『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第102話 『最凶の人造人間』対『最高の人造人間』

 

「な、なんだ、貴様は……!?」

 

「見てわかるだろう?私は貴様だよ。

 もっとも私としては、貴様のようなゲスと同じ存在などと思いたくもないがね」

 

ブラボーと名乗っていた赤いセルの発する気もまた、多くの人間の気が混じったような歪なものだった。

悟空、ベジータ、ラディッツ、ピッコロ、ヤムチャやクリリン、他に感じたこともない大勢の人間の気。

その中で最も色濃く表れていたのは……ヒノカミの気。

 

「おいヒノカミ!どういうことだ!奴は一体なんだ!?」

 

乱暴に胸倉を掴みヒノカミをつるし上げるベジータを、誰も止めなかった。

何故なら思いはみんな一緒だったから。

 

「……あ奴は儂らの世界のセルじゃ。16号と同じじゃよ。

 儂とブルマでコンピュータに手を加えて、邪悪な命令を取り除き真っ当な存在として生み出したんじゃ」

 

「またかブルマーーーっ!!」

 

この場にいない己の妻に対し、届かぬとわかってもベジータは力の限り叫ぶ。

 

「儂がセルを見つけた時点ですでに命があったのでな。

 生み出された命に罪はない。生みの親の罪を子に背負わせるべきでもない。

 強者の細胞が不足していたので、儂や儂が知る者たちの細胞を可能な限り提供した。

 それでも誕生は後5年は先の予定だったが……おそらくブルマが何らかの手段で成長を加速させたんじゃろうなぁ」

 

「あのドラゴンボールはそれかーーーっ!!」

 

続いてピッコロが絶叫を上げる。

多分彼と融合した先代の想いも込められているのだろう。二人の心は一つだった。

 

ちなみにブルマの願いは『セルを今すぐ完成した状態で誕生させてほしい』だ。

既に膨大な力を持っていたセルの幼体に干渉することは神龍でもできなかったが、コンピュータとカプセル周辺の時間を加速させる形でそれを乗り切った。

とっくの昔に自我を持ちずっとカプセル越しにヒノカミと会話を行っていたセルはここまでの事情をおおよそ理解しており、ブルマから詳細を聞いて敬愛する母の力となるため自分の意思で参戦を決意した。

皆にバレたら騒動になるとわかりきっていたので、名と姿を偽って、だ。

 

 

「くくく、そういうことだ。

 では諸君。後は任せてもらえるかね?」

 

「っ、えぇと、味方ってことでいいんだよな!?

 でも、お前一人じゃ!」

 

「案ずることはない。私がこのような『コソ泥』風情に後れをとるものか」

 

「コソ泥、だと……!?」

 

赤いセルの発言に、この世界の緑のセルの怒りが驚愕を上回った。

 

「的を射ているだろう?

 こそこそと多くの戦士たちの細胞を拾い集め、横やりで人造人間たちを呑み込み、そして今孫悟空からも力を掠め取った……。

 これをコソ泥と呼ばずに何と言う?」

 

「貴様ぁ!!」

 

緑のセルの怒りを込めた全力のパンチを顔面に叩きこまれても、赤いセルは微動だにしなかった。

 

「な……!」

 

「だが私は違う。盗んだのではない、託されたのだ。力を、命を、愛を。

 その重みがどれほどの違いを生むか……貴様自身の体で確かめるがいい」

 

右脚を前に、左足を後ろに。

軽く前に屈んで握った右拳を左腰の横に動かし、拳の上に左手を添える。

そして赤いセルは宣言した。

 

 

 

 

「『トランスミッション』」

 

 

ガシャコ

 

 

二速(セカンド)

 

「がっ!」

 

 

三速(サード)

 

「がはっ!?」

 

 

四速(トップ)

 

「うごぁぁっ!?」

 

 

 

五速(オーバードライブ)!『五重(クィンティプル)スマッシュ』!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁーーーっ!!!」

 

 

 

「は、はぇえ……!」

 

悟空やベジータでも見えなかった。

辛うじて赤いセルの軌跡が線のように見えただけだった。

 

 

「『黒鞭』!!」

 

続いて赤いセルの左腕から黒いエネルギーの紐のようなものが飛び出し、左腕に何重にも巻き付いた。

真っ黒な巨大な拳を、緑のセルの上から振り下ろす。

 

 

「『帛手割砕(はくしゅかっさい)』!!」

 

「ぐぅぉぉおーーっ!?」

 

 

自分たちを超える圧倒的な力を発現した緑のセルを、赤いセルは弄ぶかのように追い詰める。

その強さはあまりに非常識、同じ姿でありながら実力差は歴然だった。

 

「なんでだ!?アイツもセルなんだろ!?

 なんであんなに強さが違うんだ!?

 何よりあの姿……完全体になるには17号と18号を吸収しなきゃいけなかったんだろ!?」

 

「代わりにそれ以上の物を与えたからな」

 

「それ以上!?一体何を……」

 

 

 

「異界の英雄たちの欠片」

 

 

 

「「「…………は?」」」

 

 

全能の名を背負った平和の象徴。

炎を纏う憤怒と努力の男。

受け継がれた力を振るう優しき9代目。

誰よりも高みを目指し続ける猛き暴君。

相反する氷と炎を宿した静かな激情家。

 

護廷十三隊最強の座に君臨する武人。

黒猫の姿で世を忍ぶ麗しき瞬神。

愛する者のために一度は力を捨てた父と、その思いを継ぐ息子。

100万年にもわたり友に尽くし続けた忠臣。

 

愛する家族を奪われ一度は全てを憎んだ悲しき戦士。

その思いを受け止め救って見せた大戦士長。

陽気なキャプテン、炎の化身、空間を渡る女傑。

 

霊光波動拳の先代継承者。

霊界を治める若き名君。

かつて魔界を支配した3人の王。

 

人類に絶望した孤独な陰陽師。

土、雷、風、水の力を授かった戦士たち。

 

そして古くも新しい不可逆の破壊者。

 

ヒノカミは自分自身の物だけでなく、自らの記憶にある偉大なる英雄たちの細胞や霊体を能力によって具現化し、セルへと託した。

この世界とは全く異なる歴史をたどった、複数の世界の力が彼の中には混在している。

一人一人の力はこの世界の者たちとは比べ物にならぬほど小さくとも、多様性という点では赤いセルは緑のセルとは比べ物にならない。

彼の成長のためにヒノカミが注ぎ続けたエネルギー量もまた然り。

 

 

「じゃがそれでも、予想外ではあったよ。

 まさか『個性因子』を……『ワン・フォー・オール』を発現するとはな。

 あ奴はもはや『完全体』という表現では生温い」

 

 

緑のセルを滅多打ちにした赤いセルは、不敵に宣言する。

 

「醜く歪んだ私の影よ。教えてやろう。

 貴様が『完全』だと言うのなら……私は『究極』なのだよ!!」

 




・セル(究極体)

生まれて間もないまっさらな状態のセルに、ヒノカミが自身の霊体と数多の英雄たちの情報を組み込み、膨大なエネルギーを注ぎ込んで誕生した。
ヒノカミの影響を色濃く受けており、外皮が緑ではなく赤。
性格も家族(母)思いで独善的、マイペースで意外と根に持つなどよく似ている。
ヒノカミの霊体に刻まれた記憶とヒーローの世界の後継者たちの細胞が組み合わさり、疑似的な『ワン・フォー・オール』の個性因子が発現した。

『OFA』:力をストックする。譲渡は不可
『変速』:自分及び触れた物体の速度操作
『発勁』:エネルギーの蓄積と放出
『危機感知』:自分に迫る危機を察知
『黒鞭』:縄のようなエネルギーを操る
『炎舞』:炎の放出と操作
『領域』:空間を遮断する防御壁を展開
『再生』:自分と他者の肉体を超速再生
『転移』:自分及び触れた物体の瞬間移動
『浮遊』:自分及び触れた物体に対する疑似念動操作
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