『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第103話

 

「……ちくしょぉぉぉおおおお…………っ!!!」

 

赤いセルに嬲られ続けた緑のセルが、遂にキレた。

全身が歪に膨れ上がり、放つ気も大きくなっていく。

 

「わたしが……わたしが負けるはずがないんだぁあ……!!」

 

そして赤いセルに向けて鈍重な拳を振り回す。

とんでもなくパワーが増したようだが、致命的なまでにスピードがない。

これでは避けてくれと言っているようなものだ。

技術も何もなく子供の喧嘩のように振り回す腕を、赤いセルは余裕を持って回避し続ける。

 

「ここまでくると無様を通り越して滑稽だな。

 どぉれ、手本を見せてやろう。

 ワン・フォー・オール、解放……マッスルフォーム!」

 

対抗して赤いセルも肉体を膨れ上がらせる。

しかしこちらは綺麗な逆三角形、拳を顔の前に持ってきたファイティングポーズも実に様になっている。

 

「があっ!」

 

「はぁっ!」

 

緑のセルの剛腕を、赤いセルが受け止めた。

両腕を掴み敢えて力比べを始める。

 

「がっ、あっ、あぁぁぁああーーーっ!!」

 

「ぬぅぅぅ……っふっふっふ……はぁーっはっはっは!!」

 

「ぎぃぁぁぁあああーーーっ!!」

 

赤いセルが押し返し、更に掴んでいた緑のセルの拳を握りつぶした。

 

「……スマァーーーーッシュ!!」

 

「ぶぅるぁあーーーっ!?」

 

無防備な緑のセルに強烈なアッパーカット。天高くへと打ち上げた。

他の全てを捨ててパワーに頼っていながらも、それでもまだ緑のセルより赤いセルの方が上だった。

 

「パワーに絞って、その程度か?

 残念だよ。折角この姿でもスピードを出せるところを見せてやろうかと思ったのだが。

 私の全力を引き出すには貴様では役者が不足していたようだ」

 

「……うぐ、ぐぐぐ……!

 ぐふ~~~っ、ぐふふ~~~~っ!

 ゆるさん……!

 ゆるさなぁ~~~~~い!!」

 

遥か上空にいる緑のセルは更に天へと昇り地上を見下ろす。

両手を腰だめに構え、そこに己の全ての力を込め始めた。

 

 

「かぁ……めぇ……!」

 

 

「あの野郎っ、まさか!?」

 

「地球を吹っ飛ばす気か!?」

 

「……やれやれ」

 

赤いセルは露骨に落胆して見せた。

確かに地球を破壊されれば、地球と仲間たちを守ろうとしている赤いセルの敗北と言っていいだろう。

しかしこんな見え見えの攻撃を躱すことなど容易。直撃を受けたところで耐え切る自信がある。

彼にはフリーザの細胞はないが、ヒノカミの霊体や情報が入っている。

彼もまた宇宙空間で生存可能なのでこの一撃で力を使い果たした緑のセルに止めをさしてそれで終わりだ。

どうあがいてもこれでは奴の勝利は訪れない。そのまま宇宙へと逃げ出し再起を図る方がまだ可能性があるだろう。

 

そもそも攻撃を放つまで待ってやる必要もない。

赤いセルには転移能力がある。ヒノカミの赫烏封月ほどではないが高い切断力を持つ炎も生み出せる。

核の場所もおおよそ予測がついている。

背後に転移して炎の刃を振り下ろせば両断し焼却できる。

エネルギーを注ぎ込むことに集中して周囲への警戒がおざなりになっている今の奴なら、それこそヒノカミでも奇襲が成功するだろう。

 

「母上」

 

「……」

 

実際にそうしようとしていたヒノカミに声をかけ、視線で思いとどまるように頼む。

ついで赤いセルはその視線を彼女の隣に移し、ニヤリと笑う。

それだけで相手は赤いセルの意図を察し頷いた。

 

 

「はぁ……めぇ……っ!!」

 

 

「お、おいっ!?」

 

「案ずるな。後は任せてもらうと言っただろう?」

 

狼狽する仲間たちに落ち着くよう促した後、赤いセルは右手をピストルの形にして左手を右の手首に添え、頭上の緑のセルへと向ける。

そして指先にエネルギーを集中し始めた。

 

「コイツで貴様のかめはめ波を打ち消してもいいが……無駄な労力を費やすのは私の好みではなくてね」

 

 

「……波ぁぁーーーーーっ!!!」

 

 

上空の緑のセルが地球に向けて、巨大な気功波を放った。

赤いセルに動きはない。そして間もなく彼に着弾するというところで。

 

 

「「「!?」」」

 

「はぁっ!!」

 

赤いセルの前に転移してきた人造人間16号が緑のセルのかめはめ波を全身で受け止めた。

膨大なエネルギー全てが彼の体に吸収され、彼の両耳のイヤリングに移動していき、光として発散されていく。

 

 

「……あ……」

 

「彼のエネルギー攻撃無効化能力は散々見てきたはずだが?

 その程度のことも失念するほど愚かだったとは。

 それでよく『完全』を名乗れたものだ」

 

「……あぁぁぁああーーーっ!!」

 

16号がその場を退くと、彼の姿で遮られていた赤いセルの指先の光が更に大きくなっていた。

先ほどの緑のセルのかめはめ波以上の力が込められていることは一目瞭然。

そして緑のセルは今の一撃ですでに力を使い果たしている。

 

「我々は『人造人間』だ。

 人間の強さの本質は集団であること、すなわち『不完全』な生き物であるからこそ力を合わせるのだ。

 ……どれほどの力を持っていようと最強の一であることに拘り他者を否定した貴様は、人間として『不完全』なのだよ」

 

ついに赤いセルは、心の引き金を引いた。

 

 

「……霊、丸!!」

 

 

「……ちくしょぉぉぉおおおおーーーーーっ!!!」

 

 

巨大なエネルギーの弾丸が緑のセルに直撃し、遥か宇宙空間へと押し上げ、そして爆散した。

跡形すら残さず、すべては焼却され無へと消えた。

 

 

「核すら消し飛んでは再生もできまい。……せめて安らかに眠れ」

 




トランクスの世界の人造人間セル、討伐となります。

本作の世界のセルは一番のベースがヒノカミなので、かめはめ波よりも霊丸や霊光弾を愛用します。
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