『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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平行世界の分岐や合流については作者なりの独自解釈です。


第92話

 

「平行、世界?」

 

「お主の世界に『ヒノカミ』または『天女』という名は残されているか?」

 

「え……?昔の記録なんてほとんど残ってませんが、少なくともオレが知る限りでは……」

 

「ピッコロがおるということは、ピッコロ大魔王がいたのは間違いあるまい。

 ならば300年前に儂がこの世界に来なかったのか、それとも大魔王を倒した後で儂がこの世界を去ったのか。

 いずれにせよ、トランクスの世界には儂がおらんのじゃろう」

 

「ばあちゃんがいない世界……?

 でもトランクスの世界にもオラやベジータがいんだろ?

 そんな昔に別になった世界がそっくりっておかしくねぇか?」

 

「世界の収斂じゃな。近い世界は近い歴史を辿る。

 そして遠い遠い未来で二つの世界がほぼ同じになると一つになるんじゃ。

 それを繰り返して世界は少しずつ数を減らす。

 でないと平行世界は増える一方じゃからの。」

 

未来の知識を用いた過去の歴史の改変や異なる世界からの干渉を受けた時に、高確率で平行世界が発生する。

しかしそれらがなくとも、単一の世界の中でも小さな差異が生じ平行世界は分岐するものだ。

例えば歴史的な出来事が起きたタイミングが違ったり、歴史の偉人の見た目が違ったり性別が逆だったりそもそも別人だったり。

だが何百年も先の未来で『歴史書の改訂や忘却による消失』などで帳尻が合わせられ、二つの世界の認識に差異が無くなっていく。

そして全く同じになった時、世界は融合する。

 

「でっかい河をイメージせい。

 枝分かれして支流が生まれたとして、それが大きく分かれれば再び一つになることはまずない。

 じゃが小さな分岐なら流れる向きも同じですぐに合流するじゃろ?

 いずれにせよ最終的には全部海に辿り着くんじゃが」

 

「わかったような……わかんねぇような?」

 

「つまりトランクスは水の流れに逆らうつもりで移動したが、うっかり隣の支流に入り込んでしまったわけじゃな」

 

「そんな……別の世界だなんて……!

 母さんがやっとタイムマシンを完成させたのに……!」

 

「「……母さん?」」

 

「あ、はい。あそこにいる……」

 

「「ブルマかーっ!?」」

 

ヒノカミの知る限り、タイムマシンなんてものを作り出せる化け物は彼女しかいない。

カプセルコーポレーションのマークがついているのも当然だろう。

 

「えぇ~……あいつベジータとくっついたんかぁ?」

 

「寂しそうな父を見てなんとなくらしいんですが……でも結婚はしてなくて……」

 

「ばあちゃんはフリーザ倒した後宇宙行ってたから知らねぇだろうけど、こっちでもベジータはブルマんちで暮らしてんだぞ?」

 

「なぜにっ!?」

 

「ブルマのとうちゃんに重力室っての作ってもらって、そこで修業してんだと。

 ばあちゃんが精神と時の部屋使っちゃダメって言ったから」

 

「マジかぁ……ヤムチャと別れてどうなるかと思ったがベジータかぁ……。

 まぁこっちの世界でもそうなると確定したわけじゃないんじゃが……」

 

「え……!?この世界だとオレ生まれないんですか!?」

 

「これからのあ奴ら次第じゃよ。儂らが意図的に妨げるつもりはない。

 ……脱線したの。お主は過去に来てどうするつもりだったんじゃ?

 まさか未来を伝えるためだけというわけではあるまい?」

 

過去に来れば平行世界が分岐することくらいブルマならわかっているはずだ。

例えば過去で人造人間に勝利する結末を迎えたとしてトランクスのいる世界が上書きされるわけでもなく、『人造人間に敗れ荒廃した世界』とは別に『人造人間に勝利した平和な世界』が増えるだけでしかない。

 

「悟空さんの病気はこの時代では不治の病でも、オレの時代には特効薬があるんです。

 母さんが、奴らをやっつけた平和な未来があってもいいんじゃないかって……。

 ですが一番の目的は奴らの戦いから弱点が無いか探すためなんです。

 それが無理なら悟空さんにオレたちの未来に来てもらい、人造人間を倒してもらうとか……」

 

トランクスが差し出した小さなビンを受け取り解析する。

 

「なるほどな……これは返そう。この世界では似たような薬がすでに普及しておる。

 仮に悟空が他の病にかかったとして儂が居れば問題ない。

 儂に治せぬ病はないからな」

 

「そう……ですか……。

 いよいよ、オレが何のために来たのかわからなくなっちゃいましたね……」

 

タイムマシンの往復分のエネルギーを確保するのも大変だったのに。

トランクスは落胆で力なく笑う。

 

 

 

「いや、意味ならあったさ。

 お主とブルマは、お主らの世界の救世主じゃよ」

 

「「?」」

 

トランクスのいた世界はこの時代とはつながりのない平行世界だった。

なので互いに干渉してもあらたな平行世界は生まれない。

トランクスがこの世界に来た際にも確認したが、この世界の分岐も生じていなかった。

だからこそできることがある。

 

 

「地球がボロボロになろうとあの世まで崩壊したわけではないんじゃろ?

 儂がそちらの世界に赴き、あの世にいる悟空や悟飯や皆を現世に連れ帰り蘇生すればよい。

 ピッコロと先代……神さまが復活すればドラゴンボールも復活する。

 あとは神龍に世界の復興を願えば万事解決じゃな」

 

「!!!!??」

 

そしてそれが彼の世界の本流となる。平行世界は生じさせない。

救われぬ世界から救われた世界が分岐するのではなく、救われぬ世界を救われた世界へと造り替える。

 

「なるほどぉ!ばあちゃんなら魂が欠片でも残ってりゃ何度だって蘇生できるもんな!」

 

「本当ですかっ!?本当にできるんですか!?」

 

「儂は冗談やごまかしは言うが、嘘はつかぬ。

 そこまでの苦労をして人造人間を倒す『だけ』では割に合うまい?

 欲張れ少年。未来をつかみ取るだけでは足りぬ。

 過去すら奪い返すぞ。余すことなくな」

 

「あ……あぁあ……!」

 

女神に縋りついた青年は膝をついて泣き崩れ、女神は青年の頭を優しく抱きしめた。

 




ヒノカミならどれだけ昔に死んでいようが、何人だろうが生き返らせることができます。
人造人間を排除した後で殺された者たちを全員蘇生すれば、それはもはや絶望の未来ではない。
彼女は作者の考え得る限り最良の救済者を目指したキャラです。伊達ではありません。
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