『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第104話

 

最凶の人造人間セルとの戦いは終わり、戦士たちは元の世界へと帰って来た。

そちらに母が残っているためトランクスもだ。

 

そして戦士たちは円になり何かを取り囲んでいた。

大人の女性が二人、神殿の広場の上で正座させられていた。

 

「……言いたいことはあるか?」

 

正面に立つベジータにきつく睨みつけられたヒノカミとブルマは互いを見合わせた後無言で頷き、顔を上げて堂々と胸を張る。

 

 

「「良かれと思って!!」」

 

 

「「「ふざけるなぁーーーーっ!!!!」」」

 

人造人間16号の存在を秘匿していた。ワンアウト。

人造人間セルの情報を伝えていなかった。ツーアウト。

その2体の人造人間を勝手に改造していた。スリーアウト。

 

女神と天才科学者は戦士たちにこってりと絞られていた。

 

対する件の人造人間たちは。

 

「ふぅむ……いい香りだ。

 まさか君が紅茶の入れ方を知っているとは思わなかった」

 

「オレ自身は飲食を必要としないが、料理を始めとした家事全般が可能だ。

 他にも人として人と共に生きるための知識と技術は一通りインプットされている。

 この茶菓子は出来合いのものだが、時間と機会があれば腕を振るおう」

 

「素晴らしい。その時を楽しみにするとしよう」

 

神殿の広場の一角で優雅にティータイムしていた。

テーブルとイスはセルがヒノカミ譲りの能力で作り出したもの、ティーセットはヒノカミが神殿に置いていた嗜好品だ。

 

「う~~ん、うめぇはうめぇんだけど、オラはやっぱりガッツリ飲み食いすんのが好きだなぁ」

 

「常に自分らしくいられることはお前の美点ではあるが、多少は気品を身に付けたまえ。

 仮にも私の兄であるのだからな」

 

「いぃっ!?オラがおめぇの兄ちゃん!?」

 

「そうだろう?私たちは同じ女性を母としているのだから。

 それに私にはお前の細胞も組み込まれているのだ。

 血のつながった兄弟と言っても過言ではあるまい。

 ……いっそのこと『兄上』と呼んでやろうか?」

 

「げげ!?やめてくれよ、背中がムズムズしちまう!」

 

「16号さん、おかわりいいですか?」

 

「勿論だ」

 

「やれやれ、幼い甥の方がよほど礼節を学んでいる」

 

お目付け役だったはずの悟空と悟飯もすっかりくつろいでいる。

気の抜ける光景であることは確かだ。

 

「お前たちも、あまり母上たちを責めないでやってくれたまえ。

 事情を明かしていたら私たちを誕生させようとは思わなかっただろう?

 『結果良ければ全て良し』などと言うつもりはないが、結果的にはこれがベストだったはずだ」

 

「いや……確かにそうかもしれないが……」

 

仮に悟空とベジータがあらかじめ人造人間セルのことを先に知らされていたとしても、17号と18号を吸収されずに済んだという保証はない。

そして16号が居なければ一度引いて態勢を整える時間を確保することはできず、セルが居なければ緑のセルに全員やられていただろう。

 

「……儂としてはベストとは程遠いがな。

 儂は利用するためにセルを生み出したのではない。

 まして無理やり成長させて戦場に駆り出すなど……」

 

機械であり兵器として生み出された16号はともかく、ヒノカミはセルを『人』として生み出した。

異界の英雄たちの欠片を与えたことも強くするためではなく、『彼らのような偉大な英雄になってほしい』という願いを込めてのことだ。

何の使命も持たず、自由に生きてほしかった。

 

「そう言ってくれるアナタだから力になりたいと思ったのだよ。

 これもまた私の自由意思によるもの。

 母上が責任を感じる必要はなく、意思を阻む権利もあるまい」

 

「……ぬぅ」

 

(……マザコンっぽい?)

 

(ヒノカミさまが甘やかしたんじゃないか?

 身内にはとことん甘い方だし、内面はともかく年齢的には子供だし……)

 

「聞こえているぞ、ヤムチャ、天津飯。

 私もまた地獄耳であると覚えておくことだ。

 君たちの発言を否定しようとは思わんがね」

 

「……ともかく、16号とセルは地球を害するつもりはないのだな?

 本当に信用していいのか?」

 

「今のところは、だ。ピッコロよ。

 私たちに『人類に敵対するな』というプログラムが埋め込まれているわけでもない。

 先代の地球の神として、警戒は怠らないことだ」

 

「無意味な殺戮や破壊は望まない。

 だがオレはオレが愛する自然や動物たちを守りたい。

 そのためなら、話の通じない相手と敵対することもあるだろう」

 

「……単純な否定の言葉よりは信用できるか」

 

「やはりお主は先代さまと融合していたか。

 ……態度を改めるべきでしょうか?」

 

「やめろ、気色が悪い。ベースはピッコロなんだ。今まで通りでいい」

 

ひとまず一同は16号とセルも17号たちと同様に受け入れることにした。

セルの方は敵になったら手が付けられないというのが一番の理由だが。

 

これにて人造人間の事件は全て解決した。

二つの世界にようやく真の平和が訪れた。

だがもう一つの世界に新たな希望をもたらすための大仕事は、これから始めなければならない。

 

「まずはあっちのあの世に行って閻魔大王さまにご挨拶。

 事情を説明してから天国にいる地球人の魂を連れ戻して良いか交渉して……」

 

「平行世界など、信じてもらえるのか?」

 

「閻魔大王さまに嘘は通じぬ。

 逆を言えばどれほど信じられない話でも嘘ではないと伝わるはず。

 ……簡単に行くとも、思えぬが」

 

「……オレが同行しよう。

 向こうの世界の地球の神は先代のままだったのだろう?

 半身とは言え同一人物であったオレが居れば信憑性が増す。

 話もまとまりやすかろう」

 

「すまんな」

 

トランクスとあちらの世界のブルマだけでなく、ピッコロにも同行を願うこととなった。

他の面々も一緒に行きたいと言い出したが、平行世界の同一人物が顔を合わせるのは本来望ましくないので却下した。

4人ならば大型のマシンに頼るまでもない。ヒノカミと小型のマシンで事足りる。

1日の休息を挟み出発は明後日。

一同は平行世界のトランクスとブルマに別れを告げ、4人を見送った。

 

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