『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第39話 『OMT』

これは一人の女の話。

 

今のような平和などない、力ある者が全てを支配していた時代。

そこに生まれた少女は無個性だった。

抗う力を持たない、搾取されるだけの弱者。

家も家族も幼くしてすべて奪われた。

 

しかし少女はそれを受け入れることを良しとしなかった。

過酷な試練を課して肉体を鍛え上げ、手当たり次第に知識を吸収し、己を通すための力を求めた。

やがて少女は無個性ながら、襲い来る悪意を悉く切り伏せる強者となった。

 

やがて少女は当時のOFA継承者の目に留まる。

研鑽によって培われた武術の腕前と、AFOを前にしても物怖じせぬ胆力を認められ、少女は次のOFA継承者となった。

少女は先代から受け継いだOFAを鍛え上げ、次の後継者へと託し、AFOに挑み、そして散った。

少女の物語はそこで終わりとなるはずだった。

 

「しかし無個性と思われていたその小娘にも、個性が宿っていたのじゃ。

 ……生前には決して気づくはずもない個性が。

 『ワン(O)フォー(F)オール(A)』にあやかってつけられた、その個性の名は」

 

 

ワン(O)モア(M)タイム(T)

 

 

「『ワン・モア・タイム』……『もう一度』?」

 

「そう、もう一度。もう一度やり直す個性。

 即ち『生まれ変わる』個性じゃ」

 

「「!!?」」

 

OFA継承者だった女はAFOに殺された後、別の人間に生まれ変わっていた。

しかし当初はそうであると気づかず、夢に見ず知らずの他人の記憶が流れることを不気味に思っていただけだった。

 

少女が全ての記憶を取り戻したのは15歳の頃。

ヴィランに襲われ、家族を皆殺しにされた時。

奇しくも前世にて同様に目の前で家族を奪われていたこと、そして死を目前に突き付けられたことで前世の記憶がフラッシュバックし、自分が生まれ変わった存在だと気づいた。

OFAはもうないが、前世で培った戦闘経験を思い出した彼女は襲い来るヴィランを返り討ちで皆殺しにした。

 

記憶を取り戻した少女は前世の自分の死後に何があったのかを確かめるため、過剰防衛で警察に捕まらないよう失踪した。

そして辿り着いたのが、自分が次代のOFAとして選んだ者がすでにAFOに殺されていたという事実。

 

少女はその次のOFA継承者を探し合流しようとした。

しかしどれだけ探してもそれらしき人物が見つからない。

当時の少女が知るはずもなかったが、次のOFA継承者はAFOから身を隠し己を鍛えるために、アメリカへと渡っていたからだ。

 

少女は恐ろしい可能性に行きついた。

もしやOFAは途絶えてしまったのではないか。

AFOを倒す力は失われてしまったのではないかと。

だとしたら、それは前世でAFOを倒せなかった自分の責でもある。

OFAに関わる存在、唯一の生き残りとしてAFOを倒さねばならないと決意した。

 

少女は遅まきながらも自らを鍛え、月日を重ねて成長し、大人になった。

無名のヴィジランテとして活動しながらAFOの足取りを追い、辿り着いた先でAFOに戦いを挑んだ。

 

しかし付け焼刃でAFOに勝てるはずもなく、女は追い詰められる。

もし『OMT』がまだ自分の中に残っており、それを奪われてしまったら、AFOは本当に不滅の存在になってしまうかもしれない。

だから女は隠し持っていた爆弾で自爆し、AFOごと心中しようとした。

当然AFOがその程度で死ぬはずもなく、ただの無駄死にとなった。

 

気付けば女はもう一度少女になっていた。

一度だけかもしれないと思っていたので、二度目の生まれ変わりが行われたことは予想外の幸運だった。

 

今世では幼い内に前世の記憶を取り戻していた。

ならば今度こそAFOを倒すと誓い、長い年月をかけて体と個性を鍛え続けた。

 

そしてある日、少女はモニター越しにOFA継承者を見つけた。

大災害の起きた街に現れ、たった一人で数えきれないほどの人々を救うヒーローの姿を。

 

後継者の傍には先代OFAの盟友であり、かつての少女のことを知る人物もいた。

ヒーローになった女は彼らに接触し、自分の正体を明かし協力を申し出た。

荒唐無稽と疑われたが、先代の関係者が少女を覚えていたため、彼の仲立ちにより受け入れられた。

 

女はOFA継承者のサイドキックとなり、先代の盟友やもう一人のサイドキックと共にAFOに立ち向かった。

代を重ねて鍛え上げた剣術と、二度に渡るAFOとの戦闘経験、そして『炎を操る』個性を使い。

 

「6年前にオール・フォー・ワンを打ち倒したのじゃ」

 

「…………」

 

「……おい……つまり、アンタが……!!」

 

「いかにも。我が名は『六道 リンネ』。

 六代目ワン・フォー・オール継承者の生まれ変わりじゃ」




・六道 リンネ

6代目OFA継承者。
物心ついて間もなくヴィランに家族を殺害され、隠遁生活をしていた剣術家の祖父に引き取られた。
戦う力を求めたが無個性と思われていたため、体を鍛え祖父から剣術を学んだ。
その祖父もまた彼女が成人する前にヴィランに殺されている。

・個性『ワン・モア・タイム』

『生まれ変わる』個性。
いつ、どこで、誰に生まれ変わるかは選べない。
本来は一度だけ生まれ変わる個性だったが、OFAと混ざり合ったことにより、『個性を引き継いで生まれ変わる』個性へと変化した。
『一度だけ生まれ変わる』個性を来世に引き継ぐ形となり、二度目の転生が行われた。

六道リンネがOFAを受け継がなかった世界線では、一度だけ転生が行われそこで途切れている。
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