『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第87話 戦いの結末

 

「……終わったな、悟空。おまえが終わらせたんだ」

 

「クリリン……でも、ばあちゃんが……!」

 

「あぁ……でもお前は、ヒノカミさんの想いにちゃんと応えてみせたじゃないか」

 

元の状態に戻った悟空を、クリリンが迎え入れる。

超サイヤ人と思われる先ほどの変化の詳細を知りたいベジータも、今ばかりは口を閉じていた。

 

「……帰ろう、地球へ。

 オレたちとお前と、ヒノカミさんで守った地球にさ」

 

『……本当によくやったぞお前たち。

 これでヒノカミもきっと浮かばれる……む?』

 

そこで界王は気付く。

彼の頭の触覚が敏感に反応する。

 

 

草葉の陰ではなくナメック星の残骸の陰から覗く、弱々しい力の存在に。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

(……で、出ていきづらい……!

 大願成珠!どうすればいい!?

 どうすればすんなり受け入れてもらえる!?)

 

(…………)

 

(沈黙するなぁ!無いと言うのか!?

 儂が平穏に事を終えられる手段が無いと言うのかぁ!?)

 

(カァ~~)

(シャ~~)

(…………)

 

宇宙空間に浮かぶ大きな岩塊の後ろで、すっかり力を使い果たしたヒノカミが胸元の珠に必死に呼びかけていた。

三つ脚の烏と白い蛇と、ヒトダマモードになった炎の巨人が彼女の周囲に浮かんでいる。

 

フリーザとの打ち合いをした後、ヒノカミは大願成珠の指示に従い『数分後の未来に転移』した。

彼女は一旦姿を消してフリーザの意表を突くためかと想像していたが、そうではなかった。

転移直後のヒノカミが目にしたのは、黄金の輝きを放つ悟空がフリーザを消し飛ばす瞬間。

 

つまり『ヒノカミが死んだと思わせることで悟空を怒らせ彼の覚醒を促すこと』が大願成珠の導き出した答えだったのだ。

これが『悟空たちを守りつつフリーザを倒す』という、ヒノカミの出した条件に沿った最適解。そして。

 

『……そこで何をしている、ヒノカミ』

 

『ぎくぅっ!?』

 

「「「なにぃっ!?」」」

 

『ヒノカミへの被害を考慮しない』という点も忠実に守られていた。

 

「おいっ、どういうことだ!

 奴は生きているのか!?どこにいる!?」

 

『そこの一際でかい岩の後ろだ!』

 

『ひいぃっ!』

 

「よーし、3つ数えるうちに出てこい!

 さもなくばその岩ごと跡形もなく消し飛ばしてやる!!

 ……いーーーち!!」

 

『わぁぁあっ!待て!待つんじゃあ!』

 

魂のほぼ全てを燃やしてしまった今のヒノカミは、力の最大値が著しく低下した状態だ。

永遠快気は適応されているのでエネルギー切れはないが、それこそ端末と変わらぬ程度の力しか発揮できない。

この場から脱出するほどの距離を転移することはできず、ピッコロの攻撃を受けたら今度こそ間違いなく消滅してしまう。

 

全力で視線を泳がせつつ両手の人差し指を突き合わせ、3体の霊を伴ってのこのこと出てきた女神に、悟空たちの鋭い視線が突き刺さる。

 

「……説明してもらおうか?」

 

『……はい』

 

 

膜の中央に連行されたヒノカミは、針の筵の中で洗いざらい白状した。

戦いで大願成珠を使っていたことも、その答えに従って動いていたことも……戦いが終わる直前から数分間、こっそり影から見ていたことも。

彼女が意図的に狙ってやったわけではないとは伝わった。

顔を出しづらかったという思いも理解はできる。

だがそれでも。

 

「だからと言って、やっていいことと悪いことがあるだろう!?」

 

「オレたちの涙を返せコノヤロー!!」

 

「今回ばかりは流石に庇いきれませんよ!?」

 

「……サイテー」

 

「ひぅっ!?」

 

ヤムチャらはともかく、比較的ヒノカミに対して礼儀正しい天津飯からすらも強い口調で攻め立てられた。

ピッコロとラディッツとベジータの3人はゴミを見るような目を向けている。

 

「……ばあちゃん」

 

「!?ご、悟空……!」

 

ヒノカミはすがるように悟空を見上げた。

 

 

悟空は超サイヤ人になっていた。

 

「……ちっとは反省しろ」

 

「……っ!?」

 

義理の息子にまで冷たい目で見降ろされ、ついにヒノカミの心が決壊した。

 

霊体にとって『精神の死』は『存在の死』。

戦いでほとんどを燃やし尽くしてスカスカになった魂は、その衝撃に耐えきれなかった。

 

 

女神の体から光の粒子が漏れ出し、輪郭が薄れていく。

 

永い、永い時を生き続けてきた一人の女の魂の旅は、今ここに終わりを迎えようとしていた。

死因は『息子の反抗期に耐え切れずにショック死』である。

 

 

 

「……おい!コイツ本当に消えかけてるぞ!?」

 

「メンタル弱すぎだろ!いつもの鋼の精神はどうした!?」

 

「なんでもいい!今はとにかく褒めちぎれ!!」

 

「本当にめんどくさい奴だな貴様は!!」

 

 

神霊のヒノカミは霊体なので、仙豆を食べても回復することはない。

帰りの宇宙船の中で悟空たちは放心状態のヒノカミを必死に励まし続けて、何とか地球に連れ帰るまで持たせることに成功した。

 

帰還直後、ナメック星人たちにお願いしてナメック星の神龍『ポルンガ』を呼び出してもらう。

3つの願い事の一つ目でヒノカミを万全の状態にまで戻してもらい、ようやく彼女は峠を越えた。

そのまま二つ目の願いで破壊されたナメック星を復活させ、三つ目の願いでナメック星人たちは母星に帰ることにした。

復活したヒノカミが彼らを送り出すこともできただろうが彼女がまだ神殿の隅で膝を抱えていたことと、他に願いも無かったので自分たちのポルンガに頼むことにしたらしい。

ナメック星人たちは地球の恩人たちに感謝を伝え、再会を約束し故郷へと帰って行った。

 

ナメック星への旅行に端を発するフリーザとの戦いは、こうして終わりを迎えた。

 




原作ではナメック星人たちは別の星に移っていますが、本作ではナメック星を復活させています。
これはまだ最長老が生存しているため彼の力があれば可能だろうからという判断です。
原作でも魔人ブウ編にて最長老の座を継いだムーリがブウに破壊された地球を復活させていたので、もしかしたら原作のフリーザ撃破後でも可能だったかもしれませんが。

ともあれ、かなり原作から乖離したフリーザ編。締まらない結末ですが完結となります。
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