『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第139話

 

「……はぁ~~~~っ、生きた心地がしなかった……。

 だが、何とか生き延びることができそうだ……」

 

第7宇宙の自分の星に戻されたビルスは、ウィスの隣で盛大に安堵の息を吐いた。

 

「何を気を抜いておる。まだ大会は終わっておらん。

 そこで活躍せねば掌を返されるぞ」

 

「ぐっ、おい貴様!今回の件は一体どういうことだ!」

 

「まぁまぁビルスさま」

 

二人に続いて現れたヒノカミにビルスが食いかかるが、ウィスに止められる。

ちなみにこの彼女は分霊だ。

本体は未だに全王の宮殿に残り、力の大会の開催に備え大神官と共に準備を進めている。

 

「彼女なりに、宇宙の方々や神々を思っての行動なのです。

 とんでもない偉業ですよ?

 わずかでも全王さまに考えを改めていただくなど」

 

「なに?」

 

「……ウィス殿」

 

「不和を招かないよう、同じ宇宙の仲間であるビルスさまとは意識を共有しておくべきでは?

 まだ大会は終わっていないのでしょう?」

 

「……わかりました」

 

今回のヒノカミの振る舞いの理由について、天使たちは大神官から経緯を説明されている。

大会に参加する宇宙の神々には秘密だと厳命もされているが、確かに同じ第7宇宙の神であり今のところ残留が決まっているビルスは知っても問題ないだろう。

 

そもそも全王は上位4つの宇宙と上昇傾向がある第7宇宙を除いた他7つの宇宙を、神々だけでなく宇宙そのものを完全に消滅させてしまうつもりだった。

しかしその決定の場に居合わせたヒノカミが異議を申し立てた。

彼らには彼らの苦労が、それぞれの宇宙にはそれぞれの問題があるだろう。

ヒノカミはそれを知らない。知らないのだから、消されるべきか否かが判別できない。

なので彼女は自身の善性に従い全ての宇宙を生かす方向に動いた。

 

原因は宇宙ではなく運営する神々にあると主張し、少しでも犠牲が抑えられるように誘導。

理想は神々の消滅すら再考してもらうことだったがそこまでは不可能だと彼女は判断した。

成果を上げられずにいる彼らには確かに問題と責任があるので。

 

更に以前全王が悟空と約束していた大会を口実にして時間の猶予を設けさせ、さらに大会の報酬として消される神々に可能性を残した。

大会の基本方針や先ほどの司会進行でも、全て自分に任せてほしいと頭を下げて。

そこでの振る舞いで全王からの不興を買えば、助かるはずの自分が消されてしまう可能性もあったというのに。

 

「ちなみに第7宇宙は最初から残す予定でしたが、ビルスさまは消される予定だったそうです。

 もし先ほどの前哨戦を彼女が開催しておらず、ビルスさまが優勝できていなければ……。

 間一髪でしたねぇ。オホホホホ」

 

「笑い事じゃないぞ!……だからお前は連中に本気で取り組ませるため、無駄に挑発していたわけか」

 

「あぁ、第7宇宙の戦力は全王さまも認めるほど。

 単独で挑んで勝てるものかよ。

 他宇宙には徒党を組んで第7宇宙に挑み、打ち倒してもらわねばならぬ」

 

「そして、どこか一つの宇宙でも勝利させて生存者を増やそうということか?」

 

「理想は全王さまに『素晴らしい戦いだった。もう一度見たい』とのお言葉をいただくことじゃな。

 次回開催のためには神々を全員残しておいた方が都合が良い。

 その方向から説得すれば、思いとどまっていただく余地が生じる」

 

「ヒノカミさんも参加されるんですから、自力で優勝して超ドラゴンボールに願う方が早いのでは?」

 

「問題は当人たちが全王さまに低く評価されていることじゃ。

 そこを改めなければ蘇らせたところで再び消されて仕舞いよ。

 ……逆にこの期に及んで慢心したり諦めたりするようなら救いようがないな。

 たとえ優勝したとしても消される可能性がある」

 

特に過剰な挑発が必要だと感じたのは、第11宇宙の破壊神ベルモッドだ。

前哨戦でも手を抜くような振る舞いが見られ、勝ち目がないと判断したらすぐ負けを選んだ。

効率を重視するのは悪いことではないが、今の状況では彼の見切りの速さはマイナス評価にしかならない。

 

本戦の説明中も最後まで余裕を保っていた。

彼の後継であるトッポは、目測では悟空やベジータに匹敵する強者。

自軍の戦力によほどの自信があるのだろう。

 

だからヒノカミは参加を決めた。

これで絶対に第11宇宙が勝ち残れるという保証はないと悟ったはず。

消されたくないなら死に物狂いで戦力を揃えようとするだろう。

 

「……さて、それでは我らも早速動かねば。選手を集めるぞ。

 ここまでお膳立てしてやったんじゃから試合での手抜きは無しじゃ。

 第7宇宙最強のメンバーを揃える。これで敗れるようなら彼らは所詮それまでよ」

 

「ではとっとと地球に行くぞ。

 どうせ全員そこから募ることになるんだ」

 

「……まぁ、チームワークという点でもそれが最良であろうな」

 

 

宣言通り、ヒノカミは参加。

事の発端とも言える悟空は言うまでもない。

ベジータはブルマが第2子の出産を控えているため渋ったが、ウィスが超能力で彼女の体内から赤ん坊を取り出してしまった。

ヒノカミはそれでいいのかとも思ったがブルマが『楽で助かった』と言うので飲み込んだ。

本人もできれば参加したいと思っていたので、後顧の憂いが無くなったベジータの参戦も決定。

セルとピッコロは地球の神殿に残していた端末から事情を聴いている。この二人も参加。

ラディッツと悟飯も不都合はないそうだ。

この二人もまたビルスとの戦いの後で儀式を行い、超サイヤ人ゴッドに覚醒している。

とは言えしばらくは呪霊錠を用いた筋トレしかしていなかったので、戦闘感を取り戻すために精神と時の部屋の修行を許可。

今回はブウにも助力を願った。事の重大さからセルも不満を呑み込んだ。

ただブウは1年に1回、冬眠のように長期間眠ってしまう習性があり丁度眠りについたばかりだった。なのでいざサタンに連絡をかけると『出られない』と言われた。

それを聞いたセルがすぐさまブウのもとへ向かい、『変速』でブウの時間を操作して一瞬で2カ月を経過させた。

これでブウの参加も可能になった。睡眠リズムが崩れたブウはセルに文句を言ったが彼は聞く耳を持たなかった。

互いに口だけで手を出さない辺り、二人の関係も幾らか改善されたということだろう。

 

これで8名。

後は地球人4人組から誰か二人に参加してもらえればと考えていた。

しかし了承をもらえたのはクリリン一人だけだった。

ヤムチャと天津飯は彼らの娘の授業参観日と被ってしまっている。

チャオズは自分が4人の中で最弱と自覚していたため、足手まといになるのでできれば遠慮したいとのこと。

残る一人は誰にしようかと考えていたところで、ヒノカミが心当たりがあると言う。もちろんモナカではない。

 

 

そして翌日。彼女が連れてきたのが。

 

「サイヤ人のブロリーじゃ。こっちはその父親のパラガス殿。

 皆仲良くするんじゃぞー」

 

「……よろしく」

 

「「「なにぃぃぃいっ!!!!??」」」

 

悟空・ラディッツ・ベジータに続くまさかの純血のサイヤ人。

ブロリーは彼のあまりの潜在能力を恐れたベジータ王により、生まれて間もなく過酷な環境の惑星に飛ばされたそうだ。

父親のパラガスは息子の救助に向かったが宇宙船が故障してしまった。

なので40年近く二人で必死に生き延びていたらしいが、大界王神となったヒノカミが宇宙全域を調べるうちに彼らの救難信号を受信。

その後安全な無人惑星に連れて行き、しばらくは分霊の1体を常駐させ彼らの面倒を見ていた。

 

「何故貴様はいつも『報連相』を欠かすんだっ!!」

 

「伝えたらすぐに勝負したいとか言い出すじゃろお主ら。

 彼はちと感情の制御が苦手で暴走しがちでな。

 幾分マシになったんで協力を要請した。まだ不安はあるが……」

 

「ふんっ、同じように暴走した貴様にはお似合いだな!

 ……それで、そいつは強いのか?」

 

「パワーだけなら貴様にも迫るぞ。

 暴走されれば儂とて手を焼く」

 

「なんだとぉ……!?」

「あらまぁ」

 

「そりゃすげぇ!オラ孫悟空。そんで、カカロットだ。

 いつかオラとも戦ってくれよな!」

 

「あ、あぁ……」

 

困惑しつつも、ブロリーは差し出された悟空の手を握り返した。

パラガスは自分たちを追放したベジータ王に復讐するために生きていた。父を慕うブロリーも同様だ。

しかしヒノカミと出会い宇宙の状況を尋ねてみれば、とっくに惑星ベジータごとベジータ王は消滅しサイヤ人も数名を残して全滅していると聞かされる。

そしてベジータ王を殺したのはフリーザであり、結果的に彼らは追放されたことで死を免れたと判明。

それでもパラガスはベジータ王の息子であるベジータに敵愾心を持っていたのだが。

 

「こちらのパラガス殿は過酷な惑星で、たった一人でブロリーを育ててきたのじゃ。

 親としては貴様より遥かに上じゃぞ?

 爪の垢を煎じて飲め。そして働け」

 

「うっ……ぐぅっ……」

 

「アハハ!まぁ掃除や洗濯はやってくれてるけどねぇ~~」

 

彼は完全に嫁に尻に敷かれており、加えてこの星の住人達にからかわれていた。

それでも言葉を詰まらせ睨みつけるだけで手は出さない。毒気を抜かれるには十分な光景だ。

 

(……そう簡単に晴らせる恨みではないと理解しておる。

 しかしどうかベジータ王の子ではなく、一人のサイヤ人として奴を見てやってくれ)

 

(……努力、してみます……)

 

パラガスは自分たちを救助してくれたヒノカミには恩がある。

彼は何とか怒りを呑み込み、サイヤ人の生き残りたちと向き合っていこうと決めた。

ヒノカミは彼が息子を復讐の道具として育て上げたことは受け入れがたいが、状況から情状酌量の余地がある。

ブロリー本人も父を大切に思っており、ならば余計な口を出すべきではないと判断していた。

 

 

 

そして当日。

前回の第6宇宙との試合とは違い、今回の会場に行けるのは選手と神々と天使だけ。

戦士たちは家族や仲間たちからの声援を受けて、試合会場である『無の世界』へと向かう。

 




フリーザがいないため彼らの救援はヒノカミが行いました。
大会後、ブロリーとパラガスも地球へ移住することとなります。
地球がまた一歩、更なる魔境へと進化しました。
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