『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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人造人間編、開始します。


第91話 異界からの来訪者

 

フリーザとコルドの敗北と死亡は、今度こそフリーザ軍全体に広まった。

フリーザ軍は完全に瓦解し散り散りバラバラに。

一部残党が結集し新組織を結成して悪行を続けたりもしているが、軍を名乗っていた頃と比較すればチンピラもいいところ。

放置していいというわけではないがヒノカミが慌てて対処せねばならぬ規模でもない。

それこそ、ギニュー特戦隊を改心させて彼らに任せたいところだ。

地球を離れて随分経つ。ヒノカミは残党狩りの旅を止め帰郷し、先代から再び地球の神の座を返還してもらった。

 

「……ん?」

 

再び地球を見守るようになってしばらく。

ヒノカミは予期せぬ来訪者の存在を察知する。

外宇宙から太陽系に接近してきたのではない。突如として地球上に何かが出現した。

 

(空間転移か?どれ……)

 

神殿から視線を向ける。

空中に浮かんでいた数メートルほどの機械が人気のない荒野に着陸した。

一人乗りの乗り物のようだ。中から出てきたのは、剣を背負った青年。

 

(……カプセルコーポレーションのマーク?)

 

外見上は地球人、ジャケットと乗り物の表面にはカプセルコーポレーションのマークがある。

彼は乗り物をカプセルに収納した。間違いなく地球の人間のようだ。

青年は空を飛んで周囲をキョロキョロと見渡している。

 

(舞空術が使えるか……あんな奴おったか?)

 

ヒノカミ自身、端末でかなり頻繁にカプセルコーポレーションに出入りしている。

ブルマだけでなく大半の社員とも顔見知りだし、カプセルコーポレーションの製品のほぼ全てを把握している。

一度覚えたことは忘れない記憶力を生かして遡るが、青年の顔にも彼が乗って来た機械にも見覚えがない。

 

青年はしばらく荒野を飛び回ったかと思えば、遠方へと飛び去った。

進路の先にあるのはパオズ山だ。

 

(悪ではなさそうじゃが……)

 

念のため対処するべきだろうと、ヒノカミは行動を開始する。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

一方パオズ山に進路を向けた青年、トランクスは困惑していた。

 

(……悟飯さんの隣にある気、やっぱりこれが悟空さんなのか。

 どういうことだ?この時はまだ宇宙から戻ってきていないはず……)

 

フリーザとの決着をつけるため一人ナメック星に残り、星の爆発から辛うじて脱出。

1年以上宇宙を旅して今日という日に遂に地球に帰還する。

『彼が聞き及んだ歴史』ではそうなっていたはずだ。

 

(それに悟空さんだけじゃない。

 抑えているようだけど、地球の至る所からとんでもない気を感じる。

 下手すれば悟空さん以上かも……一体誰だ……っ!?)

 

間もなく悟空のもとに到着というところで、彼の近くに新たな気が出現した。

いや、別の場所にあった気が一瞬で移動した。

一つだけでなく次から次へと、間もなく地球上の全ての強者がその場に集合していた。

 

(なんだ!?どうなっている!?)

 

まるで狙ったようなタイミング。自分の接近は察知されていると判断するべきだろう。

 

(……悟飯さんと一緒なら、敵じゃないはずだ。

 行くしか、ないか……)

 

警戒されないよう速度を落としゆっくりと接近、着陸する。

 

 

「お、来た来た」

 

「ヒノカミから聞いた通りの風貌だな……誰か見覚えあるか?」

 

「いや、ないな」

 

「ウチの社員のリスト洗い出したけど、やっぱりあんな子はいないわね」

 

「……!」

 

悟空と悟飯の周囲には、彼の仲間である戦士たちが集合していた。

その中のとある人物を目にして感極まって涙が出そうになるが……ぐっと堪える。

そして母から聞いた情報にない二人の人間の姿が目に入った。

 

悟空とどこか似た顔の、サイヤ人らしき長髪の男性。

そして神々しい気配を発する女性。彼女が一歩前に出た。

 

「すまんなお客人。

 そちらの正体がわからぬ故、総出で出迎えさせてもらった」

 

「貴方は?」

 

「儂はヒノカミ。

 この地球の神を務めておる」

 

「なっ!?地球の神はナメック星人の方では!?」

 

「……何故知っておるのかはひとまず置いておこう。

 それは過去の話。一時離れもしたが、すでに100年以上前に儂が後を継いだ」

 

「どういう、ことだ……!?」

 

「次はこちらから尋ねたい。

 そちらは何者か?なんのためにこの地に来た?

 地球に関わりがあるようじゃが、儂らはお主の存在に覚えがない」

 

「それは……」

 

予想外の事態に戸惑い一度口を閉じるが、当初の予定通りに行動するべきだろうと再び口を開く。

 

「……すいません、皆さんには言えないんです。

 どうか悟空さんとだけ話をさせていただけませんか?」

 

「オラと?」

 

「お願いします」

 

「ばあちゃん、いいか?」

 

悟空が振り向くと、ヒノカミと名乗った女性が無言で頷いた。

何故彼女を『ばあちゃん』と呼ぶのかも気になったが、この場は飲み込んで二人で離れていく。

 

 

そして二人は、豆粒ほどの大きさに見えるまで離れたところで立ち止まった。

 

「……あんくらいの距離だと、ヒノカミさんなら聞こえますよね?」

 

「まぁな。ピッコロも行けるじゃろ?」

 

「あぁ」

 

「彼には悪いが、盗み聞きさせてもらおう。

 悟空だとうっかり聞き逃しするかもしれん。

 ピッコロも注意してくれ」

 

青年が悟空に『超サイヤ人になってくれ』と頼んだ。

そんなことまで知っているとはこちらの事情に相当通じているようだ。

要望に応えて悟空が変身すると。

 

「「「!?」」」

 

青年も超サイヤ人へと変身した。

 

「馬鹿な!アイツもサイヤ人なのか!?」

 

「そんなはずはない!サイヤ人の生き残りはもう俺たちだけだ!」

 

悟空とその息子の悟飯、ラディッツとベジータの合計4人。

彼らが知る限りこれで全員のはず。

どうやら青年は手合わせを望んでいるらしく、悟空がそれに応える。

悟空が青年の振るう剣を何度か受け止めたところで納得したらしく、剣を納めた。

 

「結構やるのぅ、悟空やお主らよりはちょいと劣るようじゃが儂らよりは上じゃな」

 

「フンッ!当然だ」

 

地球の神に戻ったことでヒノカミの戦闘力は1億に達したが、超サイヤ人となった3人には大きく劣っている。

地球人組は最近は流石に仕方ないと諦め気味だが、未だ最強を諦めていないピッコロは面白くなさそうだ。

 

そして悟空には全てを語るという青年。再びヒノカミとピッコロが耳をすませる。

 

 

青年は20年後の地球から来たベジータの息子であり、名をトランクス。

この時代から3年後、レッドリボン軍の生き残りである科学者ドクター・ゲロが作り出した2体の人造人間が出現する。

破壊と殺戮を楽しむ人造人間によりトランクス以外の戦士は全員殺され、地球は地獄と化している。

ピッコロが殺されたことで神……先代も亡くなりドラゴンボールも消滅した。

連中には超サイヤ人となったトランクスでも敵わない。

そして彼が過去に戻ってまで悟空に接触したのは、人造人間と戦っていない悟空ならば連中を倒せる可能性が高いと考えたから。悟空の運命を覆すことができると思ったから。

 

『あなたは今から間もなく病気におかされてしまうんです。

 そして死んでしまわれる……』

 

原因はウイルス性の心臓病。超サイヤ人でも病気には勝てなかったらしい。

 

「「……」」

 

「二人ともどうした?」

 

「なんかとんでもないこと言ったのか!?」

 

「いや……確かにとんでもないんじゃがこれは……」

 

「おいヒノカミ、貴様の術は病には効かんのか?」

 

「んなはずなかろう。

 魂が残っていれば脳だろうが心臓だろうが再生できるわい。

 無論、万全の状態でな」

 

頼もしいが相変わらず物騒である。

 

「ん~……もしかするとこれは……?」

 

『ばあちゃん、聞いてんだろ?

 ちょっと来てくれるか?』

 

「お呼びのようじゃ。ちと行ってくる」

 

そしてヒノカミは悟空たちの傍に転移した。

 

「うわっ!?」

 

「やっぱ聞いてたんかぁ。盗み聞きは良くないことなんだろ?」

 

「地獄耳なんじゃから仕方なかろう」

 

突如現れ、悪びれもせずからからと笑う女性にトランクスはたじろぐ。

 

「でさぁ、トランクスの言ってることなんかおかしくねぇか?」

 

「うむ。さてトランクスよ、話を聞いてだいたいわかった。

 結論から言えばお主は根本的なところを間違えておる」

 

「っ!?どういうことですか!?」

 

 

「ここはお主の世界の過去ではない。

 お主の世界と近い位置にある、似て非なる平行世界じゃ」

 




トランクスは原作時空です。
ヒノカミがいる限り悟空が病で死ぬはずもなく、転じてトランクスが過去を訪れる事態は起こりえません。
原作通りの過去に転移した場合と、混線してヒノカミのいる世界に転移した場合で、トランクスの世界に平行世界が生じ分岐しました。
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