ヒノカミは特殊な事例だが、基本的に界王神は全員『芯人』という種族だ。
頭髪が頭頂部に集中しており、髪の色は白。しかし肌の色は様々で耳が長い。
対して破壊神は種族に縛りがない。
というより、第11宇宙のベルモッドがトッポを育成していたように現在の破壊神が自分の宇宙の戦士に次の破壊神の座を託すのだ。
第7宇宙のビルスもまた、悟空とベジータには破壊神としての素質があると考えている。譲る気は毛頭ないが。
話を戻すと、だからこそ各宇宙の破壊神は種族もバラバラで戦い方も様々。
ただ一つ共通しているのは『それぞれの宇宙を破壊できる』ほどの戦闘力を持っていること。
全王の宮殿、大神官の作り出した舞台でなければ戦いの余波ですべてが跡形もなく消し飛んでいるだろう。
時間にすれば僅か数十分、しかし当人たちにとっては長い長い激闘の末に、最後に舞台に立っていたのは。
「……そこまで!勝者は第7宇宙の破壊神、ビルス!」
「はーーっ、はーーーーーーっ!!
どうだぁぁぁあっ!!ボクの、勝ちだぁぁあーーーーっ!!」
元々ビルスは12人の破壊神の中でも特に戦闘力に秀でていた。
そして近年では同格の相手であるヒノカミと本気の喧嘩を繰り返していた。
各宇宙の絶対者であり競い合う相手もおらず、腕が鈍るばかりだった他の破壊神たちとの違いはそこだろう。
影の立役者であるヒノカミは、露骨に不満そうな顔をしていたが。
散々念を押していたため死者は出なかった。
場外となり浮島に転送された破壊神たちは各宇宙の天使の手ですでに治療され回復している。
地力で第7宇宙の浮島に戻ったビルスもウィスの力で全快した。
ヒノカミは空間を元の形に戻そうとしていた大神官に視線を送り、そのままにしてもらう。
ここから起こり得る騒動を思えば、各宇宙ごとに分かれたままの方が安全なので。
「お疲れの皆さまにはしばしの休息を……と言いたいところじゃが時間が惜しい。
続いて、力の大会・本戦のルール説明を行う」
「おい!優勝したボクには褒美があるんだろ!?」
「わかっておる……それにも関わる話じゃ。
ここよりしばらくは質問を待っていただきたい」
強引に話を進めようとするヒノカミに神々は厳しい視線を向けるが、彼女はそれを無視して続ける。
「力の大会・本戦の主役は各宇宙の人間となる。
よって……第1、第12、第8、第5宇宙の方々は出場は控えていただく」
「「「「!?」」」」
ヒノカミは掌を叩き、頭上に巨大な画像を表示する。
各宇宙の人間レベルの推移を現す折れ線グラフだ。
「御覧の通り、先ほど挙げた4つの宇宙は人間の平均レベルが7を超えておる。
大会に参加しても間違いなく勝ち残るじゃろう。故に参加する必要がない」
「ど、どういうことだ?」
「最も優秀な宇宙を決めるのではないのか……?」
質問ではなく呟きだろうが、ヒノカミは神々の言葉に反応し応えた。
「否。力の大会とは『力ある』勝者を決めるものではない。
……『力無き』敗者をふるい落とすものである」
「ふるい落としだと!?」
「先にこの大会の、敗者への罰を明かそう」
「罰!?」
ヒノカミはもう一度大きく掌を叩き、音で神々の喧騒を黙らせ、宣言する。
「力の大会・本戦にて敗退した場合……その宇宙の『界王神』と『破壊神』には消滅していただく」
「「「「「なんだとぉっ!?」」」」」
絶叫と共に8つの宇宙の神々が声を上げ、ヒノカミに怒号を浴びせるが。
「黙れ」
「「「!?」」」
彼女は臆するどころか怒気を滲ませて冷たい声で返す。
「このグラフが見えるじゃろう。
先に挙げた4つの宇宙の神々は見事高いレベルを維持し、なおも成長を続けられておる。
対して貴様らの宇宙はどうなっておる?
……どこもかしこも下がり続けておるではないか!
『人間レベルを上げろ』という全王さまのご命令を知らぬわけではあるまい!!」
「う……ぐ……!」
「全力を出しておらぬというなら怠慢!
全力を出してこれなら無能!
首を挿げ替えられるには十分な理由であろうが!」
「てめぇ、新米の癖に何を偉そうに言ってやがる!
第7宇宙もレベルは低いじゃねぇか!」
「そう、儂は新米じゃよ。……しかしこれを見てもらおうか」
数千年単位だったグラフの表示を切り替え、ここ百年の推移のみを拡大して表示する。
「な……無茶苦茶、上がってる……!?」
「儂が星の神として活動を始めたのが、丁度この辺りじゃ。
そして数年前に界王神となってからも積極的に活動を続けてきた。
この成長が儂の成果であることは全王さまからも認められておる。
故に……第7宇宙は人間レベルが規定に達していないため力の大会には参加するが、仮に敗北しても『界王神ヒノカミ』と『破壊神ビルス』は消滅を免れることとなっておる」
「!?汚ねぇぞ!!」
「何を言う。これはふるい落としと言うたであろう。
すでに実績を示している儂は最初から対象外じゃよ。
大会の取り決めの立場に立つことが許されていたのもだからこそ。
そしてビルスが除外されるのは、これが先ほどの前哨戦の褒美だからじゃ。
『戦闘力』という力を示し、己が破壊神として優秀であると証明したのじゃからな」
「た……助かった……!」
「前哨戦の試合開始までに時間を設けなかったのも、罰と褒美の説明を後回しにしたのもそのためよ。
ちゃんと普段から己を鍛えているか、上の指示に本気で取り組む姿勢があるかの判断基準とした」
「くそっ、そういうことかよ……!」
「そして力の大会とは、本来即座に消されるべき貴様らに全王さまが与えられた、最後のチャンスということじゃ。
貴様らが優秀な神でありそれぞれの宇宙を育て上げてきたと自負するならば、己の宇宙の人間たちの『力』で示し、己がこの世界に有用であると示してみせよ!」
ヒノカミは続いてもう一度掌を叩き、画像を切り替える。
力の大会・本戦のルールが描かれたものだ。
「参加者は、各宇宙より最大10名。破壊神の参加は不許可とする。
基本ルールは前哨戦と同じじゃ。80名が十分に戦える広さの舞台を用意する。
先ほど挙げた違反行為については発覚次第即座にその宇宙全員が失格となる。
なお、飛行を禁止する点はあらかじめ飛行の術を使用できぬよう封じておく。
また術ではなく、身体的特徴により飛行ができる場合は違反に当たらぬとする」
「「「…………」」」
「制限時間が経過した際に生き残っているメンバーの数が多い宇宙、あるいは制限時間前に最後の一人となった場合その者が所属する宇宙が優勝となる。
さらに、生き残った者の中から全王さまが最優秀選手を選出なさる。
その者には第6・7宇宙の試合の勝者と同じく、超ドラゴンボールの使用権が与えられる。
よって後ほど二つの宇宙より強制的に超ドラゴンボールを回収する。
……言うまでもないが、願いは参加した選手のものじゃ。
破壊神や界王神が選手を脅迫し権利を奪い取ることは禁ずる」
「……チッ」
「大会の場所はどの宇宙にも属さぬ『無の世界』の特設ステージ。
設営は大神官さまに、転送は天使の方々にお願いする。
開始時間までに選手と神々はそれぞれの天使のもとに集合しておくこと。
そして大会開始時刻は、今よりおよそ10チック(約80時間)後」
「なんだと!?あまりにも短すぎる!!」
「それもまた、お主らの能力を見るためじゃ。
『この短時間でどれだけ優秀な戦士を集められるか』。
つまりどれほど己の宇宙の民を知っているか、彼らからの人望があるか、彼らを説得する力や交渉材料を持っているかをな」
これがもし『敗れれば己の宇宙が滅びる』となれば説得も容易だっただろう。
しかし負けても消えるのは神々だけ。
つまり、宇宙に住まう民にはあまり影響がない。
精々新しい神々がどのような方針を打ち出すかが気になるくらいだ。
ヒノカミは神々をぐるりと見渡し反応を確認。
狼狽える者ばかりだがそうでない者もいた。彼らの様子から、ヒノカミは一言付け加える。
「……最後に念を押しておく。参加できないのは破壊神のみ。
『界王神』は参加可能である」
「「「なにっ!?」」」
「破壊神に『前哨戦』という別の機会を与えておきながら、界王神には本戦のみというのは不公平じゃからな。
戦闘力という形で己が有能であると示せるならば参加するが良い。
……無論、儂も第7宇宙の界王神として本戦に参加する」
「っ!?馬鹿野郎、ふざけんなっ!
『破壊神が強すぎるから本戦に参加不可』っつったのはてめぇだろうが!!」
「シャンパ……?」
「なのに『破壊神ビルスと互角の強さ』のテメェが参加するなんざ辻褄が合わねぇだろうが!!!」
「「「「「!?!?!?!?」」」」」
第6・7宇宙の試合は各宇宙の神々が視聴できる『神tube』に投稿されていたが、どうやらヒノカミの戦いをちゃんと見た神はこの場にいなかったようだ。
直接対峙した、第6宇宙を除いて。
「……げげげげげげげげげげ!!」
ヒノカミの口が三日月のような弧を描き、己の力を開放する。
先ほどの全て破壊神の頂点に立ったビルスと、同等の力を。
「これは……我々よりっ……!?」
「馬鹿な、界王神が!?」
「『負けても消されぬから』と手を抜くような真似が許されるはずもあるまい?
そんな考えでは儂も消されてしまうわ。
我が宇宙の勝利のために、全力を尽くすとも」
「破壊神と同格の相手を、人間たちに倒せというのか!?」
「その通り。死力を尽くして挑むよう伝えるがいい。
儂はその悉くを蹂躙しこの世界に新しく名を刻もう」
「……こいつは、ジレンでも……っ!?」
「そんな……あんまりだっ!」
「どうした、偉大なる先達よ。
己惚れた新入りに身の程を教えてやるがよい。
できるものならな……!」
「「「「「…………っ!」」」」」
1対1だとヒノカミはビルスよりも弱いです。
しかし彼女は本来後衛であり得意分野は集団殲滅と他者のサポート。
人望と指揮能力も高く、能力も格下殺しばかり。
力の大会に混ぜるのはむしろ破壊神よりヤバイです。
それこそ、他の宇宙の選手全員掛かりで挑まないと第7宇宙は倒せません。