『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作にて力の大会後に『消えた宇宙の復活』を願ったことで大神官が『第7宇宙の人間レベルが上がった』と発言していることから、善行を行うことは人間レベルが上がることに繋がると推測。
であれば逆に悪行を重ねる者は『人間レベルが低い』ということになるため、その前提で話を進めています。


第136話

 

「こちら、今回の分となります」

 

「ご苦労様です」

 

ヒノカミは全王の宮殿の前で、大神官に第7宇宙での活動報告書を提出する。

全部で12ある宇宙の中でも、こうして頻繁に大神官のもとに顔を出し、ちゃんとした報告を行う神はヒノカミだけだ。

他の神々は宮殿にいる全王と顔を合わせることを恐れて呼び出されでもしない限り近づかないので。

 

ヒノカミは能力があり仕事も真面目で、全王の友人として振舞いつつも礼節を忘れない。

頻繁に顔を突き合わせれば大神官も多少は友好的になろうというもの。

 

大神官もある程度は天使たちから報告を受けているが、彼らの仕事は主に破壊神の付き人。

第7宇宙のビルスは破壊神の中でも特に問題児なので、ウィスは多忙であり彼からの報告はいつも断片的だった。

対してヒノカミは積極的に活動しており、分身と記憶力もあって情報が多く正確、内容も良くまとめられている。

紙の束をペラペラとめくり目を通した大神官は満足そうにうなずく。

 

「……確かに。第7宇宙は成長著しいですね」

 

「そうなのですか?」

 

「まだまだ下から数えた方が早いのですが、僅か百数十年で人間の平均レベルが1以上増えたというのはかつてない偉業ですよ。

 全王さまもお喜びです」

 

「……我ながら、やり方は酷いと思いますが……」

 

「……まぁ、元が酷すぎたというのもありますがね。

 第7宇宙は破壊神がアレなので……」

 

「アレですからなぁ……」

 

あれでも幾分マシになって来たと自分を納得させようとして諦めた二人は揃ってため息を吐く。

 

全王の方針として、宇宙の人間の平均レベルは高い方が良いと考えている。

その意向を受けて神々が積極的に活動している宇宙のレベルは非常に高く、逆に人間の自主性を重んじたり単純に神が怠けていたりする宇宙のレベルは非常に低い。

第7宇宙はビルスが怠け者。とにかく仕事をしない。

お陰で界王神が破壊神の代わりもせねばならず多忙極まる運営になっていた。

界王神自身もどちらかと言えば自然に任せる方針だったとはいえ、第7宇宙のレベルが低くなるのはやむを得ないだろう。

 

しかしヒノカミが神として活動するようになった百数十年前から宇宙の悪党を次々と滅するようになり、大界王神になってからは更に規模が大きくなり、端的に言えば『分母』が一気に減った。

そして地球という魔境に住まう少数の戦士が桁外れの勢いで成長し『分子』の合計自体は増えた。

結果、『平均』レベルが著しく上昇した。数字のトリックという奴だ。

 

「……実際の所、宇宙の力関係と成長度合いはどれほどなのですか?」

 

「第1宇宙がダントツですね。次いで第12宇宙が急成長。

 他は第7宇宙を除けば大きな変化はなく横ばいですが……全体レベルは減少傾向にありますね。

 嘆かわしいことです」

 

 

 

「ふ~~ん。全然成長してないのね」

 

「おや、全」

「全王さま」

 

ヒノカミを遊びに誘おうと思って宮殿の入り口まで来ていた全王が二人の会話を聞いていたようで、話に混ざって来た。

 

「それじゃあ沢山あっても意味ないのね。全部観察するのも面倒だし」

 

「では、また少し減らされますか?」

 

「そうだね。見込みのないのは消しちゃおう」

 

まるで不要になった日用品をゴミとして捨てるような気軽さで、全王は決断する。

そして消えるのは宇宙と、無数の命だ。

 

 

 

「お待ちを、全王さま」

 

 

しかし彼を肯定するものしかいないはずの宮殿に、今日は異物が紛れ込んでいた。

 

 

「……何か文句あるの?」

 

友人としてではなく、王として冷たい視線を向ける全王。

しかし忠臣はひるむどころか笑みを浮かべて続ける。

 

「文句と取られるかどうかは、全王さま次第。

 ですが2つほど申し上げたいことがございます」

 

「……言ってみて」

 

「では」

 

跪いていた一人の神が許可を得て立ち上がる。

 

 

「まずは一つ目。人間とは欲深く、向上心が強い。

 よほどの事態でも起きぬ限りは放っておけば勝手に成長するものです。

 だというのに質が低下しているというのならば、その原因を先に取り除くべきではありませぬか?」

 

「原因?」

 

「『神々(われわれ)』です。

 『人間を成長させるべし』という全王さまのご意向を受けておきながら、それを成すことが出来ぬ無能な統率者こそが消えるべき存在。

 何より相応の地位と権威を持つ者は、いざという時真っ先にその首を差し出すためにいるのですから」

 

「「……」」

 

「そして二つ目。……全王さま、お忘れではありませんか?」

 

「何を?」

 

「……『今度宇宙の面々を集めて武道会を開こう』と、悟空と約束していたではありませんか」

 

「……あ!」

 

既に1年以上前になるが、第6宇宙と第7宇宙の破壊神選抜格闘試合を観戦した後で全王がふと口にしたことだ。

その場に居合わせた悟空が是非にと乗り気になり、全王は彼と指切りして約束までしていた。

 

「宇宙を消しては武道会が開けませぬ。

 神々を消しても戦士が集められませぬ。

 ……駄目じゃぞ、全。約束はちゃんと守らねば」

 

「えへへ~、そうだった。ごめんね」

 

友人としての気の抜けた立場に戻った二人はにこにこと笑う。

大神官も笑顔を見せるが、全王と共にこの場に足を運んでいた二人の付き人は冷や汗が止まらなかった。

 

「じゃあ早くやろう!」

 

「畏まりました。では早速宇宙の神々に連絡を……」

 

「その前に、どんな大会にするか決めておかぬか?

 折角じゃし面白いイベントにしたいじゃろ?」

 

「おや、案があるのですか?」

 

「地球にて儂主催で何度か武道会を開いております。多少はノウハウはあるかと。

 後は優勝した者への褒美があれば良いのですが。

 悟空のような一部はなくても励みますが、大半は何かあった方が気合が入ります」

 

「ふ~~~ん……ねぇ、狙ってやってるんでしょ?」

 

「げらげらげら。さぁて、なんのことやら」

 

先んじて大神官より全ての宇宙に召集を予定していると連絡を飛ばし、大会の要綱がまとまった1時間後に再通達。

全王の宮殿に12人の破壊神と11人の界王神が付き人の天使を伴い集まった。

 

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