神域とか言ってるし、そういう特別な場所であるならおかしくはないかと。
「ここが、界王神界です」
「長閑なところじゃなぁ」
「オラが住んでるあたりにも、ちょっと似てるかもな」
「パオズ山は魔境だろうが……強くなったお前たちだから問題にならないだけで、普通の人間にとっては危険な場所だぞ」
広い草原、小高い丘、小さな泉。
空にはいくつもの円が見える。遥か上空に多数の球体が浮いているようだが何かはわからない。
界王神とキビトの他には、悟空とヒノカミとピッコロとセルの4人が同行している。
当人の許可を得たとはいえここは界王神とごくわずかな者しか入ることができない聖域だという。
キビトも口を閉じているが不満が顔に出ている。
なので人数を絞るべきかと、ヒノカミの他はおそらくブウと戦うことになるであろう強者たちを厳選した。
ベジータからは『そんなところに行く暇があるなら今度こそ優勝できるように修行をする』と断られた。
悟飯は随分成長したとは言えまだ学生。学業を優先させてやりたい。
二人の先導を受けて飛ぶこと暫く。
特に歪にそびえ立った一つの岩の頂上に降り立つ。
岩の中央には、刀身のほぼすべてが食い込んだ剣が突き刺さっていた。
「この剣が、ゼットソードです」
それは界王神界に伝わる伝説の剣。
引き抜いた者は凄まじいパワーを得ることができると言われている。
しかし界王神やキビト、歴代の界王神たちが挑戦しても誰も引き抜くことができなかった。
「ちょいと失礼」
ヒノカミが顔を近づけて解析をかける。
「……抜けないように特別な仕掛けが施されているわけではない……。
となればこれは……密度か?
単純に重量が半端ではないようじゃな」
「とんでもなく重い剣ということか。
……確かにただの剣ではないようだが、本当にそんな凄いものなのか?」
「切れ味がとんでもねぇとか?」
「いや、特にそのようなことは無さそうじゃな」
「そもそもなんでも斬れる剣なら母上の物で事足りるだろう」
「弱っちい儂しか使えんようでは意味があるまい。
……しかしただ重いだけの剣とは思えぬが……む?」
「どう、しました?」
「……これは剣ではないな」
「「「!?」」」
ヒノカミが手を伸ばし、剣の柄に触れる。
内側から魂の存在を感じる。
「やはり……これは剣の形をした封印具じゃ。
この剣の中に何者かが封じ込められておる」
「なっ……封印!?一体中に何が!?」
「そこまではわかりませぬ。もう少ししっかり観察せねば。
……抜いただけでは封印は解けぬようじゃな。皆下がってくれ」
想像以上に怪しい物体だったと判明し、全員が専門家であるヒノカミに任せることにした。
空を飛んで岩の上から離れていく。
「……鬼相纏鎧。赫月、スピリット・オブ・ファイア。
主らの炎の全てをこの鎧に」
『カァァッ!』
『…………!』
己の熱の全てを鎧に吸収させ、力を左腕一本に集めていく。
数分の時間をかけて注ぎ込み続け、十分に力が集まったところで剣の柄を掴む。
「白星」
『シャァッ!』
白い蛇が鬼の左腕と剣の上から何重にも巻き付き、がっちりと固定する。
「……ふん……ぬぁぁぁぁあああーーーーーっ!!!」
想定していたよりも遥かに重い。
僅かに岩にひびが入ったが持ち上がらない。
「プルスウルトラぁぁぁぁっ……『縁炎烏蛇』ぁ!!」
白い蛇が鎧と一体化して手甲となり、炎の翼と両肩の副腕が下に向けて炎を噴き出す。
強化した腕力と推進力を利用し、ついにヒノカミは剣ごと空に飛んだ。
「やった!!」
「なんと……信じられん……!」
「……っとぉ……」
引き抜くだけで蓄積したパワーのほとんどを使ってしまい、あまりの重さにふらつきながら落下するヒノカミにセルが駆け寄り、彼女から剣を預かる。
「!?……なるほど、確かにとてつもない重さだ」
「へぇ、オラにもちょっと貸してくれよ」
セルから受け取ったゼットソードを両手で持ち、ブンブンと降ってみる悟空。
彼の力を知る者には信じられないほどの動きの鈍さだ。彼自身も困惑している。
「おい。何かが封印されているという話だろう。
下手に扱って壊すなよ」
「っとそうだった、いけねぇいけねぇ」
「私が保持しよう」
ピッコロの指摘を受けた悟空がマッスルフォームになったセルにゼットソードを渡すと、彼は見えやすいように鎧を解除したヒノカミの前に持っていく。
「ふぅむ……刀身の破壊がトリガーになりそうじゃな」
「やはり正体はわかりませんか?」
「残念ながら。しかし邪悪な気配ではありませぬ。
そしてこのままではこれはただ重いだけの剣のようです。
……いかがなさいますか?」
「……封印を解いてみましょう。
ここ界王神界に伝わる、伝説の剣だったのです。
邪な者や、どうでもいい人物が封じられているとは思えない」
「わかりました。
……しかし、わざわざ破壊する必要はありませぬ」
このくらいなら封印を緩めた後、完現術で中の人物の魂を増幅すれば解放まで持っていけるだろう。
剣を破壊せず残しておけば、万が一の場合再び封印することもできるかもしれない。
片膝をつき、まるで騎士が王に捧げるかのように両手で剣を掲げるセル。
ヒノカミがその刀身に触れ、指を走らせる。
「「「……!?」」」
剣から光が走り、やがて収まった。
「さて……其方は何者か?」
ヒノカミが彼女の背後に現れた気配を察して振り向く。
「へっへ~。まさかお前さんみたいな娘がわしの封印を解くとはなぁ~。
長生きはしてみるもんじゃの~~」
垂れさがった目とチョビ髭が印象的な老人。
髪や肌の色、服装などは界王神とよく似ている。
「わしゃぁよ、そいつのよ。
15代前の界王神なんだな~~これが」