『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第127話

 

「くそ、何故ボクがこんな役を……!」

 

全身にエネルギーを纏ったビルスが先陣を切る。

ヒノカミが放つ衝撃波や隕石群を力尽くで砕いて一直線に突撃。

 

『……』

 

「ぐぅっ!この、石頭め!!」

 

しかしビルスの体は正面に立ちはだかった『スピリット・オブ・アース』に激突し弾き飛ばされた。

宇宙全体の『地』に関する概念で構成された大精霊の強度は、カッチン鋼の上位種である『カチカッチン鋼』に相当するだろう。

破壊の力を纏わない攻撃では貫くどころかヒビを入れるのが精々。

そしてそのヒビも瞬時に再生している。

 

『『……』』

 

動きを止めたビルスの両脇から『スピリット・オブ・ウィンド』と『スピリット・オブ・サンダー』が襲い掛かる。

2体の作った宇宙風……『電離ガス』が球状の結界となりビルスを閉じ込め、全方位から圧をかけ始めた。

 

「ふん!ぬぬぬぬぬ……!」

 

そのまま押しつぶそうとするがビルスは逆に打ち破ろうとエネルギーを放出する。

すると『スピリット・オブ・アース』が結界の上から両手を掲げ、更に重力を加算した。

 

「ぬぐぉぉぉぉおおおお……!!」

 

破壊の力を使わず素の能力だけで拮抗できるとは、さすがは破壊神。

しかしこれではもはや動けない。

ビルスも、3体の大精霊も。

 

 

 

ビルスが囮になり足止めを担っている隙に、迂回した悟空とベジータがヒノカミへと接近する。

 

『『……!』』

 

「ちぃっ、もう感付かれたか!」

 

残る2体の大精霊、『スピリット・オブ・ファイア』と『スピリット・オブ・レイン』が二人の前に立ちはだかる。

 

「「!?」」

 

一瞬で2体の大精霊と悟空たちを覆う、巨大な球状の氷の壁が出現した。

 

「止まるなカカロット!いけぇ!!」

 

ベジータが移動を止めギャリック砲を放つ。進行方向の氷の壁に大穴が開いた。

更に速度を上げた悟空が通り抜けようとするが、巨大な氷の小手を身に着けた『スピリット・オブ・レイン』の腕が彼の行く手を阻む。

 

「うぉぉぉぉおおおおおっ!!」

 

その場にとどまり続けるベジータが遠方から連続エネルギー弾を放ち氷の腕を弾き飛ばそうとするが、僅かに動きを鈍らせる程度。

腕の向こうで氷の壁の穴が修復され小さくなっていく。

悟空が氷の腕を避けようと軌道を変えれば、穴が塞がるまでに間に合わない。

そもそも星に迫るほどの巨体であるためそうとは見えないが、あの腕はとんでもない速さだ。

このままでは悟空は躱すことすらできず握りつぶされるだろう。

 

 

『……!』

 

『!?』

 

「「なっ!?」」

 

しかし『スピリット・オブ・ファイア』が、『スピリット・オブ・レイン』を横から殴り飛ばした。

 

『……』

 

「おめぇ……サンキュー!!」

 

自分を庇うように背を向けた『スピリット・オブ・ファイア』に感謝を叫び、悟空は辛うじて一人通れるほどの小さな穴を通り抜けてヒノカミのもとへと飛ぶ。

 

つい先ほど生み出された4体の大精霊と違い、『スピリット・オブ・ファイア』だけはヒノカミと共にいた霊から再構成されたものだ。

だから彼は覚えていた。『孫悟空はヒノカミの子である』と。

故に『主人を守れ』という新たな命令を下された今でも『孫悟空を守ることは主命であり、彼が主人に害をなすことはありえない』と判断した。

 

『……!』

『……!』

 

「お、おい、貴様ら!?」

 

互いを『主に逆らった裏切者』と認識した2体の大精霊が激突する。

『炎』と『氷』。

相反する属性を持つ彼らの戦いは互いに同格であり、加えて宇宙の概念そのものだからこそ殺し合っても殺しきれない。

 

「どわぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

宇宙規模の『水蒸気爆発』が、その場にいたベジータを遠くへと吹き飛ばした。

2体はそれに気付くことなく取っ組み合いを続けていた。

彼らは最初からベジータなど眼中になかった。

 

 

 

とっくに元気は十分に集まっているはず。

見る限り、これ以上元気玉が大きくなる様子がないことからも明らかだ。

なのにまだヒノカミが元気玉を手放していない理由が、接近することではっきりした。

 

『カァアッ!カァァァァアアーーーーッ!!』

『シャァァァアアアーーーーッ!!!』

 

半透明の赤い烏が三つ脚で彼女の右手を掴み、白い大蛇が彼女の左腕に巻き付いて抑え込んでいた。

悟空やビルスのことがまともに見えていない彼女でも、流石に自身の魂の片割れとも呼べる彼らは例外のようだ。

ただし彼らの声は届いておらず、何故自分の邪魔をするのか疑問に思っているだけのようだが。

 

「ばあちゃーーん!!」

 

「……くけけけげげ?」

 

悟空が飛び込んでいく。

ヒノカミは悟空を『ゴミか虫』と見間違え、億劫に手で払うような気軽さで、星すら消し飛ばすほどの衝撃波を全方位に放出した。

 

「ぐぁぁっ!くっ、このっ!!」

 

しかも一度ではない。

悟空が近づこうとする度に何度も何度も叩きつけてくる。

 

残り僅かが果てしなく遠い。

どれだけ手を伸ばしても、声を荒げても届かない。

 

 

「……だったら届かせてやる!!」

 

悟空は飛ばされないよう必死にこらえながら、両腕に力を集中させ始めた。

 

「『天神武装』……!」

 

第一段階、全身に気の鎧を纏う。

第二段階、固有の武装を具現化する。

第三段階、武装に特性を付与する。

 

習得開始からすでに約20年。

第一段階のままだった、第一段階のままで十分と考えていた悟空の強い願いが、今この瞬間に形となった。

 

 

 

 

「伸びろっ!『如意棒』ーーーーーーーっ!!!」

 

 

 

 

彼の手に握られた真っ赤な棒が叫びに呼応し、どこまでも真っすぐに伸びていく。

しっかりと悟空に支えられたそれは衝撃波を貫き、ヒノカミへと迫る。

 

 

 

 

「げげ?」

 

 

 

 

如意棒の先端がヒノカミの額へと届き、弾き飛ばした。

 

貫いたわけではない。

傷をつけたわけではない。

ただ首をのけぞらせただけ。

 

しかし真上を見上げた彼女の目の前には太陽のような元気玉と、見覚えのある赤い棒だけが映っていた。

 

 

 

あぁ、なんだったか。

以前にもこんなことがあった。

譲り受けたそれをはしゃいで振り回して。

木々や家を破壊して、自分や義父にぶつけたのにそれも気付いておらず。

 

 

ぐっ

 

 

こうして無理やり握って止めて、その頭に思い切り拳骨を振り下ろしたのだったな。

まだ幼かったそれはあまりの痛みに思い切り涙を。

 

「……」

 

棒のもう一端を掴んでいた小さなそれは、泣き出して。

泣き続けて、泣き続けて、そして今も泣いていて。

 

……今も?

 

 

 

 

 

「ごくう?」

 




・天神武装『如意棒』

孫悟空の具現化した武装。
真っ赤な棒は主の思いに答えて、ひたすらに真っすぐ伸びていく。

どこまでも。天までも。
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