『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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三点リーダ、ダッシュは2回並べると言う話を聞きまして編集しました。
とりあえず投降した分はすべて。
ストックも編集していきますが、漏れが出るかも。


第36話

金や名誉のためではなく、純粋な意志で人を救おうとする者。

それがステインの考えるヒーロー像であり、その体現者こそがオールマイト。

 

「……あぁ……」

 

ヒーローはすべて彼のようであるべき。

それに満たない偽物を排除することで、彼は彼の理想とする社会を作ろうとした。

 

「あぁぁ……!」

 

しかしオールマイトがその社会を否定するというのなら。

仮に偽物をすべて駆逐したとしても本物のヒーローがそれを拒絶すると言うなら。

 

「あああああああぁっ!!!」

 

ステインの理想とする社会は、永遠にやってこない。

 

「なぜだ!なぜだオールマイト!!

 なぜ偽物を……正しき社会を……あああああぁっ!!!」

 

錯乱するステインは飯田に詰め寄り刃を突き付ける。

 

「嘘だ!嘘だと言え!

 オールマイトが正しき社会を否定するなど!!」

 

ステインが少しでも動けば、飯田は殺されるだろう。

だが彼は冷静に、ヒノカミの言葉を思い出していた。

 

――奴が暴走し始めたら……止めを刺せ。

 

「……癇癪で人を殺すのか?」

 

「!!?」

 

「なんだ……やっぱりただの殺人鬼じゃないか」

 

「……ぐぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

ステインは天を仰いで絶叫する。

抑えきれない感情をぶつけるかのように周囲の壁や地面に刃を振るう。

しかし飯田には刃を振り下ろせない。

それをした瞬間、彼は最後の一線を超えることになる。

ステインは飯田を正しきヒーローの候補と認めてしまった。

飯田を殺せば彼はただのヴィランになってしまう。

飯田に否定させなければオールマイトの言葉が本当だと受け入れざるを得なくなる。

しかし拷問などで無理やり言わせることもできない。

それもまたステインの在り方に背く行為だ。

どう転んでもステインが歪んでしまう。

飯田は確かに、ヒーロー殺しという存在を殺したのだ。

 

(ヒノカミ先生……ありがとうございました……)

 

目の前の危機は去ってはいない。

だが飯田は荒れ狂うヒーロー殺しを見て、自分は復讐を成し遂げたのだと確信した。

 

――身動きが取れず、周囲にも助けがないなら、いっそ寝たふりでもしておけ。

  ヒーロー殺しが錯乱すれば殺されるかもしれんが、下手な抵抗するより生き残れる可能性が高かろうて。

 

(ははっ、そうですね……仇は取ったよ、兄さん)

 

飯田は満足げな表情で意識を手放した。

ステインは何も目に入らない様子で暴れ続けているが、偶然その刃が傍にいたネイティヴに振り下ろされようとしていた。

 

「ブレイズシュート!!」

 

その直前に熱光線がステインの刃を溶かした。

 

「あっぶね……ギリギリ間に合ったか」

 

「……ひぃろぉ……?」

 

ステインは飯田を追って到着したブレイザーたちへと、狂った瞳を向ける。

 

「レップウ!ショート!」

 

「了解ッス!」

「あぁ!」

 

指示を受けたレップウは風で飯田とネイティブを浮かせて引き寄せる。

飛んできた二人をマニュアルとショートが受け止めた。

続けて彼らはブレイザーの後ろに下がり、レップウが自分の前に強力な風の壁を作り出し自分たちの姿をステインから隠す。

 

「情報通りの容貌だな。

 アンタがヒーロー殺し、ステインで間違いねぇか?」

 

「……フレイム、ヒーロー、ブレイザー……。

 エンデヴァーの、息子……エンデヴァー……!偽物ぉ……!」

 

敵となるヒーローの出現に、ステインは辛うじて冷静さを取り戻した。

 

「ヒーローとは、偉業を成した者にのみ許される称号……!

 英雄気取りの拝金主義者共が、名乗るべきではない……!」

 

ステインはまるで自分に言い聞かせるように独白する。

 

「正さねば……誰かが、血に染まらねば……!」

 

放たれる濃厚な殺意は、常人ならそれだけで意識を失うだろう。

 

「来てみろ偽物!

 俺を殺していいのは……本物の英雄だけだ!!」

 

しかし殺意を正面から受けたブレイザーは表情を変えずに呟いた。

 

「……あのさ?もう斬っていい?」

 

「……あ?」

 

「話なげーよ。全然頭に入ってこなかったし。

 ま、おかげでこっちの準備は整ったけど」

 

レップウの防壁が解かれる。

風の向こう側はショートが作り出した強固な氷で覆われていた。

周囲の建物ごと巻き込んで作られた氷のドームはステインの後ろと天井まで塞いでおり、中にいるのはヒーロー殺しと、囮役となったブレイザーだけ。

 

「これでお前は逃げられねぇ。俺を殺してもな。

 暫くすりゃあ親父も来る。

 終わりだぜ、ヒーロー殺しさんよ」

 

「エンデヴァー……!

 やはり本物のヒーローは、オールマイトだけ……

 あぁああ!なぜだ!オールマイトォ……!」

 

「……あー、わかったわかった。

 やっぱお前のことがわかんねぇってことがよくわかったわ」

 

ヒーロー殺しは震える手で予備の刃物を取り出し、ブレイザーは腰に下げていたヒノカミ譲りの刀を抜いた。

 

「ちゃちゃっと終わらせるぜ。

 弟が来てるんだ。

 兄貴として、ちっとはカッコいいところ見せねぇとな」

 

「……がぁぁぁああああっ!!」




主人公「精神的になら死体蹴りも合法」
飯田「なるほど!」

原作の最後当たりで見せ場を作ったステインですが、この物語ではへし折っておきます。
この物語のエンデヴァーは立派なヒーローなんですが、上を目指す姿勢は変わらないのでステイン的にはアウト判定です。
そして主人公の一番弟子であり多大な影響を受けた燈矢は、ヒーロー側ですが性格捻じ曲がってます。全部主人公が悪い。
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