『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第35話 ヒーロー殺し

ヒーロー殺しを捕らえるために保須市にやって来たエンデヴァーとそのサイドキック達。

そして雄英から職場体験に来た焦凍と夜嵐。

突如脳無が現れたタイミングに彼らがこの場に居合わせたのは幸運だった。

 

「焦……ショート!こいつらが!?」

 

「間違いねぇ。雄英を襲撃してきた、敵連合の脳無だ……!」

 

ブレイザーからの問いかけに、USJで脳無を直接見たことがあるショートが答える。

予知により、脳無らしき怪人がこれからも何度も現れることは把握している。

故に根津校長は警察に任せるだけでなく、雄英や公安も巻き込んで徹底的に調べ上げ、その情報を社会全体に広めていた。

 

「こいつらはいわゆるフランケンシュタインの怪物……継ぎ接ぎして作られた、動く死体だ」

 

「……胸糞悪ぃ……!」

 

「加減の必要はない。

 ……もう、眠らせてやれ」

 

「……だな!」

 

ブレイザーが目の前にいる四ツ目の脳無と、上あごから上がない脳無に向けて右腕を突き出す。

 

「『赫灼熱拳・閃(かくしゃくねっけん・せん)』……ブレイズレイン!」

 

指先から連続で発射された青い熱光線が脳無たちに降り注ぎ風穴を開けていく。

殺傷力が高すぎて使いどころが限られる技だが、死体相手なら遠慮はいらない。

倒れこむ2体の脳無を見て、応戦していた現地ヒーローや避難中の市民たちは歓声を上げた。

彼らも脳無が死体だと知っている。殺傷したことを責める者はいない。

 

「もう一体いるらしい、急ぐぞ!」

 

「了か……まだだ!」

 

上あごから上がない脳無の傷が再生し、起き上がろうとしている。

エンデヴァーが炎を放ち燃やすが、またも再生が始まる。

 

「バーニン!何人かまとめて、もう一体の脳無の元に向かい対処しろ!

 この場は俺が引き受ける!」

 

指示を受けたエンデヴァーのサイドキックが数名を連れて離れていく。

改めて身構えるエンデヴァーに、逆に近づいていく一人の現地ヒーローがいた。

 

「エンデヴァー!」

 

「なんだ!?貴様はたしか……マニュアル?」

 

ヒノカミからの連絡で、目の前のヒーローの元に飯田という生徒が職場体験に行ったと聞いている。

しかし彼は今一人。エンデヴァーは残るサイドキックたちに視線で指示し、目の前の脳無への対応を一時任せる。

 

「おい!貴様のところに来ていた生徒はどうした!?」

 

「そのことでお願いがあります!

 こいつらが現れる前にヒーロー殺しを発見しました!

 逃げ足が速くて俺は追いつけなかったんですが、自分が足止めをすると飯田くんが一人で先行してしまって!」

 

「なんだと!?」

 

元々エンデヴァーはヒーロー殺しを捕らえにきたのだ。

現れた脳無共は脅威だが、奴を放置することもできない。

妹から託された生徒もそこにいるとなればなおさらだ。

マニュアルは持っていた携帯端末をエンデヴァーに突き出す。

 

「これ、飯田くんの位置情報です!

 少し前からほとんど動いてない……多分もう会敵してる!」

 

「チィ……ブレイザー!任せる!

 ショートとレップウも連れていけ!

 必要なら個性を使わせても構わん!!」

 

「いいのか!?」

 

プロヒーローの付き添いとはいえ学生であるショートたちを戦地へ送り出し、あまつさえ個性の使用を許可するなど大問題だ。

ショートの問いかけにエンデヴァーは背を向けたまま答える。

 

「……友人なのだろう?早く行け。

 こいつを片付けたら俺もすぐに向かう!」

 

「……熱い!やっぱ最高ッスよエンデヴァー!!」

 

「ついてこい!ショート、レップウ!」

 

「親父……ありがとう!」

 

「……フン!」

 

マニュアルの先導を受け、ブレイザーたちが走る。

 

一方その頃、ヒーロー殺し『ステイン』と対面した飯田は、彼に殺されそうになっていたヒーロー『ネイティヴ』を庇い戦闘になっていた。

しかし勝負にならず、個性であっさりと自由を奪われる。

 

(勝てないとわかっていた……だが……くそぉ……!)

 

「お前は……良い。

 お前は、生かす、価値がある……」

 

ステインは動けなくなった飯田を置いて、同じく動けないネイティヴに止めを刺そうとする。

もはや成す術はないような状況だが、これもヒノカミの作戦通りだった。

 

――奴の前では、奴の理想のヒーロー像を演じるのじゃ。

  怒りを隠す必要はないがぶつけるな。

  攻撃的な言動は避け、誰かを守る行為を最優先とせよ。

 

復讐に燃える飯田だが、本来の気質は誰かを助けることを優先する模範的な善人。

それが復讐のための布石になると聞けば、そのように振舞うことは苦ではなかった。

 

――奴は自分の眼鏡にかなうヒーローは殺さぬ。

  これでお主は奴の粛清対象とやらから外れ、殺されることはなくなる。

  ……そこで復讐を諦めるなら大人しくしていれば良い。

  じゃが恐怖を知ってなお抗うというなら叫べ。

 

「……ヒーロー殺し……貴様は、オールマイトのファンだそうだな……?」

 

「……?」

 

唯一本物のヒーローと認めるオールマイトの名を出され、ステインが動きを止め振り返る。

 

「知っているかもしれないが、俺は雄英の生徒だ。

 オールマイトと会って、話をしたこともある……」

 

唯一動くのは口だけ。それで十分だった。

これがヒーロー殺しへの必殺の一撃であり、ヒノカミが考えた復讐。

 

――多少誘導したが、間違いなく本人の言葉じゃ。

 

「オールマイトからの伝言だ」

 

『ヒーローが皆私のようにか。

 私が身を挺して戦うのは、他の誰かに傷ついたり、苦しんだりしてほしくないからだ。

 相容れない。彼の言う正しき社会を受け入れることはできないね』

 

「……お前の理想とする世界に、お前の理想とする人は住みたくないそうだ」

 

――殺すのは肉体ではない。

  精神を、思想そのものを殺しつくせ。




主人公「メンタル攻撃はヒーローのたしなみ」

・個性『蒼炎』

エンデヴァーの個性『ヘルフレイム』以上の火力を発する。
しかし個性の使い手である当人の熱耐性が高くないため、サポートアイテムがなければ満足に扱えない。

・『赫灼熱拳・閃』

ブレイザーの必殺技。
膨大な炎をため込むのではなく、瞬時に圧縮して熱光線として放つ。

燈矢の個性の使い方は例えるならガンダムのビームライフルやビームマシンガンで、腕に取り付けた冷却材はカートリッジ。
攻撃範囲や応用力は本家の赫灼熱拳に劣りますが溜めの時間がほぼなく連射もできます。
これとヒノカミ譲りの剣術を併せたものが彼の戦闘スタイルです。
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