『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第137話 力の大会・前哨戦

 

「皆、良く集まってくださった。

 どうか顔を上げてくだされ」

 

大神官により全王の宮殿へと転移させられていた神々は初めから頭を下げ跪いていたが、一部の者以外は聞きなれぬ女の声に反応しチラリと視線を向ける。

少し前に第7宇宙の界王神となった、ヒノカミという女だ。

そいつが何故か、堂々と全王と大神官の前に立っている。

 

「お初にお目にかかる方も多いと思うので、自己紹介させていただく。

 第7宇宙の新たな界王神となった、ヒノカミと申す。

 今回の招集に当たり、司会進行を全王さまより任された」

 

一同が全王の方を向くが彼の表情は変わらず、大神官が頷いたため事実であると理解したようだ。

 

「儂の立場は皆と対等。この場では敬語も遠慮も必要ない。

 今回の会議に関する質疑は儂に尋ねてくだされ。全て儂がお答えする。

 全王さまが決定した事への反論は受け付けられぬがな」

 

ヒノカミが手を叩くと、全王の宮殿の広間に巨大な円卓が現れた。

座席は36。12宇宙の界王神と、破壊神と、天使のために用意されたことは明らかだ。

率先してヒノカミが『7』と書かれたプレートの置かれた座席に座る。

神々は全王の表情を伺うが何も言うつもりがないようだと判断し、無言でそれに続く。

 

「……おや?ベルモッド殿。そちらの御仁は?」

 

ヒノカミはピエロのような姿をした第11宇宙の破壊神の後ろに立つ、巨漢の男のことを尋ねる。

ベルモッドはちらりと全王の方を向いた後、問題ないと判断し男を紹介する。

 

「あぁ……実は近々引退を考えていてな。

 次期破壊神候補としてこの男を育成中だ。

 これも経験と思い同席させることにした」

 

「トッポです。よろしくお願いいたします」

 

「こちらこそ。ではトッポ殿はそちらへ。

 もう円卓に並ぶつもりがあるなら席を用意するが?」

 

「いえ、こちらで十分。お気遣い感謝します」

 

ヒノカミは第11宇宙の席の少し後ろに彼の体格に合わせた椅子を一つ作り出した。

トッポは感謝を告げた後、他の神々全員が着席したことを確認してから腰を下ろす。

 

 

「……さて、皆の貴重な時間をいただいていることもあり、手早く進めさせていただく。

 知る者もおるかもしれぬが、少し前に我が第7宇宙と第6宇宙はそこに所属する人間の選手を集めての格闘試合を行った。

 ……ちなみに事の発端はどっちかと言えば第6宇宙側が問題じゃ。

 すでに全王さまの赦しも得ておるので、あまりビルスを責めんでやってくれ」

 

全宇宙規模の問題児と知られているビルスを神々が一斉に睨みつけるが、ヒノカミがフォローを入れる。

ビルス嫌いは相変わらずだが、八つ当たりや冤罪を押し付けるのは彼女の望むところではない。

 

「そして試合の場には全王さまにもお越しいただいていた。

 全王さまはその催しをお気に召したらしく、この度全宇宙の戦士を集めての格闘試合……『力の大会』の開催をご希望である」

 

「全宇宙規模の、格闘試合……!」

 

「それで、お前が音頭を取ってるってわけか?」

 

「いかにも。ご存知の方もおるかと思うが、儂は全王さま方とは懇意にさせて頂いておる。

 第7宇宙の大会を経験した者として、此度の大会にも意見を出す立場となったのでな」

 

「具体的なルールは?」

 

相手が全王や大神官ではなく同格の神ならば怖気づく必要はないと、神々も積極的に言葉を発し始めた。

 

「前哨戦と、本戦に分けられる。本戦の詳細は後ほど説明しよう。

 そして前哨戦は……『全宇宙の破壊神でのバトルロイヤル』じゃ」

 

「「「「「「!?!?!?!?」」」」」」

 

各宇宙の破壊神が一斉に立ち上がり、ヒノカミに視線を向けた。

 

「ちょっと待て!人間同士の試合じゃなかったのか!?」

 

「本戦ではな。しかし主ら破壊神も各宇宙の代表者。

 宇宙同士の競い合いの機会なのだから是非参加するようにとのことじゃ。

 とは言え、破壊神を人間と同じ試合に混ぜるのはあまりに力の差がありすぎる。

 よって破壊神の試合は『前哨戦』として区別させていただいた」

 

「なんと……これは話が違ってくるぞ……!」

 

「広く頑丈な舞台を用意する。

 殺生と術による飛行、武器や道具の使用は禁止。舞台から落ちた選手は失格。

 場外に出さない限りは気絶していようと失格にはならぬので注意せよ。

 各々の裁量に任せるが、全王さまが眉をひそめるような卑劣な真似も避けるように。

 一応100タックという制限時間を設けたが……そこまで長引くことはあるまい。

 最後に舞台の上に残っていた選手が優勝じゃ。

 そして前哨戦の開始は……今より20タック後じゃ」

 

「「「な!?」」」

 

20タックを地球の時間に換算すれば、僅か10分。

あまりに突然過ぎると非難の声が上がるのも当然だろう。

 

「すまん。儂もそう思うが、全王さまが待ちきれぬようでな」

 

「マズイ、ここ何十年も戦闘のトレーニングなんてしてないぞ……!?」

 

「そして優勝者には褒美がある。全力で取り組むように」

 

「……やるしか、ないか」

 

ここで手を抜くような神は全王が消してしまうかもしれないが、敢えてそれを伝えて委縮させる必要もないだろう。

 

「大まかには以上じゃ。何か質問は?」

 

「武器の使用はダメっつってたよな?

 能力で作り出した武器も駄目か?」

 

「いや、そちらは問題ない。誤解を招いたことを謝罪する。

 そのルールは破壊神本人の実力で戦ってほしいという意味じゃからな。

 強力な道具に頼る真似はしないでくれということじゃ」

 

「おい……もし死んじまったらどうなる?」

 

「大神官さまのお力を借りて、必ず蘇生する。怪我についても同様じゃ。

 だが重ねて言うが殺生は禁止じゃぞ。……他に質問は?」

 

「質問はもうねぇよ……言いたいことならいくらでもあるがな……!」

 

「くけけけけけ」

 

 

やがて大神官が造り出した巨大な平面の舞台の上に、12人の破壊神たちが並び立つ。

界王神と天使は宇宙ごとに分けられた小さな浮島の上で自分の宇宙の破壊神を見守っている。

ただし第7宇宙の浮島はウィス一人だけ。

界王神ヒノカミは変わらず、大神官と全王の傍にいる。

 

 

「それでは『力の大会』前哨戦、はじめっ!!」

 

 

「「「うぉぉぉおーーーーっ!!!」」」

 

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