『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第120話 破壊神

 

魔人ブウとの戦いから4年。

宇宙を揺るがす巨悪が人知れず討たれ、宇宙は長い平和を享受し続けていた。

 

その魔人ブウを倒し、そして魔人ブウの残滓が生き延びている地球でも同じ。

戦士たちは各々の日常を生きていた。

 

話題の肝である魔人ブウはミスター・サタンの家で呑気に過ごしている。

食っちゃ寝ばかりの生活はどうかと思うが、少なくとも一切の悪事を働いていない。

サタンもゴマすり上手で意外と相性は良いようだ。

上下はあれども友人という、奇妙な関係が出来上がっていた。

加えて最近はどこからか子犬を拾ってきて、しっかりと世話をしている。

命の大切さも理解したのだろう。なのでもう監視の目を外してもいいかと思っているが、なかなか踏み切れずにいる。

界王神たちへの義理立てと、マザコンが未だ根に持っているようなので。

監視することで、ブウの身を守っている側面もあるので。

 

悟空とベジータは自分たちだけで魔人ブウを倒せなかったことを悔やみ、今も激しい修行を続けている。すでに当時の魔人ブウを超える力を手に入れたがそれでも上を目指し続けている。

対して他の戦士たちはもはや彼らほど力を求める意欲もなく、修行は続けているが惰性的なもの。

悟飯などついに学者となり、ビーデルと結婚したのだから修行にかまける時間などない。

多めに呪霊錠を付けているくらいでここしばらくまともな運動もしていなかった。

 

悟空たちの相手をするのは、未だに地球最強の戦士であるセル。

OFAを持つ彼は訓練するほど力をストックしていくのでいまだに成長を続けている。

悟空たちほど急激な進歩ではないが、その進歩は留まることを知らない。

加えて本格的に地球の神の後継者となるべく修行を始めた彼は、ヒノカミより様々な術を学び始めた。ほとんどは地球を守り導くためのものだが、応用すれば戦闘にも活かせるだろう。

今では時折地球の神の代行として権威と義務を預かることもできるようになった。

 

そしてヒノカミはこれにより自由時間ができた。

地球を離れても問題が生じないからと宇宙の見回りを始めた。

定期的に地球に戻り挨拶と報告はしてくれるものの、フリーザ亡き後の宇宙の治安維持はギニュー特戦隊に任せっきり。

彼らの好物である甘味を振舞ったり、一緒に新しいポージングを考案したりと功績には報いてきたつもりだが、流石に何年も丸投げしたままというのは気が引ける。

よって彼らと一緒にパトロールでもと何度か同行もしたのだが……すでにギニュー特戦隊たちだけで十分だった。

フリーザを倒してから10年以上が経過している。

ヒノカミの指導とヒーロー活動の日々、そして彼ら自身の向上心により、彼らの戦闘力は既に超サイヤ人よりも上だ。

すでにフリーザを大きく超えているギニュー特戦隊たちは、フリーザ軍の残党の、さらにその残党のような木っ端の連中まで残さずしらみ潰しにしていたのでいよいよヒノカミの出番はない。

彼らは既に名実ともに、宇宙を守るスーパーヒーローとなっていた。

 

よって最近は界王神界にお邪魔し、老界王神の指導を受けていた。

戦う力はなくともその知識と頭脳は流石に全宇宙の神を務めていただけのことはある。

ヒノカミに対するスケベも鳴りを潜めている。

折角上がっている彼女からの好感度を下げたくないのと、マザコンに殺されたくないので。

尚、未だにヒノカミ以外の女性に対し千里眼でこっそり覗きをしていたりするのだが、それはマザコンの管轄外である。

 

そして今日も、界王神界にて修行を受けていると。

 

「星が一つ消えましたね……」

 

「うぅむ……」

 

「これが『破壊神ビルス』とやらの所業ですか」

 

「ビルス”さま”じゃ。口に気を付けよ。

 不敬を買えばただでは済まぬ」

 

「……」

 

星と命を破壊することで宇宙の均衡を保つ、抑止力としての神。

創造神としての側面が強い界王神と相反する存在であり、その気になれば宇宙そのものすら破壊する力を持つと言う。

純粋な強さだけでなく、立場も含めた力関係においてもビルスの方が上だそうだ。

 

破壊神という存在を、その行いを否定しているわけではない。そもそも否定する資格はない。

ヒノカミも悪と見限った相手の命を奪う。分かり合える可能性があったとしても、そこから目を背けて。

規模こそ違うがやっていることの本質は同じだ。

 

だがヒノカミは直接会ったことは無いが、このビルスという神を嫌っている。

聞き及んだ奴の性格は、ワガママで、気分屋で、怠け者。

気に入らないことがあると周囲に八つ当たりをする。

500万年前、最初に魔人ブウが誕生し暴れ出した際も本来は破壊神が対応するべき案件だったらしい。

しかしビルスは居眠りを続けこの宇宙の危機を見過ごした。

よって当時の界王神たちが魔人ブウに対処せねばならず、そして5人いた界王神の内4人が死に至る結果となった。

その話を聞いた時には殺意すら覚えたものだ。

 

ヒノカミは何があっても己を曲げず律儀で責任感が強い。

努力家で働き者、どれほど怒りや鬱憤が溜まっていようと他人への八つ当たりは絶対にしない。

ワガママという点は一致しているが、だからこそそれ以外が真逆なビルスとは絶対に分かり合えないと分かりきっていた。

 

「嫌な予感がするわい……お嬢ちゃん、お前は絶対にビルスさまに会うなよ?」

 

「頼まれたとしても、こちらから願い下げです」

 

「口に気を付けろと言うに……まぁその様子なら言い含めるまでもないか」

 

「それにしばらくは、地球に戻って引きこもる予定ですので」

 

「おや?何か用事かね?」

 

すっかり気安い間柄となったキビトの問いに、ヒノカミが答える。

 

「もうすぐブルマの誕生日なのです。

 盛大なパーティーを開く予定なのですが、その料理は全て儂と悟空で作ってやると約束したもので」

 

「ほほぅ、それは何とも羨ましいことだ」

 

「……『アレ』がいなければ皆さまもお誘いしたのですが」

 

「アハハ……」

 

名前を呼ぶことすら避けるほどビルスが嫌いなのかと、界王神は思わず苦笑する。

ビルスを苦手としているのは彼も同じだったので、気持ちはわかると否定しなかったが。

 

数日後、ブルマの手配した豪華客船の上で彼女のバースデーパーティーが開かれる。

顔なじみの関係者たちが集まり、約束通り端末で参加したヒノカミは悟空と共にたくさんの料理を作っていた。

すっかり料理上手になった悟空の腕前に感心しつつ、しかしそろそろ彼の空腹も限界だろうと彼を会場の方へと送り出した。

 

 

 

 

「お前が、フリーザを倒したっていうサイヤ人かい?」

 

 

猫のような姿をした獣人の『破壊神ビルス』と、その付き人である『天使ウィス』が、会場に紛れ込んでいた。

 




羅列すればするほど、ヒノカミとビルスが致命的に合わない。
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