「え!?15代前の……!?」
「それは失礼いたしました。
何故界王神ともあろうお方が封じられる事態となっていたのでしょうか?」
「むか~~~しむか~~~しよ、やたらめったら強くてわる~~い奴がおってよ。
そいつにその剣に封じ込められちまったんだな~~~これが。
わしの恐ろしさにびびったんだよ~~~」
「そんなすげぇじいちゃんには見えねぇなぁ」
「失礼だぞ孫。単純な強さと恐ろしさは別物だ。
能力や知識や頭脳は、時に強さ以上に力を発揮することもある」
「……たしかに」
界王拳や元気玉を開発した界王や、超天才科学者ブルマが頭に浮かび納得した。
特にブルマがどれほど恐ろしいかは彼も身に染みている。
「そうなんだよ~~。
わしぁよ、超能力でよ、どんなに凄い達人でもよ。
隠された力をよ、ど~~んとど~~~んと限界以上に引き出すことができるんだな~~これが」
「わりと良く聞く能力だなぁ……最長老さまとおんなじじゃねぇか?」
「いや、アレは潜在能力を『引き出す』だけだった。
『限界以上』というのは不可能だ」
「じゃあばあちゃんも強くなれるんか?」
「儂?」
フリーザとの戦いの前に悟空たちはナメック星の最長老に潜在能力を引き出してもらい強くなったが、ヒノカミだけは強くなれなかった。
既に自力で力を限界まで出し切っていたので、潜在能力そのものが残っていなかったから。
「もちろんだぁ。ばっちり強くしてやるでよ~~へっへっへ」
「それは……ありがたいのですが、こちらのセルや孫悟空らにお願いできませぬか?
我らは魔人ブウとの決戦を控えておりまして、少しでも戦力を強化したいのです。
儂のような半端者が多少力を得たところで……」
「いやいやぁ、その剣を抜けたんならお前さんも立派な戦力だ。
儂を出してくれた奴に力を貸してやるって決めてたからなぁ。
……しかしよ、それは界王神の誰かだと思ってたんだがよ」
「も、申し訳ありません……」
「なぁに、おかげでこんな美人の嬢ちゃんに手ぇ貸してやれんだからよ。
役得役得。わし頑張っちゃうからなぁ~~、へっへっへ~~~!」
(((なるほど、亀仙人の同類か)))
ヒノカミ、セル、ピッコロが思わず同じことを考えた。
「なるほど、亀仙人のじいちゃんと同じタイプか」
「……」
悟空は留めず口に出した。そして先日の祭りで亀仙人を知った界王神は反論できなかった。
「それにわしの勘だがよ、お嬢ちゃんが強くなるのが一番良さそうなんだよな~これが。
まずはわしの力を受けて、それで強くなれなかったってんならもう一回だけ他の誰かにやってやるよ~。
とんでもなく時間と体力を使うから何度もやるのは無理だからなぁ~」
「時間……?どれほどでしょうか?」
「前準備の儀式に5時間、パワーアップに20時間じゃな」
「うげっ!?」
あまりの長さに悟空が思わず声を上げたが、ヒノカミはむしろ短いとすら思っていた。
たったの丸一日と少しで強くなれるなら受けない理由はない。
それほどまでに彼女の時間に対する感覚は大雑把で、彼女の成長速度は遅かった。
「なるほど、わかりました。
界王神さま方は悟空らを地球へ送り返してはくださらぬか?」
「ホッ。よかったぁ、待ってろって言われたらどうしようかと……」
「母上、私は残っても良いが?」
「セルは儂の不在の間の地球を頼む。
短いが次期地球の神として、良い経験となろう」
「……わかった」
渋々頷いたセルは年老いた界王神へと近づく。
「母上に邪な真似をしてみろ……魂すら残さず消滅させてやる……!」
「ひいぃっ!?」
「これこれ。お主もそろそろ母離れしような?」
「貴様も子離れ孫離れできていないだろうが」
ピッコロが呆れつつ、セルを掴んで離れていく。
キビトらによって界王神界を立ち去る瞬間まで、セルは年老いた界王神を睨んでいた。
「……ふぃ~~~、おっかねぇなぁ」
「かかか、家族思いの自慢の子です」
「アレをそう言い切っちまうお前さんはやっぱり大物だなぁ~。
そいじゃあアイツら戻ってくるのを待つのも無駄じゃし、始めちゃおうか」
「よろしくお願いいたします」
――――……
そのまま地球に残っていても良かったのだろうが、ご先祖様が大変な儀式を行うとあれば居合わせないわけにはいかず。
界王神とキビトは悟空らを送り届けてすぐに界王神界に戻って来た。
「フフーン!フンフン!ヘイヘイ!」
「「……」」
「フンフーン!フフフーン!ゴーゴー!」
「「……」」
偉大なご先祖が鼻歌や掛け声を出しながら両手を上下にブンブンと振り、ヒノカミの周囲をグルグルのたのたと歩き続けていた。
(こ、これが儀式とやらでしょうか……?)
(おそらく……これを、5時間……?)
(……確かに体力は使うでしょうな)
仮にも元界王神。
これがくだらない冗談やおふざけであるとは思えない。
……が、先ほどまでの彼とのやりとりを思うとどうしても疑ってしまう。
だがその一方で。
「 」
対象であるヒノカミはただそこに立っていた。
瞳を閉じて、呼吸すらも止めて、身じろぎ一つせず。
彼女の風貌も相まって、彫像か何かだと言われた方がしっくりくる。
(よくもあそこまで己を殺せるものです)
(殺せる?)
(えぇキビト。彼女は疑似的に自分を『死んだもの』と定義している。
何も考えない、心を無にするといった段階よりも更に先、そして更に危険な行為です。
神霊でありながら自己を否定して存在を保っているとは、やはりただ者ではない)
(しかし、なぜそのようなことを?)
(おそらく外部から入り込む力をスムーズに受け入れるためでしょう。
個人を個人たらしめる心の壁が無い、完全に無防備な状態なのですから。
……つまり彼女は、これが本当に強くなるためのプロセスだと心から信じている)
「フンフフーーン!はっはっ、イェイイェイ!」
(……アレを、心から信じている?)
(えぇ、信じがたいことに。
我々も見習わなければ……ならないのでしょうかね?)
「フンフフーン!フフフンフーーーーン!!」