『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第107話 界王神

 

まずこの宇宙を東西南北の銀河に分けて統括する4人の界王がいる。

地球が所属しているのは北の銀河であり、ヒノカミや悟空たちが世話になっているのは『北の界王』である。

彼らは気軽に接しているが、本来なら一惑星の神ごときが自分たちの都合で用事を頼むなどおこがましい、とてもとても偉い方だ。

 

その上に4人の界王を統括する『大界王』が存在する。

いわばこの宇宙全体を統括する存在。こちらにはヒノカミどころか先代すら直接お顔を拝見したことはない。

 

そして大界王を含めたすべての界王の神が、『界王神』。

その存在を伺ったのは北の界王からだ。彼もお会いしたことがないと言っていた。

宇宙を統括する存在の、神。

即ちこの宇宙における最高神。

身近な物として会社で例えるなら、新米の神であるヒノカミが新入平社員。

界王が課長、大界王が部長、界王神は社長と言ったところか。

つまりこれは社長が抜き打ちで新入社員に会いに来たような状況というわけだ。

 

(界王さまぁぁぁーーーーっ!

 一大事じゃぁぁーーーーっ!

 今すぐ地球にお越しくだされぇぇーーー!!)

 

(…………)

 

(界王さま!?聞こえておられるでしょう!?

 ちょっとこちらの状況を確認して……!)

 

(……あー、あー……なにか耳鳴りがするなぁ。

 今日はもう、寝るとしようかな……)

 

(あっ、逃げるな!界王さま!?界王さまぁぁあ!!)

 

リンクがぷっつりと切られた。

頼れる上司が頼りにならない。所詮は課長か。

 

「フフフ、お話通り賑やかな方ですね、ヒノカミさん」

 

「念話聞かれてた!?

 なぜ儂のような者の名を……」

 

「フリーザとコルドを倒し、奴らに支配された惑星を悉く解放した天女。

 今のこの宇宙で貴方以上に有名な星の神はいないでしょう。

 ……だからこそ、貴方には話を通すべきだと判断しました。

 私からの感謝の意を込めて」

 

「倒したのは儂では……いえ、それもご存知なのでしょうな」

 

界王神から感じる気はフリーザとは比べ物にならないほど強い。

その気になればフリーザを倒すことは容易だっただろう。

それをしなかったのは、彼が神だから。

復活したピッコロ大魔王に対処できなかったヒノカミと同じだ。

フリーザは宇宙を支配しようとしていたが宇宙を滅ぼそうとはしていなかった。

宇宙そのものの危機でないかぎり、神は対処に動けない。

そして今、その神が動かなければならない事態が起きているということでもある。

 

「……お時間を取らせるのも申し訳ない。早速お話を伺いましょう。

 この者……セルは儂の後継と見込んでいる者です。同席させても?」

 

「構いません」

 

「ポポ、16号。茶と茶菓子を持ってきてくれ」

 

「「わかった」」

 

 

4人がテーブルに座り、ヒノカミとセルが界王神とキビトに向かい合う。

セルとキビトは付き人、その場にいるだけだ。会談はヒノカミと界王神で行われる。

 

「それで……『魔人ブウ』でしたか。

 詳細をお聞かせ願えますか?」

 

「勿論です」

 

地球に人類が生まれて間もない頃、宇宙の彼方に『ビビディ』という邪悪な魔導師がいた。

ある時ビビディが造り出した化け物が『魔人ブウ』。

魔人の手によりたった数年で何百もの星が死の星へと変えられた。

当時5人いた界王神も魔人との戦いで4人が死亡。最も若輩であった彼だけが生き残った。

 

魔人の凶暴さはビビディですら手を焼くほどで、休息や移動の際には一度魔人を封印するほど。

だがそのおかげで魔人が封印されている隙を突いて界王神がビビディを始末することができた。

 

残るは封印された魔人。

しかし破壊しようと余計な刺激を与えれば封印が解けてしまうかもしれないと考え、手を出すことはできなかった。

封印を解くことができるのはビビディだけという甘えもあり、魔人はそのまま星に放置されたのだ。

……この地球に。

 

「「……」」

 

ヒノカミとセルは難しい顔をして無言を貫いている。

魔人の深刻さを想像しているのか、そんなものを地球に放置した界王神たちを責めているのか。

いずれにせよ続きを語らなければならないと、界王神は再び口を開く。

 

「しかし最近になって、恐ろしい事実が判明しました。

 魔導師ビビディには子供がいたのです。

 親と同じ邪心を持った、魔導師『バビディ』が……!」

 

そして息子のバビディは魔人の封印を解くため、少し前にこの星に侵入したらしい。

奴が魔人の封印を解く前に、何としてもバビディを始末しなければ。

一刻も早くバビディの居場所を突き止めなければ。

 

「魔人の封印を解くには、穢れの無い巨大なエネルギーが必要だそうです。

 この星には貴方を始めとした正しい心の戦士たちが多くいると聞いています。

 バビディは必ず貴方たちを襲おうとするはず。

 それを逆手にとって、奴の居場所を……!」

 

「申し訳ない、しばしお待ちいただきたい」

 

「は……?」

 

ヒノカミは界王神の話を遮り、セルを連れて席から離れていく。

界王神は彼らの無礼を責めようとしたキビトを押しとどめ待つことにした。

 

 

(……まさか…………いや……)

 

(だが…………たしかに…………)

 

界王神は特に聴力が優れているわけでもない。

念話だと聞かれてしまうからと小声で話す二人が何を話しているのかはまるでわからなかった。

 

やがて苦い顔をしたヒノカミが静かに眼を伏せるセルを伴って戻ってくる。

 

「お話の途中で申し訳ないのですが……御覧いただきたいものがあります」

 

「なんだと?お前たち、界王神さまがお優しいからと調子に乗っているのではないか?」

 

「おやめなさいキビト。

 ……大切なことなのでしょう?わかりました」

 

ヒノカミの先導で4人が神殿の奥へと歩いていく。

辿り着いたのは、厳重に封じられていた一室。

ヒノカミが結界を解除し、扉を開いた。

 

 

 

「「……ば、馬鹿な!!!??」

 

 

 

「あ~~……その反応は、やはりコレですか」

 

「ど、どういうことですか!ヒノカミさん!?」

 

ヒノカミの領域『刻思夢想』は空間の一部を切り離しその内側に自分のイメージを実体化する能力。

副次効果として、内側の事象を把握することができる。なので。

 

「100年と少し前に儂が神に就任した際、一度地球全域を精査したのですよ。

 そしたら何か妙なものがあるなー……と思い、念のため回収していたのです」

 

危険な気配がしたので厳重に結界で封印し、更に神殿の奥に時空間を切り離した部屋を作ってその中に押し込めた。

その後放置したまま半ば忘れていたのだが、つい先日妙な宇宙船が地球圏に侵入してきて『ソレ』があった場所に着陸した。

『ソレ』を探すためなのか船の中から出てきた連中を視認し、疑いの余地のない邪悪と断定。

また侵略者の類かと思い、ヒノカミは即座に。

 

 

「セルと二人で、処断してしまったのです」

 

 

「「…………」」

 

部屋の中央に鎮座する、光の鎖に縛られた魔人ブウが封印された球を見上げていた界王神たちは、アゴが外れるほど間抜けな大口を開けていた。

 




惑星全域を一瞬で把握できる空間認識能力と、太陽系の外側からの侵入者を察知できる感知能力と、フルパワーのセルを子供のようにあしらう究極体のセルがいたら……むしろ対処できない理由を探す方が無理。

以前『魔人ブウ編があっさりと終わってしまう』と言ったのは、これのせいです。
さすがにこれで『完』とはできないので、もう少し何とか魔人ブウ編を続けてみます。
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