『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

355 / 786
自分で作った舞台を消し飛ばして場外判定を無かったことにしたり、1対1とか言っておきながらセルジュニアを生み出して悟空やベジータたちを襲わせたり。
セルは紳士ぶっていながらどこまでも自分勝手で都合よく掌を返す奴だと認識しています。
そういうところがフリーザの細胞のせいなのかもしれませんが。


第101話

 

17号と18号を吸収し完全体となったセルは、孫悟空との戦いを楽しもうと言った。

言い訳のしようもない完全な勝利を手に入れるため1対1の状況を作り出した。

しかしその実、自分が負けるなどとは微塵も考えていなかった。

 

セルは先ほどの鬼や16号も含めて、相対する相手が平行世界の別人だとは気付かなかった。

トランクスがタイムマシンで連れてきた過去の連中だと思い込んだままだった。

だから彼らの実力を見誤り、見くびっていたのだ。

 

未知の兵器を積んだ人造人間や、死すら覆す癒し手の存在を知らなかった。

ヤムチャやクリリンと言った彼の知る歴史では弱者であった地球人まで、セルジュニアに対抗できるほどの実力を持っているとは思わなかった。

地球にやって来てすぐに死んだはずのラディッツが、超サイヤ人となり戦士たちの中核を担う存在になっているとも思わなかった。

孫悟空より遥かに劣るはずのベジータとピッコロが、孫悟空とほぼ同格の実力者だとも思わなかった。

 

そして何より、孫悟空が完全体となった自身と互角だとは思わなかった。

 

「はーっ、はぁーっ。へへ、やるなぁセル。

 ばあちゃんには悪いけど、ワクワクしてきちまった……!」

 

「はぁ、はぁ、ふ、ふふふふ……!」

 

セルは不敵に笑って見せたが孫悟空と同じ感想など抱いていない。

サイヤ人の細胞を持っていてもサイヤ人らしい性格をしているわけではない。

いや、『弱い者いじめが得意な種族』というラディッツの観点でなら実にらしいと言えるが。

 

孫悟空と戦いながら遠方の様子を気で探り、ベジータたちの予想以上の実力とセルジュニアの苦戦は把握している。

セルジュニアだけで連中を全滅させられると考えていたが、この様子ならいずれ連中に倒されるだろう。

孫悟空にとってはセルを倒せば終わりだが、セルは孫悟空だけでなく連中全てを倒さねばならないのだ。

 

(仙豆を隠し持っているはず。それを奪えば……いや、誰がどこに持っている!?)

 

「だりゃぁっ!!」

 

「くっ!」

 

拳や蹴りを互いに繰り出しながら、セルは必死に思考を巡らせる。

余計なことを考えずに悟空を倒すことに専念していれば、もっと優位に戦うことが出来ていただろう。

この世界の過去の悟空と比べると比較的マシではあるが、それでも悟空の頭脳がセルよりも大きく劣るのは間違いないのだから。

 

 

「「っ!?」」

 

 

突如、とんでもなく巨大な気を感じて揃って動きを止める。

 

「なんだ、この気は……!」

 

「こいつは……クリリンか!やっぱすげぇなぁ、クリリンは!」

 

「なんだとぉっ!?」

 

ここに来てさらに衝撃の事実がセルを襲う。

孫悟空よりもセルよりも巨大な気を放つ存在が地球人であるクリリンだという。

二人の人造人間の力を借りてようやく限定的に使える力であったがそんなことをセルが知るはずもない。

ただ感じたのは、セルジュニアたちの気が見る見る小さくなっていくことだけだった。

 

結局連中は誰一人死んでいない。

間もなくこの場にやってくる。

そして悟空と徒党を組み襲い掛かってくる。セルの敗北は必至だった。

 

「みんなにゃ悪ぃけど、その前にケリつけさせてもらうぞっ!!」

 

ヒノカミにより随分と矯正されたが、悟空はサイヤ人だ。

できるなら自分だけの手で強敵を倒したいと勝負を急いだ。

 

(くっ……!)

 

せめて失った体力だけでも回復せねば。

そう考えたセルの作戦は、結果的には最善手だった。

 

突撃してきた悟空を掴んで受け止め、伸ばした尾を背中に突き立てた。

悟空の生命エネルギーを吸い取り、回復に当てようとした。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「「「悟空っ!!」」」

 

「『牙霊天晴』!!」

 

空間を割く斬撃が悟空の背中に生じ、セルの尾を斬り飛ばす。

直後16号が転移能力で悟空の傍に移動し、彼を抱えて引き返してくる。

 

「お父さんっ!!」

 

「ぐっ……うぅ……!」

 

幸いなことにまだ生きていた。

ヒノカミが白い炎を浴びせる間、ピッコロたちはセルを見上げ警戒している。

切断された尾が再生し再び背中に格納されていく。

 

「げほっ、わりぃ、失敗しちまった……!」

 

「いや、良く戦った。……後は袋叩きじゃ!」

 

悟飯からもらった仙豆を食べて完全回復した悟空とベジータは、一瞬苦い表情をしたが文句を言わずに従った。

彼らもまたこの世界のブルマを見た時に必ずこの世界を救うと己に誓っている。

他の者たちと並んで戦列に加わり、油断なくセルを囲む。

 

 

 

「……フッフッフッフ」

 

 

絶体絶命な状況で、セルは笑う。

 

 

ゴゥッ!!

 

 

「「「!!?」」」

 

「はぁーーっはっはっはっはっは!!!」

 

そしてセルの体から、先ほどまでとは比べ物にならない力が溢れ出した。

 

セルの体には孫悟空の細胞が組み込まれている。

だがそれはこちらの世界で人造人間たちと戦う前に病で死んでしまった孫悟空の細胞だ。

異なる歴史を辿り異なる進化を遂げたここにいる孫悟空の細胞は、そちらとは似ているようで別物だった。

強力な戦士の細胞を取り込んだことで、セルの力が一気に増大していた。

 

 

ブンッ!

 

「「「うわぁぁっ!!」」」

 

無造作に放った気功波の薙ぎ払いが悟空たちを吹き飛ばす。

 

「素晴らしい……素晴らしい力だ!

 今私は真に完全なる存在となった!

 はぁーーっはっはっはっはっは!!!」

 

「そ、そんな……!」

 

セルの気を感じ取った面々は戦慄する。

先ほどまででも悟空やベジータでようやく相手が出来るほどの強さだったのに、今の奴はさらに隔絶した力を発揮している。

 

「さぁて、私を袋叩きにするんだったな?

 ……お前たちにできるとは思えないがね」

 

「くっ、そぉ……!」

 

セルの言う通りだ。全員で挑んだところで一人ずつ殺されておしまいだろう。

悟空とベジータもその結果が見えているからこそ動くことができずにいる。

 

 

「…………」

 

 

しかしただ一人、目を閉じて考え込んでいたヒノカミが意を決して歩き出す。

仲間たちの中にいるブラボーと呼ばれた銀コートの男。

その正面に立ち、深々と頭を下げた。

 

 

「「「……?」」」

 

「……ブルマが何をしたのか、なんとなく察しておる」

 

訝しむ周囲を無視して、ヒノカミは頭を下げたまま続ける。

 

「恥知らずであることはわかっておる。

 軽蔑してもらってかまわん。所詮儂もゲロと同じであると。

 ……じゃが頼む。どうかこの苦難を乗り越えるため、邪悪を討ち滅ぼすために、お主の力を貸してほしい……!」

 

ヒノカミは血が滲みそうなほど強く掌を握りしめていた。

 

ブラボーは震えるヒノカミの肩に優しく手をのせ、初めて言葉を発した。

 

「……頭を上げてくれ。今の私には喜びしかない。

 あなたの……『母上』のために戦えるのだから……!」

 

「「「……母!?」」」

 

 

「ずぁぁぁあああああああっ!!!」

 

 

「「「!!?」」」

 

そしてブラボーの体から溢れ出したのはセルをも上回る膨大な気。

清らかで力強く、そして歪な気。

 

「……はぁっ!!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

一瞬でセルの目の前に移動したブラボーがセルを殴り飛ばした。

 

「ぐっ……うっ……はぁぁああっ!!」

 

吹き飛ばされて姿勢を崩したセルが、ブラボーに向けて気功波を放つ。

ブラボーはそれを避けることなく受ける。

彼の体を覆っていた白銀のコートが焼失し、その姿が露わとなった。

 

 

 

「「「な……!!」」」

 

「そんな……!」

 

「馬鹿なっ!!」

 

 

ヒノカミと16号を除く全員が驚愕の表情でブラボーを見つめる。

何故なら、彼は、どう見ても。

 

 

「赤い……セル!?」

 

 

最凶最悪の人造人間と、同じ姿をしていたのだから。

 




ヒノカミのやらかしの集大成。
人造人間セル、Z戦士入りとなります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。