『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第123話 ビルス

 

頭の中に界王の叫びが響いている。

おそらく界王神界にいる界王神たちも悲鳴を上げているだろう。

だがヒノカミはそれを無視してなおもビルスに炎の剣を向ける。

 

「何の真似だ、とボクが尋ねたんだけど?」

 

「決まっておろう。『害獣駆除』じゃよ」

 

ビルスが口を引きつらせ青筋を浮かべるが、ヒノカミは全く表情を変えない。

彼女はただ『路傍のゴミ』を見るような目でビルスを見下していた。

 

「まさかとは思うが……『害獣』とはボクのことを指しているつもりかな?」

 

「わざわざ口にせねば伝わらんか?

 突然他人の家に入り込んで我が物顔で居座り、勝手に食料を食い漁るドラ猫めが。

 多少の被害なら『寛大な心』で見逃してやろうと思うたが、住民に牙を剥き爪を立てようとするなら駆除せねばなるまい」

 

無言でビルスが破壊の力を放つが、攻撃を予測していたヒノカミは転移で回避しビルスの後ろに現れる。

 

「随分な口をきくじゃないか……辺境のちっぽけな惑星の神風情が」

 

「ならば貴様は星の神風情にも劣る三下よ」

 

「へぇ!ボクのどこがキミに劣っているというんだい!?」

 

ただの星の神にしては随分と力を持ってはいるようだが、自分には遠く及ばない。

先ほどのサイヤ人連中やセルとかいう奴の方がまだ強い。

だからビルスはあざけるような笑みを浮かべて目の前の身の程知らずに問いかけた。

 

 

 

「信頼と実績」

 

 

 

そして口を開いたまま硬直した。

 

ヒノカミは悟空たちと力を合わせてだが、宇宙全体を荒らしていたフリーザを撃破した。

さらにその残党の駆除にも尽力した。

傷ついた星々の民を癒し、支援も行ってきた。

平行世界の話だが、星一つとその住民を救って見せた。

邪悪な魔導師を退治し、暗黒魔界の王を降し、宇宙崩壊の危機を先んじて防いだ。

未来へ禍根を残さぬよう、封印されていた魔人そのものにも対処した。

そして以降も宇宙を巡り様々な問題を解決し、『天女』ヒノカミの名は宇宙に轟き崇敬の念を集めている。

 

 

「居眠りと癇癪ばかりの貴様と儂では『人々の上に立つ神』としての格がまるで違うわ。『役立たず』め」

 

「アラアラ……否定できませんねぇ、ビルスさま」

 

「こっ……のぉ……!」

 

彼のサボり癖を誰より間近で見てきたウィスが同意したことで、二の句を継げなくなったビルスが本気でキレた。

神殿の更に上、宇宙空間にまで飛翔していくヒノカミを追いかけ地球を離れていく。

 

「母上……!」

 

「セル!」

 

二人を見上げ呟くセルの後ろから、カプセルを通じてやって来たブルマが声をかける。

 

「ブルマ、わかったのか!?」

 

「えぇバッチリ!あのビルスって神さまは!?」

 

「ビルスさまならこちらの星の神と共に、飛んでいきましたよ。

 しかし分かったとは何のことです?」

 

神殿に残っているウィスを警戒したが、セルたちが気にしていないようなので無視して続ける。

 

「『超サイヤ人ゴッド』ってのになる方法よ!

 神龍がバッチリ教えてくれたわ!」

 

「おや、わかったのですか?」

 

「そういえば戦いの最中、空が暗くなっていたような……」

 

「結局『超サイヤ人ゴッド』とはなんだ!?」

 

「『6人の正義の心を持ったサイヤ人が集まり、5人が1人に力を送りこむことで誕生するサイヤ人の神』だそうよ」

 

「6人……!?」

 

悟空・ベジータ・ラディッツ・悟飯。これで4人。

 

「パパ!」

「お父さん!にいちゃん!」

 

「トランクス!」

「「悟天!」」

 

ブルマに続いて転移カプセルから出てきた二人の幼いサイヤ人を加え、これで6人。

 

「よし!疲労は仙豆で回復しているな!?

 すぐに5人の気を孫悟空へと送れ!」

 

「おい、何故カカロットなんだ!?」

 

「母上が戦っている!ならばお前よりも孫悟空の方が合わせやすいはずだ!」

 

「……チッ!」

 

悟空と互角であるベジータが不満を漏らすが、強さとは無関係かつ納得のいく理由だったのでセルの指示に従う。

6人が手を繋いで輪となり、エネルギーが悟空へと集まっていく。

 

 

「……」

 

 

「これが……『超サイヤ人ゴッド』!?」

 

逆立っていた髪が平時と同じように収まっているが、色が赤い。

何より悟空の気が上手く感じられない。

破壊神たちと同じく上位の神の領域に到達したため、ただの人間に推し量ることはできなくなったようだ。

 

「……母上を頼むぞ、兄上」

 

宇宙で行われている激しい戦いの衝撃から地球を守る為、結界を維持しているセルとピッコロは神殿から離れることができない。

苦渋の表情で思いを悟空へと託す。

 

「あぁ……行ってくる!」

 

赤いオーラを纏う悟空が、宇宙へと飛び立っていく。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

ビルスの戦いの余波は界王神界にまで届いていた。

 

「ビルスさまの力が宇宙を揺らしておる!このままでは……!」

 

「ヒノカミさんが!」

 

約束を破りヒノカミはビルスの前に出てしまったが、あの状況では止むを得まい。

地球を破壊される寸前だったのだ。大人しく諸共殺されろなどと言えるはずもない。

しかし状況は最悪だ。危機は宇宙全体に広がってしまった。

そしてヒノカミは能力を駆使して善戦しているが間違いなく破壊されてしまう。

 

 

「……こうなれば……やむを得まい!」

 

「ご先祖さま!?」

 

「この戦いを止め、お嬢ちゃんを救うには、これしかない!」

 

「!?何か方法があるのですか!?」

 

老界王神は界王神とキビトに紙の束を突き出す。

1枚目に目を通した二人は。

 

「これは……!?」

 

「まさか、本気ですか!?」

 

「いいからさっさと行け!ことは一刻を争うのじゃぞ!?」

 

「「は、はいっ!!」」

 

界王神とキビトは老界王神に怒鳴られ、慌てて転移で界王神界を離れていく。

 

 

「頼む……間に合ってくれ……!」

 

宇宙の神とも言える老界王神が、可愛い弟子の無事を祈った。

 

 

彼よりも上位の神は、彼の祈りを聞き届けることができる神は、この宇宙にはいないと言うのに。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「フン、随分とイラつかせてくれたね。

 だがここまでだ。所詮星の神如きが破壊神に敵うはずもないのさ」

 

「……く、くくくく……!」

 

「……何がおかしい?」

 

「まさかまだ理解していなかったとは思わんでな」

 

鬼の鎧は粉々に砕かれた。

『怒髪焦天』によりすでにヒノカミの魂は風前の灯火。

それでもビルスには傷一つつけることができず、しかしスカスカになった魂で不敵に笑う。

 

「儂は『破壊神』を否定しているのではない。

 『貴様如きが破壊神を名乗ること』を否定しておるのじゃ。

 だと言うのに儂の前で肩書を誇らしげに騙るとはやはり馬鹿か」

 

「この……減らず口を……!」

 

「宇宙を脅かす悪に対する抑止力と言うなら敬意を払おう。

 伏して崇めよう。怒りを鎮めるためにこの首を差し出すことも検討する」

 

だが魔人ブウという宇宙の危機を居眠りで見過ごし、宇宙に貢献する地球を気まぐれで破壊するような神だというのなら。

 

 

「いらんよ、貴様は。この宇宙に必要ない。

 いや、先ほどは『役立たず』と言ったがむしろ『足手まとい』じゃ。

 無能な老害がのさばるのは人々にとって不幸でしかない。

 貴様がこの宇宙のためを思うなら即刻腹を斬れ。儂が介錯してやろう」

 

「…………」

 

怒りが頂点を超え、逆に冷静になったビルスは目を閉じて大きくため息をつく。

 

「……ヒノカミ、と言ったかな?

 ボクは生涯キミの名を忘れることはないだろう。

 キミ以上にボクを怒らせた存在はこれまでになく、これからも現れることはないだろうからね」

 

ビルスはゆっくりと掌を正面に掲げ、狙いを定める。

 

「ばあちゃん!!」

 

神の気を纏うサイヤ人が飛んできても気にも留めず、燃えカス同然の魂でなおも刃を振りかざす目の前の敵を、己の全力をもって。

 

 

 

「『破壊』」

 

 

 

塵へと変えた。

 

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