『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ハオの妹でもあったヒノカミは、実はザマスの考えにある程度理解を示すことができます。
彼との会合をヒノカミの本音を語る機会にしてみました。


第135話 ザマス

第10宇宙の界王神ゴワスの弟子に、ザマスという男がいた。

彼は能力は高いが真面目過ぎる性格と、神を特別視し人類を見下す傲慢な考えを持っていた。

彼の師であるゴワスは積極的に下界に干渉しようとせず、悪を滅ぼすのは破壊神の役目だと、ザマスに無暗に力を振りかざすべきではないと諭した。

しかし納得できない彼の中に鬱屈した感情が蓄積されていくだけだった。

 

そんな時、第7宇宙の界王神が代替わりしたと聞いた。

そしてその界王神は積極的に下界に関わり、多くの悪を滅ぼし、信仰を得ているという。

もしかしたら自分の想いを理解してくれるかもしれない。

そう考えたザマスはゴワスに頼み、彼女との面会を求めた。

これも弟子の成長に繋がるだろうとゴワスは快諾した。

 

そして出会った第7宇宙の界王神ヒノカミは一目見ただけでザマスの思想を見抜いた。

互いの関係者に一言断りを入れ、『二人きりで話したい』とその場を離れた。

直後、ヒノカミは掌を合わせ領域を展開。その内外を完全に遮断した。

破壊神や全王ならこの領域を消し飛ばせるだろうが、領域が維持されている限り内側のことは絶対に漏れないという。

 

ヒノカミはザマスに、己の考えを口にするように促した。

それを聞いても絶対に口外したり、責めることはしないと約束した。

ザマスは彼女の実績からその言葉を信じ、全て吐き出した。

『人類は愚かだ。存在するべきではない。この宇宙から抹消すべきだ』と。

次いで、ヒノカミは具体的にどうやって行うかを尋ねた。

ザマスはもちろん、宇宙全ての人類を掃除して絶滅させると答えた。

 

「それから?」

 

「……は?それから、とは?」

 

「いや、それからじゃよ。人類は元は何だった?」

 

地球人は元は猿だった。

他の宇宙人も、元は獣だった。

そして宇宙には植物や岩石、ガスから進化した知的生命体もいた。

 

「今いる人類を皆殺しにしたとて、数万年、数億年すればまた新たな種が生まれるぞ?

 お主はそれをどうするつもりでいる?」

 

「……!?」

 

「この広い宇宙の全ての星を、また人類が誕生しないか監視し続けるか?

 永遠にじゃぞ?できるのか?少なくとも儂にはできぬ。

 それすらも防ごうとするなら人類どころか、獣も、木も、石も、空気でさえも、全て跡形もなく消し去らねばならぬ。

 じゃが見守る世界そのものを消しては、神の存在意義がない」

 

「た、確かに……では!超ドラゴンボールはいかがでしょうか!

 どのような願いも叶うと聞きます……それで未来永劫、宇宙に人類が存在しないよう願えば!」

 

「なるほど。確かにそれならばお主の理想の世界が来るかもしれん。

 じゃがドラゴンボール頼りで願いを叶えて、お主は自分が『神』だと胸を張って言えるのか?」

 

「ぐ……」

 

「認めよ。神はお主が思う程全能ではない。

 どこかで妥協し、線引きをせねばならぬ」

 

「……あなたはどこで線引きをしているというのですか?」

 

「相手が『救いようの無い悪』であるかどうかじゃ。

 この眼で見て、行いを見て、魂を見て、一人ずつ判断しておる」

 

「……それでは時間がかかりすぎる。

 いや、悪を裁いている間に新たな悪が生まれてしまう。

 永遠に終わらない!」

 

「その通り。儂は自分の分身を生み出し操る能力を駆使しておるが、全く持って時間が足りぬ。

 ……しかし儂は、それでも己の判断が正しかったのか自信がない。

 本当に殺さねばならなかったのか、過ちではなかったのかとな」

 

「な……そこまでしてまだ確信が持てないと!?」

 

「儂は儂が信じた正義を貫いてきた。そして人の枠を超え、神となった。

 儂自身が神となった今、神もまた不完全であると知った今、儂の正義が正しいと一体誰が保証してくれる?」

 

「……!?」

 

「白状しよう。儂は天になど立ちたくなかった。

 天に立ち地を照らす存在となった儂を、照らし導いてくれる光はもうない。

 破壊神やお主の師、儂を見て、『神だから正しい』などという考えは幻想と気付いたはず。

 しかし神が過ちを犯しても、それを指摘し止めてくれる存在はおらん。

 だからこそ神は『正しくあらねば』ならんのじゃ。

 己が正しいか、常に己を疑い続けなければならぬ。

 己が己で在り続けるために、己の行いを顧み続けなければならぬ」

 

直後、ヒノカミのテリトリーの内側に大量の画像が現れ、次々と上から新たな画像が表示される。

何万……いや、ひょっとしたら何億もの数が。

顔写真と文章。まるでプロフィールのような。

 

「これは?」

 

「儂がこの宇宙で殺してきた者たちじゃ。

 名前と、顔と、経歴……儂に殺されるまでのな」

 

「な!?」

 

今までも可能な限り記憶してきたが、バビディのように抜けが生じることもあった。

なので大界王神に就任した際に閻魔大王に頭を下げ、ヒノカミがこの世界に来てから殺した者全ての情報を譲ってもらった。

そして誰かを殺すたびに自分に殺された犠牲者を新たに記憶し続けている。

今も彼らの目の前で新たな画像が増え続けている。

こうしてザマスと対話している今も、宇宙に散った彼女の分霊が悪と見なした人間を殺し続けている。

 

「これだけの数を……全て記憶して……!?」

 

「……正直な、しんどい。

 しかし今更『消えたい』などと言えぬ。

 『太陽()』とは『希望の象徴』なのだから。

 天の光が無ければ世界は闇に閉ざされる。陰るだけでも民は惑う。

 常に正しく輝き、世界を照らし続けねばならぬ。

 己の身を燃やして燃やして燃やし続けて、燃え尽きる瞬間まで。

 たとえ光の内側に、どれだけの闇と傷を抱えようと……!」

 

「…………」

 

「じゃから儂も、お主に望みを明かそう。儂の望む世界とは……」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

ヒノカミとの会話を終えたザマスは師であるゴワスに、自分を破門するよう願い出た。

己は界王神に相応しくない、界王神にはなれないと。

弟子の突然の心変わりに困惑したゴワスは理由を尋ねたが、ザマスは決して口を割らなかった。

だが疲れ切っているようで何かを悟ったような彼の穏やかな笑顔を見て、ゴワスはやがて追及を辞めた。

 

ザマスの耳には不相応な神となった愚かな人間の言葉が今も反芻し続けている。

 

 

 

「儂が望む世界とは『儂を必要としない世界』。

 『導きの光などなくとも、人々が己で輝き歩む世界』。

 未だ兆しは見えず、しかしいつか訪れると信じて。

 その瞬間まで儂は儂を貫き通す。それが儂の正義であるのだから」

 




神となってからのヒノカミの在り方は、ほぼオールマイトと同じです。
規模も負担も比べ物にならないくらい大きいんですが、肉体的にも精神的にもそれ以上に強すぎるため成立してしまっています。


ヒノカミがいる以上、仮に強行したとしてもザマスの計画は失敗します。
全ての宇宙の界王神を殺すことで全ての破壊神を消去した彼ですが、悟空の体を奪ってもヒノカミには勝てません。ビルスとウィスも残ります。

悟空ではなくヒノカミの体を奪おうとしても、ヒノカミにはそもそも体がない。
体ではなく力を奪っても特殊過ぎて扱いきれないので、第7宇宙に揃ったヤバイ連中に討伐されておしまいです。
何よりヒノカミ被害者の会は、必要とあらば彼女を殺すことを躊躇わないので。
何らかの犠牲は出るでしょうが、本作ではどう転んでもザマスが勝利する未来はありません。
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