『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第119話

 

「すっげー!すげーよヒノカミさま!」

 

「おばーちゃん!ボクたちにもポタラっての貸して!

 ボクも合体してみたい!!」

 

「ダメダメ!こりゃ貴重で危険なものなんじゃからな!?」

 

「「ケチーーー!」」

 

「えぇい、今度他の方法教えてやるから!!」

 

「他の方法!?」

 

「絶対だよ!」

 

空間の崩壊と共に神殿に戻って来た悟空たちは、そちらで水晶を通じて観戦していた仲間たちに迎え入れられた。

念のため界王神界に控えていた界王神とキビトも神殿に転移で来訪し、戦士たちに心からの感謝を伝えた。

 

魔人ブウは完全に消滅しすべては終わった……とは行かず、残る問題がもう一つ。

 

「貴様ぁ……いい加減に母上から離れろぉ……!」

 

「イヤだ!嫌い!お前嫌い!!」

 

「そのデカイ図体では、儂の背中に隠れられんぞ……?」

 

空間崩壊の直前、ヒノカミは咄嗟に中にいた者を全て連れて脱出した。

個別に指定する余裕もなく、その中には太った魔人ブウも含まれていた。

セルは即座に滅却しようとしたが、そこで意識を取り戻したブウがヒノカミに縋りついて盾にしたのだ。

 

原初の魔人ブウが放出されたことで太っている魔人ブウの力は大きく減衰していた。

加えて悪意や破壊衝動まで全てあちらに持っていかれたようで、こちらの魔人ブウはただの子供と大差のない純粋無垢な性格に変貌していた。

こうなってしまうと子供に甘いヒノカミはこれを処分してしまうのは憚られる。

加えて彼が破壊を楽しんでいたのは『ビビディにそれが楽しいと教わったから』という刷り込みであったと発覚し、人の痛みを理解して『もうしない』と自分から約束してきたので猶更。

彼に苦しめられ殺された人々は多いだろうが、ヒノカミは被害を受けていない。

殺してでも悪を止めるのがヒノカミの役目であり、犯した罪を償わせるのは彼女の役目ではない。

結局一人では魔人ブウを倒せなかった悟空とベジータが再戦を希望したこともあり、見逃すことになった。

 

「貴方がたがそう決めたのであれば……我々にそれを阻む資格はありませんね」

 

「申し訳ございません、界王神さま。

 無論こ奴が二度と暴れぬよう最善を尽くします。

 万が一の事態にブウを止められるのは我らだけ。

 故に地球で預かるのは当然として……」

 

「…………」

 

「……セルからは離した方が良かろうな。神殿はアウトか」

 

「ウチも無理かしら。セルには頻繁に足を運んでもらってるし……」

 

セルは人造人間。

不要かとは思うが念のため、今でも定期的にカプセルコーポレーションで診断している。

ブリーフ博士たちとも仲が良い。

なのにセルがばったりブウと出会えば余計な騒動を起こしかねない。

 

「ふむ……なぁブウ。お主は誰の家に行きたい?」

 

「?」

 

「っておい!」

 

「儂ら関係者の誰かが預からねばならんわけじゃが、押し付け合うような形もな。

 ならばいっそブウ自身に選ばせた方がいいじゃろ。

 もちろん、預かってくれる者には儂が可能な限り援助をする」

 

「う~~~~ん……」

 

ブウは神殿に立ち並ぶ者たちの顔をぐるりと見まわし、一人の顔に目が留まる。

 

「オマエ」

 

「へ?」

 

「「「へ?」」」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

ブウがその相手を選んだ理由はなんだったのか。

本人曰く『なんとなく』らしいので単なる気まぐれだったのかもしれないが、結果的には最善だった。

 

ブウとの強さの差が圧倒的すぎて敵意を向ける気力が欠片もなく、巨大な家と資産を持った彼は大食いの居候が増えたところで経済的に全く困らなかった。

 

「本当に、本当に申し訳ない!

 儂が余計なことを言い出したばっかりに……!」

 

「いえいえそんな!ウチなんかでよければいくらでも!身に余る光栄ですので!!」

 

何度も頭を下げるヒノカミに対し、ミスター・サタンはそれ以上の勢いで腰を低くしている。

 

孫悟飯に会うと言って出かけようとしたビーデルに無理やりついていった彼はまたも神殿に辿り着き、顔見知りになった連中と一緒にブウとの戦いを観戦することになった。

そしてようやくヒノカミが本当の神であり、彼女の周りの連中が超人揃いだと気付いたわけだ。

特に武道会にて喧嘩を売ったセルがガチギレしてブウを追い詰める様を見た時は全身を震わせ漏らしそうになったほど。

安心していい。彼はヒノカミに余計な悪意を向けない限り紳士なマザコンだ。

 

「サターン!おかわりまだあるかーー?」

 

「あ、はーーい!今お持ちしまーーす!」

 

与えていた大量のお菓子を食べつくしたらしいブウの催促に、サタンは軽快な足取りで応える。

 

「パパ……」

 

「いやもう、ホントすまんな?

 ……だが正直とんでもなく助かっておる」

 

大人しくすると約束したとはいえ、ブウのあの暴れっぷりを目の当たりにしてもまともに応対できるだけでとんでもない大物だ。

世界チャンピオンは伊達ではない。

 

「いいですよ、別に。

 パパもようやく現実を受け入れてくれたみたいだし。

 ……それにこれでもう、邪魔してこないだろうし」

 

「儂もチチも、もはやお主以外考えられんからな。

 後は悟飯が気付いてくれるかなんじゃが……」

 

「もう否定する気も起きませんけど、悟飯くんってそういう感情あるんですか?」

 

「家庭を持つことに漠然とした憧れはあるようじゃが。

 アレは父親から特殊じゃからなぁ」

 

「ヒノカミさまがそのお母さんですよね?」

 

「……うん」

 

甘やかしすぎたかな?育て方間違えたかな?と唸り続ける女神は、どこからどう見ても、どこにでもいる人の親だった。

 




魔人ブウ編、完結となります。
そしてドラゴンボールの世界の最終章『神と神』編に入ります。
……と言っても、元が映画な上に作者のベースが漫画なのでかなり短いです。
ご了承ください。
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