『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第94話 人造人間

 

トランクスから聞いた人造人間が現れる時は『3年後の5月12日午前10時頃』、場所は『南の都の南西9キロ地点にある島』。

遂にその『時』が来たが、悟空たちはその『場所』にはいない。

彼らは北の都の傍の岩山の中、ドクター・ゲロの研究所にいた。

今はとっくにブルマとヒノカミが接収済みなので『元』がつくが。

 

「んじゃ、起動するぞ」

 

「おぉー、いよいよかぁー」

 

「ほ、本当に大丈夫なのか……?」

 

「起動成功率なら100%じゃ。その後は知らん!」

 

「おい!」

 

「さっさと行きましょ。ポチっと」

 

ブルマがボタンを押すと、棺のような大きな機械のふたが開く。

 

「「……」」

 

「どうじゃ?不都合はないか?」

 

「……あぁ。異常も違和感もない」

 

「まさか本気でわたしたちを起こすとはね」

 

「儂は嘘はつかんと言うとるじゃろ」

 

目覚めた人造人間17号と18号の調子に問題はないようだ。

 

3年前にドクター・ゲロを始末した後、ヒノカミは二人の人造人間を破壊しなかった。

それどころかブルマをも巻き込んで、逆に彼らを完成させることにした。

何故なら17号と18号は双子の姉弟、元は普通の人間を改造したサイボーグだったから。

なので正しく言えば『人造人間』ではなく『改造人間』であり、体の中もほとんどが有機部品で構成されているため『生物』と断言できる。

例外は緊急停止装置と、いざという時彼らを処分するために埋め込まれていた爆弾だが、これらはすでに撤去した。

 

「ではオレたちを自由にすると言うのも嘘ではないと?」

 

「無論。主らも儂が守るべき地球の民よ。

 積極的に悪事を働くのでなければ好きに生きてくれて構わん。

 支援もする。必要なものがあるなら遠慮なく言ってくれ」

 

「ふぅん……じゃあお金ちょうだいよ」

 

「えぇぞ。ひとまず一人1億ゼニーずつでいいか?

 それ以上の額になると現金を用意するのに時間がかかる。

 足りなくなった頃にまた声をかけてくれればよい」

 

「……本気で言ってんの?」

 

「かかか。何を隠そう、儂らは億万長者じゃ。

 なぁクリリン」

 

「うぇえっ!?えっ、まぁ、はい……」

 

「……へぇ」

 

18号に見惚れていたクリリンに無理やり話を振る。

 

悟空にはチチがいて、半年ほど前にベジータもブルマと結婚しトランクスが産まれた。

天津飯は相変わらずランチさんに尽くされているし、ヤムチャは最近ランチちゃんの方といい雰囲気だ。

もう4年以上前になるが、ヒノカミのデスマーチで弱っていたところを彼女らに支えられ互いを強く意識し始めたらしい。

そしてついにクリリンにも春が来たのかとヒノカミは内心でホロリと涙を流す。これから次第ではあるが。

これで残る独り身も僅かになってきた。だがナメック星人のピッコロは雌雄がないのでお相手は必要なく、チャオズはなんかもうわかんない。未だに外見に一切変化がない。

もしかしたら17号と18号の方が一般的な人間に近いのではなかろうか。

 

 

「……おい、いつまでダラダラと話し込んでいやがる」

 

「オラももう待ちきれねぇぞ」

 

「あ~わかったわかった!

 では済まんが、頼めるか?」

 

「いいだろう。オレたちもどれだけ戦えるのか知っておきたいからな」

 

17号たちには、目覚めたら悟空たちの相手をしてやってほしいと頼んでいた。

ドクター・ゲロがインプットした『孫悟空抹殺命令』を始めとする危険な指令や悪意は悉く削除しており、もはやこの世界の彼らは人類に対し敵意を持っていない。

しかしトランクスの世界の17号たちはそうではない。

彼らとの戦いに備えてその実力を体感させておきたかった。

ちなみに二人のスペックは強くなった悟空とベジータとほぼ同格、ラディッツやピッコロよりは少し上だろう。

 

「へへっ!んじゃ外に出ようぜ!」

 

「あまり街の方には近づくなよ」

 

二人の人造人間は、悟空たちに連れられて研究所の外に出て行った。

訳あってヒノカミとブルマだけがその場に残る。

 

「さてと……あとは、コイツだけど……」

 

二人は研究所の奥に移動し、『16』という数字が書かれたもう一つの機械を見つめる。

この中にはトランクスからの情報に無かった3体目の人造人間、16号が眠っている。

 

体格のいい男性型で、人間をベースにした17号たちとは違い機械だけで構成された完全なロボットタイプ。

ドクター・ゲロがとある理由から『失敗作』と判断し、いずれ造り直すつもりで封印していたものだ。

このまま眠らせておくべきだったかもしれないが、ヒノカミは彼も起動させると決めた。

悟空たちにその存在を隠しつつ、17号たちの調整と並行してブルマと共に改造を施していた。

 

『まだ何も罪を犯していない』『作られた機械に罪はない』という考えもあったと言えばあった。

だがそれ以上に単純にその戦力が惜しかった。

先に作られたのに16号の方が17号たちよりも強いのだ。

それこそ悟空たちが束になっても敵わないかもしれないほどに。

 

「後は最終調整だけど……そっちは設備が整ってるウチでやりたいわね」

 

「わかった。儂が運び込もうか?」

 

「お願い。調整にはちゃんと参加してよね?

 アンタじゃなきゃわかんない部分もあるんだし」

 

「わかっておる。悟空たちがおらぬ隙に、輸送だけ済ませてしまおう」

 

ヒノカミが眠っている16号を機械ごとカプセルコーポレーションに転移させて間もなく、悟空たちが戻って来た。

人造人間たちとの戦いは終わったらしい。彼らのギブアップでだ。

 

正直に言えば、人造人間たちは悟空たちが大したこと無いなら全員殺してしまおうかとも考えていたらしい。

しかし実際に手合わせしてみれば同格以上。

悟空たちを殺すのなら自分の命を懸けねばならず、そうまでして悟空らを殺さねばならぬ理由は彼らにはない。

自分たちの手でドクター・ゲロを始末できなかったことだけは残念だが、それ以外の待遇にも大きな不満はない。

爆弾やら何やらを取り除いてもらった借りもあるので、二人の人造人間は大人しく生きると約束した。

 

ちゃんとした決着を付けられなかった悟空たちは不満そうだったが、トランクスの世界には悪の人造人間が残っている。

彼らにはそっちの方で納得してもらおう。

 




17号の本名が『ラピス』で、18号が『ラズリ』だそうです。
ヒノカミが人間として扱っているので本名で呼ぶべきかとも考えましたが、小説という体系上わかりづらくなるので原作通り番号呼びで行きます。
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