『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作にて『ビルスの強さを10とするなら』の公式設定があったので、本作にも当てはめておきます。

15:ウィス
14:ヒノカミ(暴走)
11:ビルス(ヒノカミとの喧嘩三昧で成長)
10:ヒノカミ
 8:ヒノカミ(端末)
 6:悟空・ベジータ(原作と大差無し)


第134話

 

「時を止める能力、そりゃ強力で頼りたくなるのはわかる。

 じゃが悟空に通じんと分かってなおその力に拘るのは愚かとしか言えん。

 言っておくが、時間停止は儂だけではなくセルにも通じんぞ?

 仮に通じたとしてもこのように動きを封じられれば何の意味もあるまい。

 第二第三の矢は常に用意しておかんかい」

 

「う……ぐ……」

 

「そもそもじゃな、『0.1秒後の攻撃を予測されてしまう』時点でお主の行動はワンパターンなんじゃよ。

 動作や停止時間に緩急つけたり、敢えて無駄な行動をして相手を困惑させたり、取れる手段はいくらでもあったじゃろ。

 ……なぁ聞いとる?」

 

「ぐぁぁぁぁああっ!!」

 

目の前の小柄な女の上に浮かぶ、上半身だけの巨大な鎧人形。

その真っ白な左腕が、ほんの少しだけ力を強めた。

拳の中に握られているヒットが苦悶の声を上げ、全身からミシミシと音が響く。

 

「おっと、すまんすまん。

 まだまだ加減が下手くそでなぁ。儂も、こ奴も」

 

白い炎がヒットを包み、傷が消える。

しかし精神的なダメージは消えない。

ヒットだけでなく、第6宇宙の戦士たちもフロストを除いた3人は抱きしめ合って震えている。

 

 

「これ以上はうっかり加減を間違えそうじゃし、ここまでとしよう。

 良く戦ったぞヒットよ。手に汗握る名勝負であった」

 

 

ゴンッ!!

 

 

鎧人形がヒットを掴んでいた左腕を思い切り舞台に叩きつけた。

土煙が晴れた舞台の上には、ピクリとも動かなくなったヒットが転がっていた。

 

「……レフリー?」

 

『はっ、はいぃっ!ヒノカミ選手の勝利!

 優勝は第7宇宙チームでーーーす!!!』

 

高らかに勝者が宣言されたが、歓声はまったく上がらなかった。

会場全体が冷水を浴びせられたように静まり返っていた。

何が『名勝負』か。ヒノカミは試合開始地点から一歩も動くことすらなかったと言うのに。

 

 

「ばあちゃん、やり過ぎじゃねぇか?」

 

「あのくらいで折れるならここまでよ。

 悟空が再び戦うまでもない」

 

「カカロットとの対応の差が激しすぎるだろ……」

 

「仕方あるまい。彼は第6宇宙の『殺し屋』らしいからな」

 

「……なるほど」

 

信念や誇りはあるようだが、義賊というわけでもない。

金銭で命を奪う輩はヒノカミが嫌いなタイプだ。そう考えれば、殺さなかったのはむしろ甘い。

……いや、悟空の嘆願に加えて『殺したら失格』というルールがあったからか。

仮に彼女が失格になってもモナカが居るので第7宇宙の勝利は変わらないが、彼女は相手が先に違反をしない限りは自分もルール違反を行わない。

 

 

 

「おいビルス!なんだアイツは!!

 第7宇宙の新米界王神じゃなかったのか!?」

 

「ボクにアイツのことを口にさせるな!」

 

「私がお答えしましょう。

 彼女は界王神に就任する前は第7宇宙の地球の神だったのですが、あまりに強くて。

 地球を破壊しようとしたビルスさまと殺し合いになったので、最悪の事態を避けるため強制的に界王神就任となったのです。

 何せもう少しでビルスさまが敗れ、第7宇宙が滅びてしまうところだったのですから」

 

「おいウィス、誤解を招くような言い方をするな!

 ボクはアイツに負けてなんかいない!」

 

「オホホ、確かにそうですね。

 今のところ戦績はビルスさまの方がわずかに勝ち越してますからねぇ」

 

「フン!お前に止められての引き分けが無ければもっと大差がついているんだ!」

 

「は、破壊神と、互角の強さの、界王神……!?」

 

「あの体だと8割が限界だそうですがね。

 あれで元がただの地球人だというのだから、本当に驚きです」

 

「人間!?」

 

別の宇宙には功績や振る舞いで破壊神と対等な関係を築いている界王神もいるにはいる。

しかしそれは少数であり、まして力関係までもが破壊神と対等な界王神など前代未聞。

今までの宇宙の在り方に正面から喧嘩を売るような存在だ。

彼女が専ら喧嘩を売っているのはビルスだが。

 

「……ふざけんな!そんなん反則だ!

 第7宇宙の反則負けだ!!」

 

「ちゃんと先に出場させていいか確認しただろうが!今更反故にするな!

 第一ヒノカミなんざいなくても、セル一人で全部倒せていたんだ!」

 

「そいつも今は地球の神なんだろうが!

 じゃあ人間扱いじゃねぇから失格だろ!

 悟空とベジータって二人だけだったら、絶対に第6宇宙が勝ってた!」

 

「2対5で比較して恥ずかしくないのか!?」

 

ちなみにセルとヒノカミが不参加だったとしても、悟空らに次ぐ強さのピッコロやラディッツや悟飯がいる。

悟飯は学会があったので今日の応援にも参加できていないが、だとしても更にブウがいてクリリンたちがいて17号と18号もいる。

第7宇宙……というか、地球の選手層はとんでもなく厚い。

よほどの失敗をしない限り、勝利は間違いなかっただろう。

それを知らないシャンパは『あの二人さえいなければ』となおも見苦しく抗議を続ける。

 

 

 

 

「うるさいなぁ」

 

 

 

 

「「!?」」

 

聞き覚えのある、そして聞きたくない、忘れられない声が響く。

二人の破壊神は一瞬で動きを止め、錆びた機械のようなぎこちない動きで同じ方向に視線を移す。

 

その先にいたのは神霊のヒノカミと、彼女が肩車をするローブで姿を隠した小柄な何者か。

二人の天使は先んじてその場で跪いた。

 

 

 

「……控え~い!控えい、控えぇ~~い!」

 

頭の上に誰かを乗せたまま、ヒノカミが芝居がかった声を上げる。

 

「こちらにおわすお方をどなたと心得る!

 恐れ多くも全宇宙の頂点、『全王』さまにあらせられるぞぉ!!」

 

「えっへん!」

 

「「ひぃぃぃっ!!!」」

 

ローブをはぎ取り現れた予想通りの人物の姿を見て、先ほどまで争っていた二人の破壊神が抱き合って悲鳴を上げる。

流石は双子、息ぴったりだ。

 

「頭が高い!控えおろぉ~~~う!!」

 

「「「「ははぁーーーーーーっ!!!」」」」

 

「ふふふ~~~ん!」

 

破壊神と、ヒノカミ以外の界王神と付き人が一斉にひれ伏す。

以前ヒノカミから見せてもらった時代劇を真似た一幕が見事に決まり、全王は実にご機嫌だ。

万が一のために柱の影に隠れていた全王の二人の付き人がハンカチを嚙みちぎりそうなほど悔しがっていたが、気付いていない振りをした。

 

 

「ヒノカミが悟空から話を聞いて、ボクがヒノカミから話を聞いたの。

 連絡も無しに別の宇宙同士が衝突するなんて問題だから来たのね」

 

「も、申し訳ございませんっ!」

「わざわざご足労いただき……!」

 

「それどころか勝手に星を入れ替えようとしてるって聞いて、キミたちを消しちゃおうかと思ってたけど……」

 

「「ひぃぃぃっ!!!」」

 

「でも見てたら面白かったから、星を入れ替えたりしないなら許してあげるのね。

 ……それで、キミは何を願うの?」

 

「……へっ?」

 

尋ねられたビルスは思わず聞き返してしまう。

 

「超ドラゴンボールを、何に使うの?

 良くないことだったらキミを消さなきゃいけないから」

 

「そっ、それはっ!そのっ!!」

 

正直に言えば、ビルスはまだ願いを決めていなかった。

勝負を受けたのも願いを叶えるためではなく悟空にけしかけられてと、シャンパの挑発が鬱陶しかったから。

しかしここでヘタなことを言えば命がない。なんとか全王好みの、かつ理由に納得ができる願いをこの場で絞り出さなければ。

 

「……だ、第6宇宙の地球を蘇らせようと思っていますっ!!」

 

「「「!?」」」

 

「へぇ……なんで?」

 

「今回の一件、第6宇宙の地球が滅びていることが発端ですのでっ!

 第6宇宙の地球が復活すれば、争いをする理由もなくなりますしっ!」

 

「ふ~~~ん……それはいいね!」

 

「……ほっ」

 

どうやら全王の不興を買わずに済んだようだとビルスは安堵の息を漏らした。

そして全王に慮ってとは言え神さまらしい真っ当な願いが出てくるビルスに対し、両宇宙の人間たちが感心しわずかに評価を上げる。

 

「じゃあボクは帰るのね。

 楽しかったからいいけど、今度何かやるときはちゃんと話を通してね」

 

「「はいぃっ!!」」

 

話をしている内に全王の付き人が近づいてきたので、ヒノカミは彼らに抱えていた全王を預ける。

 

「「バイちゃ」」

 

そして3人は姿を消した。

 

 

 

「「「……はぁっ」」」

 

ビルスたちは一斉に脱力し息を荒げる。

 

「……ヒノカミ、貴様良くも……!」

 

「後で知られたら確実に消されておったぞ貴様ら。

 特に、星の入れ替えなんて成功させていたならな」

 

「うぐっ!」

 

「そうだ!元は貴様のせいだぞシャンパ!」

 

「人のこと言えんじゃろうが。

 ……しかし、願いについては評価してやる」

 

「へ?」

 

「まさか出まかせだったなどと言うまいな?」

 

「そんなわけがあるかっ!

 全王さまにまで疑われん内にさっさと願いを叶えるぞ!」

 

 

6つの超ドラゴンボールはビルスのものとなり、そして彼らが試合をした『名のない星』こそが7つ目の超ドラゴンボールであったと発覚。

惑星サイズの球から呼び出された超神龍は、まさに星をも一飲みにするほどの巨大さだった。

ビルスは宣言通り第6宇宙の地球を復活させ、戦士と関係者たちはそれぞれの帰路に就いた。

 

 

 

今日の一件が、後に全宇宙を巻き込む大事件に発展するとも知らずに。

 

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