『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

380 / 794
第126話

 

「おい!どうした悟空!

 パワーが落ち始めているぞ!?」

 

「ちきしょう……超サイヤ人ゴッドになったってのに、届かねぇのか……!」

 

「クソッ!猫の手も借りたい状況だってのに……!」

 

息を荒げる悟空と苛立つビルスの視線の先には白亜の巨体、オーバーソウル『グレートスピリッツ』を発動したヒノカミ。

そして彼女の前にはスピリット・オブ・ファイアと。

 

『『『『…………』』』』

 

『スピリット・オブ・レイン』。

『スピリット・オブ・アース』。

『スピリット・オブ・ウィンド』。

『スピリット・オブ・サンダー』。

5体の大精霊が主を守るように佇んでいた。

 

グレートスピリッツを発動させたヒノカミは、己の特性を利用して『宇宙のアカシックレコード』にアクセス。

スピリット・オブ・ファイアを強化し、4体の大精霊を誕生させた。

 

彼らはもはや地球の自然の化身ではなく、宇宙規模のそれぞれの概念そのもの。

破壊の力を受けてもこの宇宙から『火』という存在が消滅しない限り、スピリット・オブ・ファイアは何度でも再生する。

他の大精霊たちも同様だ。

 

ビルスが全力で破壊の力を使えば彼らを消滅させることができるかもしれない。

しかしそれはこの世界から『火』『水』『地』『風』『雷』の概念を消滅させることに等しい。

どの一つを失ったとしても宇宙が成り立たなくなる。

いわばヒノカミはこの宇宙そのものを人質にしている。

その事実に気付いたビルスは安易に破壊の力を使うことができず、己の肉体の力だけで戦うことを強いられていた。

多少マシになっただけのサイヤ人の力すらも借りねばならない状況は破壊神として屈辱だったが、そうしてでもあの女を止めなければ宇宙を守ることができない。

 

 

『大氷塊』

 

「来るぞ!」

 

「ちきしょう!!」

 

スピリット・オブ・レインが造り出した幾つもの『惑星サイズ』の氷塊がビルスたちに投げつけられる。

 

『ブラックホール』

 

「「!?」」

 

回避しようとした二人はスピリット・オブ・アースに引き寄せられ動きが鈍る。

しかし流石は神と言うことか、二人は同じように吸い込まれる氷塊を避けつつ重力を振り切って距離を取る。

 

『ガス雲』

『プラズマ』

 

そこにスピリット・オブ・ウィンドとスピリット・オブ・サンダーが己の力を注ぐ。

スピリット・オブ・アースが頭上に掲げるブラックホールに、3体の大精霊の放つ技が引き寄せられていく。

 

「……!?全力でガードしろっ!」

 

「天神武装、全開っ!!」

 

 

 

 

『『『『超新星爆発』』』』

 

 

 

 

「「ぐぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!!」」

 

膨大な質量がブラックホールの中で超圧縮され、ついに重力崩壊を起こした。

衝撃波と共に放出された重元素やガンマ線が、無となった宇宙空間に拡散していく。

虹色に輝く光はあまりに美しく、そして無慈悲だった。

 

「くそっ!また遠ざけられたか!」

 

「ぐっ……地球が!?」

 

五大精霊を抜いてヒノカミ本体に接近せねばならないのに、今の爆発で吹き飛ばされまた距離を空けられてしまった。

そしてこの宇宙に取り残されたただ一つの星も衝撃で戦場から遥か彼方へと飛んでいく。

しかし豆粒のように小さくなっていく星から一つの光が飛び出し、こちらに急接近してくる。

 

「……ベジータ!?おめぇも超サイヤ人ゴッドに!?」

 

「今はそんなことはどうでもいい!とっとと食え!」

 

「サンキュー!」

 

悟空はベジータが投げた仙豆を受け取り口に放り込む。

さらに悟空が促し、ビルスにも一つ放り投げる。

ビルスは疑うこともなく直接口で噛みつき砕いた。

 

「おいお前ら!さっきのフュージョンってのはできるか!?」

 

「駄目だ!あれは一回合体したら、もう一回合体するまで1時間待たなきゃなんねぇ!」

 

「ちっ、役に立たない技だ!」

 

「……なるほどな、セルの言っていたことがよくわかるぜ。

 ムカつくツラしやがって……!」

 

ベジータの姿も見えているはずなのに、ベジータとして見ていない。

彼女の眼には一体どのように映っているのだろうか。

ただ何もかもを見下したような微笑みが、無性に腹立たしかった。

 

 

「……?」

 

 

ベジータが見つめている先で、グレートスピリッツの中核となっているヒノカミが、ゆっくり両手を掲げた。

頭上に真っすぐ伸ばし、掌を大きく広げた。

そして悟空とベジータの視力が、彼女の口の動きからその単語を読み取った。

 

 

 

 

 

 

『げんきだま』

 

 

 

 

 

 

「「!!!!??」」

 

ヒノカミの頭上に小さなエネルギー球が出現した。

そして見る見る大きくなっていく。

 

1メートル。

10メートル。

100メートル。

1キロメートル。

10キロメートル。

100キロメートル。

 

この宙域には命どころかすでに星すら存在しない。

だがヒノカミは宇宙でその名を轟かせる天女。彼女は宇宙の住民が持つ『彼女への信仰心』をエネルギーとして搔き集め始めた。

『元気を分けてもらう』のではない。対象が気付かぬほど僅かではあるが、彼女の意思で強制的に元気を徴収している。

そこに彼女自身の無尽蔵のエネルギーを注ぎ込み続ければ。

 

「……ふざけるなよ、オイ」

 

「あんなもん使ったら!」

 

「第7宇宙が……消滅する……!」

 

グレートスピリッツの頭上には、まさに太陽のごとき大きさの光の塊があった。

しかし内包しているエネルギーは太陽などとは比べ物にならない。

 

ビルスなら耐えられるかもしれない。

宇宙を破壊することくらいなら彼でも出来る。

自分の出せる力と同格の力ならば防御に専念すれば乗り切れるだろう。

 

だがこの宇宙は耐えられない。

ここ北の銀河の辺境で生じた爆発が、この宇宙全体を呑み込むだろう。

 

「おのれぇっ!!」

 

『『『『『…………』』』』』

 

「っ!?……くっ……そぉっ!!」

 

ビルスはあの巨大な元気玉に匹敵する破壊の力を込めたエネルギー球を作り出し、ヒノカミが攻撃する前に跡形もなく消滅させようと構えたが、五大精霊が立ちふさがった。

連中を破壊することはできるが破壊するわけにはいかないと踏みとどまる。

 

 

「……ビルスさま、ベジータ。オラに協力してくれ」

 

「「なに?」」

 

「オラがばあちゃんを止める!

 ぶん殴ってでも止めてやる!

 だからオラを、ばあちゃんのところまで行かせてくれ!」

 

「アレがぶん殴ったところで止まると思うか!?」

 

「でも可能性はきっとあるさ。

 だってばあちゃんは、オラのばあちゃんだかんな!」

 

「……ビルスさま!」

 

「えぇい、失敗したら承知せんぞ!

 そうなったらボクが貴様らを破壊してやるからな!!」

 




ビルスなら元気玉の相殺もできるでしょうが、その余波だけで宇宙が消し飛ぶでしょう。
己の能力で周囲の空間を歪めているので転移での接近も不可能とさせていただきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。