「馬鹿な……バビディは強大な力を持つ配下を大勢従えていたはず!それを……!」
「強大な力を持つ配下……?」
「『ダーブラ』とか言う奴ではないかね、母上」
「「ダーブラ!?」」
それは暗黒魔界の王の名だったはず。
バビディ自身に大した戦闘力は無いが、他人の邪心を増幅し操る術を持つ。
確かにその力を使えば魔界の王すら手の内に入れられるだろう。
「あぁ、お主があっさり仕留めたから印象薄かったわ。
確かに儂基準なら十分強者じゃよなぁ」
「仕留めた!?待ってください!
それは本当にダーブラだったのですか!?」
「え?そ奴は配下ではない?ではプイプイとかヤコンとか?
連中なら儂でも対処できる程度でしたし、強大とはとても……」
「「な……!?」」
前者はバビディが重宝していた精鋭。
ただし鬼の鎧を展開したヒノカミよりも、単純に弱かった。
後者は光のエネルギーを食べる魔獣。
そちらはヒノカミのエネルギーを吸い尽くそうとしたが彼女のエネルギーは無尽蔵。
膨れ上がって動けなくなったところを炎の剣で両断した。
「……っ!いえ、ですが!
バビディの魂があの世に行けば私に連絡がくる手筈になっていたはず!
ならば奴はまだ死んでいない!
やはり貴方がたが倒したのは、バビディではないのでは……!?」
「あぁ……スピリット・オブ・ファイア」
ヒノカミが呼びかけると、神殿の外に神殿よりも大きな炎の巨人が現れた。
窓の外からヒノカミたちを覗き込む。
「これは、炎の化身!?
いえ、炎という概念そのものを凝縮したような……!」
「儂の持ち霊……まぁ相棒のようなものです。
ちょいと口開けて、この前の奴を見せてくれんか?」
言われるがままに巨人は大きな口を開く。
『ぎぃやぁぁぁぁぁぁ…………!!!』
「「バビディ!?」」
巨人の口の奥には炎に焼かれ続けるしわがれた魔導師の魂があった。
「救いようの無い奴はこ奴の餌にしておりまして。
あの世のお手を煩わせるのも、転生の機会を与えるのももったいないと。
こ奴自身が灼熱地獄のようなものなので罰としては丁度良いですからな」
「しかしやはり、コレがバビディだったか」
「お二人が言うなら間違いなかろうな。
いやぁ、話を聞く価値もないと名前すら聞かずに放り込んだのは失敗じゃったな!
かっかっかっか!」
「全く、笑いごとかね。
報・連・相を怠ったのは母上の失態だぞ?」
「かかか、こういう時は『笑ってごまかせ』というではないか」
「「は……はははは…………」」
乾いた笑い声が虚しく響く。
己の命を懸けてでも今度こそ魔人の脅威を取り除くと誓った彼らの決意と覚悟は、その機会すら与えられず無駄となった。
結果だけを見れば最上ではあるのだが。
「……ゴホン!
ありがとうございました、ヒノカミさん!
おかげで宇宙は救われました!!」
「いや、儂のしたことなど行き当たりばったりで……どうかこの件は不問にしてくださらぬか?」
「勿論ですとも!むしろ称賛されるべき功績です!
私の名で、宇宙全体でその武勇を称えさせてください!」
「あの、それはどうかご勘弁を……」
「『界王神が対処に動いていた宇宙の危機を未然に防いだ』と言えば聞こえはいいが……事実がこれではね」
界王神に両手を握られ勢いよく上下に振られるヒノカミの後ろで、セルが呆れたように呟いた。
「それで、ヒノカミさん。
魔人ブウの球をこの場から動かすことは可能でしょうか?」
「時間そのものを止めたうえで何十もの結界を敷いております。
衝撃により解放される心配はないでしょう。
移動も空間ごと切り離して入れ替えれば可能ですが……どうするおつもりで?」
「私たちの世界、『界王神界』にて厳重に封印します。
大界王すら入り込めない聖域です。
そこであれば何ものも封印を解くことはできないでしょう」
「……ふぅむ」
ヒノカミは離された掌を組んでしばし考えた後、スピリット・オブ・ファイアに近付いていく。
「「「?」」」
「よっと」
そして未だ開いたままの口の奥のバビディの霊体の頭を掴む。
『あああぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!!』
「「「!?」」」
バビディが突如今までを上回る絶叫を上げたと思いきや、間もなく霊体が粉々に砕け散った。
「な、なにをしたのです?」
「魂を砕いて情報を抜き取りました。
魔人ブウを封印する方法と、封印を解除する方法を」
「な……!?そ、そんなものを得てどうするおつもりですか!?」
「……母上」
なんとなく彼女の言いたいことを察したセルが視線を向けるが、ヒノカミはにやりと笑って界王神に答える。
「魔人ブウ、封印を解いた上で処分できぬでしょうか?」
「なんですって!?」
「……やれやれ」
予想通りだったとセルはため息をついた。
「何を言っているのだお前は!?話を聞いていたのか!?」
「聞いておりましたとも。だからこそです。
正体がわからぬからと放置しておりましたが、それほど凶悪な魔人と知った以上、未来に負債を残す真似はしたくない。
未来永劫絶対に封印が解けぬとも限らぬ。その万が一に怯えて生きるのも気が気ではありますまい。
戦力が整っているこの時代に、力を合わせて対処すべきではないかと」
「貴方は……貴方がたは、魔人の恐ろしさを知らないからそう言えるのです!」
「ですが界王神さま方も、我らの実力を見誤っているご様子。
セルは確かに我が星最強の戦士でありますが、彼に次ぐ者も多くいるのです。
少なくともその『ダーブラ』を超える実力者ならば片手の指では足りませぬ」
「「!?」」
セル、悟空、ベジータ、ピッコロ、悟飯。
多分ラディッツもギリギリ上だろう。これで6人だ。
「……ですがっ」
「ふむ……お二方、これから……というか数日ほどお時間はありますか?」
「え?えぇ、バビディの対処に専念するつもりでしたので……」
「なるほど。ポポ、皆に送る招待状を書いてくれぬか?」
「わかりました。内容は?」
「『天上一武道会』の開催じゃ。
我らの実力を直接見て頂いた方が話が早かろう」