『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作では太ったブウを『倒せていた』と断言した悟空ですがその時は死人。
本作では生きているため超サイヤ人3を維持できる時間が極端に短いはず。



第117話

 

魔人ブウの強さは超サイヤ人3の悟空、ベジータと同格と言ったところだ。

パワーやスピードはわずかに劣るようだが一度見た技をあっさりと模倣するほど学習能力が高く、伸縮自在の肉体を操り予想外の挙動や攻撃を仕掛けてくる。

 

だが一番厄介なのがその再生能力だった。

 

「はぁっ、はぁっ、くそったれめ……!」

 

「ベジータ、そこまで。交代じゃ」

 

「……ちっ!」

 

ベジータの超サイヤ人3が解除されたことを確認しヒノカミが宣告。

本人もこのままでは埒が明かないと理解していたため渋々引き下がる。

 

斬っても突いても殴っても焼いても、魔人ブウは再生する。

大きな攻撃を喰らったときに『痛かった』と発言することから痛覚はあるようだが、ダメージそのものはほぼ皆無。

全身を吹き飛ばしたが駄目だった。無数の残骸がくっついて元に戻ってしまった。

 

おまけにエネルギーが尽きる様子もない。

対して超サイヤ人3は消耗がとんでもなく激しいので、悟空とベジータの脱落は早かった。

 

「奴を一撃で跡形もなく消し飛ばすパワーがあれば勝利もできただろうがね。

 今回は力が及ばなかったと諦めたまえ」

 

「煽るな、セル。ベジータは仙豆を食って悟空と一緒に下がっていろ」

 

「では真打登場といくかの。儂ら3人ならば……」

 

「そのことだが母上、ピッコロ。

 奴は私一人でやらせてもらえないか?」

 

「「「は?」」」

 

確実にブウを仕留めるため協力して当たると決めていたはず。

セルらしからぬ発言の翻しにヒノカミも声を上げる。

 

「気付いているだろう?

 あの魔人ブウとやら、私と母上にとっては『大したことのない相手』だと」

 

「「何っ!?」」

 

「その気になれば母上一人でも倒せるはずだ。違うかね?」

 

『なっ……そうなのですか!?』

 

「……ハァ」

 

隠さねばならぬことでもないと、ため息をついて口を開いた。

 

「強さではなく相性の問題なんじゃよ。

 『暖簾に腕押し』、『糠に釘』。

 それでもお主らは力押ししかできぬが、儂とセルには取れる手はいくらでもあるということじゃ」

 

「そして一人で事足りるのだから連携の必要性はあまりない。

 むしろ周囲を気にせねばならぬ分やりづらいくらいだ」

 

「……いいだろう。そこまで言うなら見せてもらおうか」

 

「おいっ、勝手に決めるなベジータ!」

 

「まぁまぁピッコロ。

 ……念のため後ろで控えておくぞ」

 

「そのくらいは当然だろうな。まぁ任せてくれたまえ」

 

話は終わりだとセルがブウの前に降り立つ。

先ほどの会話はブウにもしっかりと聞こえていたらしい。

 

「お前、ナマイキだ。

 オレが大したことないって言ったな?」

 

「あぁ言ったとも。貴様如きでは私を殺すどころか、傷付けることすらできんよ」

 

「カッチーーーーン!!

 怒っちゃったもーーーーん!

 殺しちゃおーーーーーっ!!」

 

頭から蒸気を噴き出し拳を突き上げ、自分の怒りを体全体で表す魔人ブウ。

 

 

 

「……怒っているのは私の方だ」

 

 

「「「!?」」」

 

対してセルは静かに、しかし冷たく暗い怒気と殺気をオーラに乗せて周囲に放つ。

 

 

「母上に解放してもらいながらその恩を忘れ、差し伸べた手を払いのけた。

 あまつさえ母上を『殺す』と言った。

 ……貴様の罪、万死に値する」

 

 

ブウの眼前に転移したセルは、『霊力』を込めた拳をブウの顔面へと叩き込んだ。

 

「うぎっ!?……?……!?」

 

「せいぜい苦しめ。そして死ね。

 私の心を静めるために断末魔の叫びをあげてくれ。

 もはやそれくらいしか貴様の存在価値はないのだからな」

 

「ぎゃぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

続いてセルが放った『霊丸』を受けたブウは、過剰と思えるほどの悲鳴を上げながら抉り取られた部位を押さえのたうち回った。

 

 

『なっ、なんだ!?

 何故魔人ブウが、あれほどのダメージを……!?』

 

「どういうことだ、ヒノカミ!」

 

「……今のセルは『気』ではなく『霊力』を使っておる。

 ブウの『肉体』ではなく『魂』を攻撃しておるんじゃ」

 

「『魂』を……!?」

 

「儂は異界にて悪霊や神霊と言った、実体を持たない相手と戦う機会も多くての。

 それらを討滅する手段をいくらでも持っておる。儂の力を受け継いだセルも同じくな。

 ブウのような不定形の相手はお主ら物理的な力で戦う者にとっては天敵じゃが、儂らにとってはむしろやりやすいくらいなんじゃよ」

 

「『なっ!?』」

 

悟空たちの戦いでもブウは簡単に手足がちぎれ体に穴が開いていた。

その度に再生したが、定まった形を持たないからこそ肉体の強度がそこまで高くないと証明されているも同然。

 

「お主らのように頑強で確固たる肉体は、魂を守る鎧の役割を果たす。

 対してブウは柔らかいので芯まで霊力を届かせやすい……ほれ」

 

『ブウが……怯えて、逃げている!?』

 

「おそらく初めて経験するであろう『死ぬほどの痛み』。

 精神的な幼さも相まってブウは完全に錯乱しておる。

 ……奴が痛みと、それを振りまくことの意味をもっと早くに知っていれば、別の結末を迎えられたかもしれんな」

 

「『……』」

 

 

 

「痛い、痛い、痛い……!」

 

「それが貴様が他者に押し付けていたものだ。

 甘んじて受け入れたまえ」

 

「こっ、このっ!!

 チョコにしてやるーーーっ!!」

 

ブウの頭の触覚から光線がセルへと向かうが。

 

「ふん」

 

「!?」

 

霊力を纏った拳で叩き落とされた。

 

「魔人と言うだけあって魔術染みた技を使うようだが……なっちゃいないな。

 低級の呪いと大差ないではないか。

 これくらいなら防御する必要も……いや、呪詛返しで貴様をチョコにしてやればよかったかな?」

 

「うっ、うううぅ……っ!!」

 

ブウの目尻には涙すら浮かんでいた。

 

「さて、これ以上真新しいものも見れないようだ。

 ……そろそろ、殺すとしよう」

 

「……死ぬ?オレが、死ぬ!?

 い、イヤだ!死ぬのイヤだ!」

 

「同じように命乞いをした相手を貴様はどうしたかね?

 散々殺して来た貴様が、殺される番が来ただけだ」

 

「……嫌いだっ!おまえなんか、嫌いだぁーーーーーっ!!」

 

「……締まらない最期の言葉だ。では消えろ」

 

叫びと共にブウの体の穴からおびただしい量のピンクの煙が噴き出したが、セルは構わず引き金を引いた。

しかし煙を出し切ったブウは意識を失い倒れ、セルの霊丸はその上を通過する。

余計な手間をかけさせたブウに苛立ちつつセルは次弾の装填を開始した。

 

 

 

「……おい、ベジータ!アレ!」

 

「なんだ?……なんだ!?」

 

距離を取ってい見ていた悟空とベジータが真っ先に気付いた。

先ほどブウが吐き出したピンク色の煙が、集まって形を作っていく。

 

「貴様ら離れろ!上だ!!」

 

「「!?」」

 

ここでようやく気配を感じたセルは攻撃を中断し、ヒノカミとピッコロがいる場所まで下がる。

 

見上げる先で煙が人の形になる。

まるで、魔人ブウが封印を解かれた時のように。

 

『あ……あれは……まさか!?』

 

「魔人ブウから……魔人ブウ!?」

 

 

 

「ウギャギャギャオーーーーッ!!!」

 

 

 

子供のように小柄で、世の悪を煮詰めたような気配を発する、もう一体の魔人ブウが出現した。

 




『肉体でなく相手の魂を直接攻撃する』。
死神の世界、霊界と魔界の世界、シャーマンの世界を渡り歩いてきたヒノカミと、その力の一端を持つセルならそれが可能です。
体が不死身でも魂を壊せば肉の塊が残るだけ。
それこそ超にて不死身化したザマスとかでも倒すことができる……かと思ってましたが、破壊神でも破壊できないとなると無理そう?
まぁそもそもヒノカミがザマスと戦う予定はありませんし、彼女は封印術も得意なので戦うとしても問題はありませんが。
ちなみに悟空ブラックの方も問題なく対処できます。
本作のヒノカミには部下がいるんですよね……ギニューが……。

原作ではブウから生まれたのはガリガリのブウでしたが、本作は展開の都合上、原作の最終形態(界王神吸収前)の魔人ブウ(純粋)が誕生しています。
単純な怒りではなく、死ぬほど追い詰められた状況だからということでご理解ください。
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