『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ダラダラと、そしてパパっと進めていきます。


第130話 全王

破壊神との戦いから数日後、この短期間でいくつかの実績を積んだヒノカミは新たな第7宇宙の代表と認められ、ウィスの案内で全王のもとへと向かった。

 

この世界には宇宙が12個あり、ヒノカミのいた宇宙は第7宇宙らしい。

そして全王とは全ての宇宙を統括する、この世界の頂点にして絶対者。

逆らう者は誰であろうと、宇宙であろうと容赦なく消してしまうと聞き、ヒノカミは内心身構えていた。

ビルスの同類である可能性を危惧したからだ。

もしそうだとしたら殺されるとわかっても抗うだろう。

その時には何とか第7宇宙に追及が及ばぬよう立ち回らねばと考えていた。

 

「よく来たのね、ヒノカミくん」

 

しかし直接全王と対面して、その考えは霧散した。

 

ヒノカミも住人は誰もいないが、自分だけの世界を作り出し所有しているからこそ一瞬で理解できた。

彼はこの世界の意思と力の体現者、この世界が操作している人の形をした『端末』。

いわばこの世界そのものだ。なるほど気に入らない相手ならば世界から追い出すように自在に消せるだろう。

 

そして善でも悪でもなく『無邪気』。

独善的な正義を振りかざすことはなく、他者の不幸を愉しむわけでもない。

子供のような姿と性格は彼の本質をわかりやすく表現している。

……無邪気でなければ、何の感傷も持たず無数の命を一瞬で切り捨てることなどできるはずがない。

 

存在そのものが自然現象。勝てる勝てないではなく『敵対する意味がない』。

この世界にいるだけで彼の恩恵を受けており、彼の怒りは大嵐や火山の噴火と同じ。

彼にゴマをすることがこの世界に住まう民の防災対策なわけだ。

遥か昔の人類は天災を『神の怒り』と信じていたと言うが、まさかこの世界では本当にその通りだったとは。

 

「お初にお目にかかります、全王さま。

 先日第7宇宙の界王神となりましたヒノカミと申します。

 ご挨拶が遅れたこと、誠に申し訳ございません」

 

ヒノカミはウィスに並んで片膝をつき首を垂れる。

相手は世界そのもの。であれば来訪者とは言えそこに住まう者として、最大限の敬意を持って接する。

 

「キミの事情は聴いてるよ。随分暴れたんだってね」

 

「はい。消滅を以てしても償いきれぬ罪です。

 断罪を望まれるなら拒む理由はありませぬが、どうかこの世界に贖罪する時間を、今しばらくいただきたく」

 

「いいのいいの!破壊神の方が問題だったのはわかってるから!

 でもキミはボクのこと怖がらないのね!」

 

全王は実に上機嫌だ。

誰だって死は怖い。だからあの傲慢不遜なビルスですら全王の前では借りてきた猫のようになる。

しかしヒノカミは違う。消滅を恐れていない。

正確に言えば、消滅以上に『己が歪むこと』を恐れている。

 

「キミのこと気に入っちゃった!お友達になってほしいのね!」

 

「お友達、ですか……?」

 

「うん!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

そして全王と対面して早数カ月。

 

 

「わ、わ!今の凄い!どうやったの!?」

 

「さっきのとこにちょっとだけ段差があったじゃろ?

 加速アイテム使ってその段差の頂点でジャンプすると、ショートカットできるんじゃよ。

 タイミングはシビアじゃが……やってみるか、全?」

 

「うん!」

 

 

ヒノカミはず~~~~~~っと、全王の宮殿で一緒に遊んでいた。

主に、テレビゲームで。

 

ヒノカミは複数の世界を巡って来た。

そしてそれらの世界の様々なゲームを記憶しており自在に再現できる。

霊界と魔界の世界の師である幻海とよく一緒にゲームしていた影響で、彼女も中々のゲーマーだ。

ロールプレイング、アクション、シューティング、シミュレーション、パズル、ボード、ホラー……引き出しは無尽蔵。

そして覚醒したヒノカミは同じ世界の仙水忍の配下であった天沼……『ゲームマスター』のテリトリーすらも再現できる。

普通に遊んで、中に入って、1作で二度おいしい。

何より睡眠も休息も必要としない彼女はいつまでも全王の遊びに付き合うことができる。

 

全王をもてなしているとはいえ、これが界王神としての仕事を放棄してのことなら全王の忠臣である大神官は苦言を呈しただろう。

しかし彼女は全王と遊んでいるだけでなく、同時にちゃんと第7宇宙で働いている。

彼女の弟子の一人の技……『心身気影』とやらを使い、自分の分身を複数生み出して並列操作しているのだ。

一人はこうして全王と遊び、一人は突然の交代となった神の後継に引き継ぎの指導を行い、一人は遂に界王神直属部隊となったギニュー特戦隊と共にヒーロー活動、一人は居眠りしてたビルスを叩き起こして喧嘩に発展……。他にも宇宙の至るところで、大勢の彼女が活動を続けていた。

端末1体で精一杯だった彼女が多数を苦も無く操作できるようになったのは、やはり安心院なじみの残滓を取り込んだからだろう。

オリジナルは7億人の端末を所有していたほどだ。

彼女ほどの処理能力はないがほんの数十体で苦労するはずもない。

 

(便利ですねぇ……私も覚えてみましょうか?)

 

と、内心でつぶやく大神官。

もし各宇宙の天使たちがそれを聞いていたら何としても止めようとしただろう。

大神官は天使たちの父。

複数の体を操れるようになったら、きっと子供たちの宇宙にやって来て直接監視を始めるはず。

職場に上司とは言え父親が来て、保護者同伴で仕事をする羽目になるのだ。無理もあるまい。

 

 

「さて、一旦切り上げて飯にするか。何がいい?」

 

「ボクね、ボクね!カレーライス!」

 

「またかぁ。全はカレーが好きじゃなぁ」

 

「えへへ!」

 

 

「……」

 

……なんだか手馴れてるというか、『友人』というより『母親』みたいになりつつあるのは少し問題かと思うが、全王が楽しそうなので飲み込んだ。

大神官として、唯一神である全王は全てに優先されるので。

 

完成品を出せばいいのに、毎回食材とキッチンを具現化しエプロンを付けて料理を始めるヒノカミ。

『手で作った方がおいしい気がする』らしいので、急ぎの事態でなければ彼女はいつも時間をかける。

しかし達人を自称するだけあって、彼女の作る料理は12の宇宙の中でも最高峰だ。

死神の世界の零番隊の『穀王』曳舟桐生の能力を再現し、比喩ではなく『己の魂を込めた』彼女の料理は至高の美食であり生命に活力を与える。

大神官や全王の付き人も唸るほどで、いつもご相伴に与っている。

 

 

 

「……ん?」

 

「ん?」

 

「第7宇宙で問題が起きたようです」

 

「……どうしたの?」

 

 

瞬時にヒノカミが界王神としての顔つきになり、全王も表情を消して声を低くする。

 

「ビルスが第6宇宙の破壊神と、何やらもめごとを起こした様子。

 悟空とベジータがその場に居合わせていたらしく、地球にいた儂の分霊に話を持ってきました。

 申し訳ありませんが、これよりそちらの対処に向かわせていただきます」

 

「へぇ……ボクも話を聞かせてもらおうかな」

 

「畏まりました。

 大神官さま、全王さまをお連れさせていただきます」

 

「留守番よろしくね」

 

「構いませんが……お玉とエプロンは置いていきなさい。

 全王さまも、スプーンを」

 

「「あ」」

 




本作ではフリーザ軍残党の芽は悉く摘み取っているため、フリーザ復活はありません。
よって一気に第6宇宙との戦いに移行します。

ヒノカミから全王に対する評価は『幼く残酷なこの世界そのもの』です。
原作では簡単に宇宙を消してしまいますが、ちゃんと自分の指示通り人間を成長させている4つの宇宙は除外するなど、言動に一貫性がありビルスに比べれば話が通じる相手。
そしてヒノカミは子供に甘く、全王も自分に怯えず接してくる相手を好む傾向が見受けられるため、意外と相性はいいです。
それにヒノカミも規模は違えどやるときは結構過激なので。
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