『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第141話

 

「げげげ、げげげげげ!げらげらげら!

 新しい!新しいぞ貴様ら!!」

 

「くそっ、なんだよ、コイツは……!」

 

予想通り、他宇宙の戦士の大半は一斉にヒノカミに襲い掛かって来た。

あぶれた一部に悟空とベジータが強襲しており、他の第7宇宙のメンバーへの襲撃は散発的。

 

他の宇宙の戦士たちも皆、悟空ほどではないが十分な強さを持つ強者だった。

しかし彼らがどれほど果敢に挑もうと、ヒノカミの上に浮かぶ巨大な上半身だけの鎧人形が腕と剣を振るい熱線を飛ばし、接近と攻撃を阻んでしまう。

前衛を支援しようと後衛の戦士たちが一斉に気弾を放つが、鎧人形の陣羽織がほどけて六角形の鱗が広がり、壁となって攻撃を弾き飛ばしてしまう。

 

「うぉぉぉっ!!」

 

それでも一部の選手が何とか鱗の障壁の内側に飛び込み、あるいは鱗の隙間を縫って気弾を届かせるが。

 

「くけけけ」

 

ヒノカミが左腕を前に突き出すと彼女の体を球状のシールドが覆い、全てはじき返してしまった。

領域ではない。そちらは両手を合わせる必要がある。

 

「何故だ……あれは我が第9宇宙の破壊神、シドラさまの技だぞ!?」

 

ついでヒノカミは空いた右手の指と指の間に光るカードのようなものを何枚も出現させ、シールドを解除すると同時に投げつける。

 

「ぐあぁぁっ!」

 

「これは、ベルモッドさまの!?」

 

更に逆立つ彼女の髪が9つに別れ、先端が膨らむ。

 

 

「げらげらげら!」

 

「「「うぁぁぁぁーーーっ!!!」」」

 

そして先端から全周囲に向けてエネルギー弾の雨が発射された。

これは第8宇宙の破壊神、リキールの技だ。

 

彼女は先に行われた力の大会・前哨戦にて破壊神たちの戦いを観戦した。

それだけで彼女は彼らの技を記憶し、模倣してしまったのだ。

流石にオリジナルには遠く及ばない。精々7割か8割の再現度。

それでも人間相手ならば過剰すぎる威力だ。

未だに死人が出ていないのが不思議なくらい。

 

 

 

「無茶苦茶だ……あんなの無茶苦茶だぁ……!」

 

第6宇宙の破壊神シャンパが頭を抱えて半泣きになっている。

他の宇宙の神々も似たような様子。

今回ばかりは同情しか感じないと、ビルスは申し訳なさそうな顔で彼らから視線を逸らす。

 

 

 

「げげ、げげげ!いやぁ参った参った。

 誰も彼もが益荒男ばかりではないか!」

 

「よく言うぜ、くそっ!」

 

「ちょっと!女だっているのよ!

 益荒『男』なんて一括りにしないで頂戴!!」

 

「おっと、これは失礼をした。しかし宇宙は違えど儂も界王神。

 強く新しき人間たちがこうも育っているのを体感すると、嬉しくて仕方なくてな。じゃが……」

 

ヒノカミは笑みを消し、一人の戦士を指さす。

 

 

「貴様は新しくないな、ジレン」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「つまらんな……実につまらん。

 戦士たちが宇宙の垣根を越えて力を合わせて戦っておるというのに、貴様だけがワンマンプレー。

 はっきり言ってこの場で貴様の存在は足手まといじゃぞ?」

 

彼は単独で突撃を繰り返し、その度に返り討ちに合っている。

彼が無意味に近づくと、同士討ちを避けるために他の戦士たちが攻撃を躊躇ってしまう。

 

確かに彼は破壊神に匹敵する戦士であるようだ。しかし破壊神ではない。

並んでいるのはパワーやスピード。『破壊』の力は持っていない。

時間を、空間を、重力を、概念を。

ヒノカミが操る多彩かつ特殊な攻撃や防御を無効化し突き破る力を持っていないのだ。

 

今のところ圧倒的に振舞えているが、彼女自身が定めた『殺傷禁止』のルールは周囲の思う以上に彼女の動きを制限している。

強すぎるから加減が大変なのだ。大勢に一斉に襲い掛かられればどうしても動きが鈍る。

そして『飛行禁止』。彼女もまた飛ぶことはできない。

周囲を大勢に囲まれれば気功波の反動で移動したり転移を使うのも難しくなる。

体力を失う前に、遊撃の悟空たちに追い詰められる前にそれに気付けるか。

異なる宇宙の戦士たちが真に力を合わせて彼女を場外に突き落とすことができるか。

それが人間たちの、彼女に対する唯一の勝ち筋と言っていい。

 

なのにジレンがその足並みを乱し続けている。

今必要なのは『個の力』ではなく、『数の力』だというのに。

 

「第11宇宙が誇るプライド・トルーパーズ最強の戦士と聞き期待したが……ただの己惚れた阿呆だったとはな。

 名前を覚える価値すらない。失せろ、雑兵」

 

「なんだと……ぐっ!?」

 

「「「ジレン!!」」」

 

ヒノカミが重力と空間を操作し、ジレンを遠方で戦う悟空とベジータの傍に弾き飛ばした。

 

「悟空、ベジータ。『ソレ』はお主らにやる。適当に遊んでいいぞー」

 

「貴様ぁっ!!」

 

着地し態勢を立て直したジレンがヒノカミに突撃しようとするが、彼女は『カチカッチン鋼』の巨大な壁を作り出し行き来を遮断してしまった。

飛行を禁止された状況でこの高さを飛び越えようとジャンプすれば、気弾で弾き飛ばされ場外一直線だ。

 

「……さぁ、改めて戦いを続けようぞ!

 お主らの力を、名を、儂の魂に新しく刻むがよい!!」

 

「……ちっくしょおーーーーっ!!」

 

彼らは気付かなくとも、足手まといが居なくなり彼らの勝率は上がった。

今度こそ人間たちは一丸となって、傲慢な神に反抗する。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「だりゃぁっ!」

「はぁぁっ!」

 

「ぐっ……どけぇっ!!」

 

悟空とベジータに襲われるジレンは、彼らを意に介さず再びヒノカミを倒しに向かおうとする。

ちなみに彼女の作った巨大な壁のこちら側にいた他の宇宙の戦士は、すでに全員場外だ。

各宇宙の戦士の半数以上がヒノカミに当たっているため敗退した宇宙はまだないが、ここにいるのはジレン以外は第7宇宙の戦士。

当然、誰一人として欠けてはいない。

 

「おーイテテ……滅茶苦茶強ぇなぁ、コイツ。

 なんでばあちゃんはコイツを弱ぇなんて言うんだ?」

 

「なんだ孫悟空。そんなことも気付いていないのかね?」

 

「セル」

 

一丸となった第7宇宙の戦士たちが、ジレンと対峙する悟空の傍に近付く。

 

「おめぇはわかるんか?」

 

「むしろ何故わからないのか疑問なくらいだ。

 そいつは未熟すぎる。直視に耐えん」

 

「ふざけるな……オレは正義に全てを捧げた!

 完璧な正義を遂行する、それがオレの信念!

 お前たちとはその重みが違う!」

 

「やはりな。やはり貴様は足りていない。

 それではどれほどの強さを得ようと完璧からは遠ざかるばかりだ」

 

「なんだと……!?」

 

「どういうことだよ、セル?」

 

「ブウやブロリーは知らんだろうが……かつてもう一人の私と戦ったときのことを覚えているかね?」

 

それは既に10年以上前の話。

平行世界の未来にて、歪んだ形で生まれた完全体のセルと対峙した時のこと。

 

「あの戦いの最後、私は奴に何と言った?」

 

「へ?……え~と……」

 

クリリンが思い出そうとするが、覚えていた悟飯がその前に呟き反芻する。

 

「……『人間は不完全な生き物だから力を合わせる。

 どれほどの力を持っていようと、他者を否定した者は人間として不完全』……?」

 

「「「!?」」」

 

「その通り。コイツはもう一人の私と同じ過ちを犯しているのだよ」

 

本質は悪ではなく善のようだが、彼のそれは善は善でも『独善』。

彼は『お前たちとは違う』と言った。

本人にそのつもりがあろうがなかろうが、他者を見下し信用していないのだ。

 

「母上との戦い、私も観戦させてもらっていた。

 自分を上回る強大な相手を前にしても貴様は一人で戦おうとした。

 貴様は他者と協力『しない』ことを選んだつもりだったのかもしれんが、そうではない。

 貴様は他者と協力『できない』のだ。

 それこそが貴様が不完全であるという証明に他ならん」

 

「オレが……『できない』……!?」

 

「貴様に足りないのは『チームワーク』だ。

 『ワン・フォー・オール(一人はみんなのために)』、『オール・フォー・ワン(みんなは一人のために)』。

 この言葉の本当の重みを、我々が貴様に教えてやろう……!」

 

「ぐ……!」

 

徒党を組んだ9人の矮小な人間が、孤独な最強のヒーローに挑む。

 

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