』なんじゃよ」

 

「「「……は?」」」

 

「お主ら肉体を持つ者は一度死ぬと魂が残る。

 しかし儂は既に肉体を捨てた、魂だけの存在じゃ。

 『魂の死』は『存在の死』。

 完全なる消滅。蘇ることは二度とない」

 

神霊のヒノカミは彼らの知る者で例えるなら、占いババに現世に呼び戻された、悟空の祖父である孫悟飯のような状態。

人を辞め神霊になったときに、人としての彼女はすでに死んでいる。

そして神霊になった以上人として生き返ることもできない。

 

ここがシャーマンの世界なら砕かれた魂であってもグレートスピリッツへと還り、そこに存在が残るだろう。

だがこの世界にはグレートスピリッツは存在せず、そもそもヒノカミ自身がグレートスピリッツも同然の存在。

『彼女が魂の還る場所』であり、『彼女の魂が還る場所』はない。

 

ヒノカミは条件こそあるが、死んだ者を何度でも生き返らせることができる。

しかしヒノカミが死ねば、彼女を生き返らせる方法はない。

 

「ドラゴンボールでも、生き返れねぇってことか!?」

 

「あぁ、無理じゃな。

 この世からもあの世からも、存在そのものが跡形もなく消えてなくなる」

 

「……はは、冗談キツイっすよ」

 

「かかか、こんな質の悪い冗談は言わんさ」

 

そして彼女は誤魔化しはしても嘘をつかない。

 

「……だからなんだと言うんだ。

 命乞いでもしているつもりか!?」

 

「おい、ピッコロ!!」

 

「いやいや、そんなつもりはないさ。ただ……」

 

ヒノカミはへらりと笑って。

 

 

「儂を殺せるのは一度きりじゃ。

 いつ、誰が、どうやって儂を殺すのか。

 後腐れが無いようにちゃんと決めておくんじゃぞ?」

 

 

平然と言い放った。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「ばぁ……ちゃん?ばあちゃん!?」

 

『無駄だ……あ奴は消えた……。

 この世界のどこにも、存在が感じられない……!』

 

「そんな……ヒノカミさま!」

 

「オレたちは、一体何のために……!」

 

思惑は様々だったが、彼らはヒノカミをフリーザに殺されたくはなかった、

だから彼らはヒノカミが参戦する前に自分たちだけでフリーザと戦いたいと望んだ。

しかし結局彼女を戦場から遠ざけるどころか、共に戦うことすらできず指を咥えて見ていることしかできなかった。

挙句自分たちは庇われ、目の前で彼女を死なせてしまった。

 

『!?フリーザが逃げるぞ!

 やるんだ悟空!奴は弱っておる!

 今ならお前の全力を込めればトドメを刺すことができるはずだ!』

 

「ゆるさんぞ……よくも……よくもっ!」

 

「おい、孫!!」

 

『早くせぬか!この機を逃せばフリーザは傷を癒し、地球ごとお前たちを殺しにくるぞ!

 ……ヒノカミの”死”を無駄にするつもりかっ!?』

 

 

 

プチン

 

 

 

「「「!!?」」」

 

悟空の黒髪が逆立ち、金色に染まる。

瞳も黒から青に、そして全身から金色のオーラが立ち上る。

悟空の変貌に驚愕する仲間たちを余所に、突如悟空の姿が消える。

 

「!?」

 

悟空は一瞬で彼らを覆うエネルギーの膜を通り抜け宇宙空間に飛び出し、フリーザの前に移動していた。

 

 

 

『オレは怒ったぞーーーーっ!!!

 フリーザーーーーーーーッ!!!』

 

 

悟空の魂からの叫びが大気の無い宇宙空間すら揺るがす。

悟空の戦闘力を計測したベジータとラディッツのスカウターが爆散した。

 

「馬鹿な!?まさか……これが!?」

 

「超サイヤ人……!?」

 

怯えるフリーザは全力の気功波を放つが、直撃したはずの悟空は一切傷を負っていなかった。

ヒノカミとの戦いで疲弊していたフリーザは逃走を選択。

全身にエネルギーを纏い、悟空に背を向け全速力でその場を離れていく。

 

『おまえはもう許さない』

 

両手を前に出して合わせ、腰を捻ってその後ろに置く。

 

『くたばれフリーザーーーッ!!!』

 

超サイヤ人となった悟空のかめはめ波が宇宙を貫き、フリーザを飲み込んだ。

フリーザはエネルギーの奔流に全身を焼き尽くされながら、宇宙の彼方へと消え去った。

 




ヒノカミの修行にて悟空たちは数えきれないほど死んでおり、彼らは仲間の死に慣れ切っています。
なので原作のように親友のクリリンが殺されたとしても悟空の怒りが足りず、超サイヤ人になることはできないと推測しました。
彼の覚醒を促すには、一度も彼の前で死んだことがなく死んだら蘇生できないと判明しているヒノカミの犠牲が必要だと判断しました。
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