『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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なじみと言彦の残滓には一切悪意はありません。
純粋にヒノカミのためを思い、己の存在を託しました。

ただたとえ欠片であっても、『平等なだけの人外』と『不可逆のデストロイヤー』をその身に取り込んで完全に自分を保ち続けられるほど、ヒノカミは超人ではありませんでした。


第125話 『悪平等な救済者(ノットイコール・ヒーロー)

 

あぁ、あぁ、なんと清々しい気分か。

生まれ変わるとはまさにこのこと。

 

新しい。世界が、全てが新しく見える。

そして愛おしい。とても繊細で、儚げで、まるでガラス細工の芸術品のようじゃ。

実に庇護欲をそそられるではないか。

 

「……まさか、ボクに破壊されて蘇る奴がいるとはね」

 

……?儂の前にいる『コレ』はなんだったかのう?

 

……あぁ、確か、敵じゃ。

殺したいほど憎んだ、儂を一度殺した敵じゃ。

 

……敵か?コレが?

必死に毛を逆立てて威嚇しているようにしか見えない、この微笑ましい野良猫が?

 

「だが蘇ったところで同じことだ。

 相変わらず大した力も感じない……。

 今度こそ完全に消滅させてあげよう」

 

今度こそ?あぁ、そういえばコレは先ほど面白いことをしていたな。

確か、こうやって、掌を広げて。

 

 

「『はかい』」

 

 

「っ!?」

 

よし、できた。思ったより簡単じゃったな。

だが避けられたか、失敗したな。

向こうにあった石ころをいくつか消してしもうた。

たかが石ころとは言え、ちゃんと後で元通りにしておかねばなぁ。

 

「遠くの……星が、消えた……!?」

 

「馬鹿な……今のはボクの物とは少し違うが、確かに『破壊』の力だった!

 たかが星の神が、破壊神の力を!?何だ貴様は!」

 

う~~む、スピードも遅かったが、威力も足りんな。

この猫も同種の力を持っているようじゃし、この程度では表面を削る程度が精々じゃろ。

 

「おい……聞いているのか!?答えろ!」

 

力が足りぬなら、増やせばよいか。

今なら簡単にできる気がする。

……というか、なんで儂は今までこんな簡単なことができんかったんじゃ?

 

 

「『かいおうけん』」

 

 

「聞く耳持たずか……もういい!消えろ!!」

 

 

「『いちおくばい』」

 

 

「がはぁっ!!?」

 

おうおう、やはり簡単じゃったわ。

もっと倍率を上げても良かったかもなぁ。

あの猫もピンピンしとるではないか。

……しかし躾とは言え、動物に直接手を上げるのは気分が悪いのぅ。

 

「ぐっ……いきなり、力が!?」

 

「ばあちゃんが……界王拳を!?」

 

だが痛くしなければ躾にならぬし、思ったより頑丈なようじゃし、何か良い方法はないかの?

 

……お、そこに丁度良い物があるではないか。どれ。

 

「!?おい、貴様!何をしようとしている!?」

 

良し良し、掌握成功。

これくらいの火種なら躾に使うのにいい塩梅じゃろ。

儂は非力で殴る蹴るは苦手なんじゃし、こういうことはスマートにやらねばな。

 

「ばあちゃん!やめろーーーーっ!!!」

 

ん?なんか聞こえたか?

 

……羽虫でも飛んでおるんかの?

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「「「うわぁぁぁっ!?」」」

 

神殿に転移してきた戦士と関係者たちは、宇宙空間で生じた爆発の衝撃で揺さぶられ悲鳴を上げる。

 

「神殿には結界があるんだろ!?

 なのにこんなに衝撃がくるのかよ!?」

 

「これがあのビルスって奴の力なのか……!?」

 

「……あれ?なんか空が、暗く……?」

 

神殿と地球全域を覆う結界を維持しているのはセルとピッコロ。

彼らの耳には、クリリンたちの言葉は届いていなかった。

ただ目を見開いて宇宙を見上げ震えている。

 

「……オレたちも行こう!悟空たちの加勢をするんだ!」

 

「よし!」

 

「っ!?馬鹿、やめろ!!ここを離れるんじゃない!!」

 

宇宙空間で活動できる天津飯たち4人が飛び立とうとしたところで、彼らに気付いたピッコロが声を上げる。

 

「破壊神に破壊されたら蘇ることができるかわかんねぇってんだろ!?

 そのくらい、覚悟の上だ! 黙って破壊なんかされてたまるか!!」

 

「違う、破壊神にではない!……『ヒノカミに殺される』ぞ!!」

 

「「「なっ!?」」」

 

その場にいた全員の視線がピッコロに向いた。

彼と同じく宇宙の状況を視認していたセルが答える。

 

「……孫悟空は間に合わなかった。

 奴が辿り着く寸前、母上はビルスに破壊された。

 だがなぜか、蘇ったのだ。

 ビルスに匹敵……ひょっとしたら凌ぐほどのとてつもない力を手に入れて……!」

 

「えぇっ!?」

 

「凄いじゃない!だったらもう安心よね!?」

 

「……違う!あんなものは、母上ではない!

 母上があんなことをするはずがない!!」

 

「「「?」」」

 

「私が説明いたしましょう」

 

狼狽するセルたちに代わり、冷静なウィスが皆の前に出る。

 

「復活したヒノカミさんは破壊神に似た『破壊の力』を使い、ビルスさまの破壊を防ぎました。

 そして突如力を増幅させ、直接彼女を破壊しようと襲い掛かったビルスさまを蹴り飛ばしました。

 凄まじい一撃でしたよ、まさに破壊神に匹敵するパワーでした」

 

「なんだとっ!?」

 

「しかし自身に匹敵するパワーとは言え、一撃で倒されるほどビルスさまはヤワではありません。

 いよいよ本気になったビルスさまを相手に殴り合いでは埒が明かないとお考えになられたのでしょうか。

 そこでつい先ほど彼女は……」

 

流石のウィスも一度呼吸を挟み、改めて事実を伝える。

 

 

 

「彼女は、太陽を爆発させたのです」

 

 

 

「「「……え?」」」

 

「その熱と衝撃をビルスさまにぶつけるために。

 もちろん、そのくらいではビルスさまはやられませんが。

 この星が無事だったのは、この神殿の結界のお陰ですよ。

 ……いえ、無事とはとても言えませんねぇ。

 太陽どころか太陽系銀河まるごと、跡形もなく消し飛んでしまったのですから」

 

「……うそ、だろ?ヒノカミさんが?」

 

「銀河を……宇宙を、消した?」

 

「……予言魚さんの予言が、当たってしまいましたねぇ。

 どうやら暴走しているらしい今の彼女は、まさしく『この宇宙を脅かす存在』。

 天女ヒノカミこそが破壊神であるビルスさまの『真の敵』というわけですか」

 

「……っ、悟空は!?悟空はどうなってる!?」

 

「生きておられますよ。

 直撃でないとは言えあの爆発を耐えるとは流石に『ゴッド』……神を名乗るだけのことはあるのでしょう。

 今はヒノカミさんを止めようと抗っておられますが、繰り広げられている彼女とビルスさまの戦いは『宇宙の存亡をかけた激闘』。

 その場にいるだけで精一杯、近づくことすらできていないご様子。

 彼女には拳も声も届いておりませんね」

 

「な、なら、悟空をヒノカミさまのところまで送り届ければ!」

 

「親子なんでしたっけ?たしかに可能性はあるのかもしれませんねぇ。

 ですがピッコロさんの言う通りおすすめしません。

 最低でも今の悟空さんと同程度の力が無ければ戦場に辿り着くことすらできないでしょう。

 巻き添えを喰らってお陀仏です」

 

「そ、そんな……」

 

「くそったれ……オレもゴッドになれさえすれば……!」

 

 

 

「……あのっ!!」

 

 

突然の事態になすすべなく皆が項垂れるなかで、一人の女性が意を決して声を上げる。

 

「私を、私を加えて試してもらえませんか!?

 私のお腹にいるんです……『悟飯くんとの子供』が!!」

 

「「「「「!!!!??」」」」」

 

ハーフではあるがサイヤ人の血を引く悟飯の子供なら、サイヤ人と見なされるかもしれない。

ベジータ、ラディッツ、悟飯、悟天、トランクスに、妊娠しているビーデルを加えればこれでこの場に6人だ。

 

「だ、黙っていてごめんね、悟飯くん……」

 

「え、え~と……そっか……僕の、子が……!」

 

「ついに、私にも、孫が……っ!

 ……ぃよぉ~~~し!盛大にパーティーだぁーーーっ!」

 

「そいつはこれが終わった後の祝勝会にとっておけっ!

 今はとっととオレに力を寄越すんだっ!!」

 

「「「は、はい!!」」」

 

 

5人のサイヤ人の力を受けて超サイヤ人ゴッドとなったベジータが神殿の結界を超えて、何もなくなった宇宙へと飛び立っていく。

皆の力と期待を一身に背負って。

 

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