『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第142話 ジレン

 

「あっちとこっちで別れちゃった」

 

「お気に召しませんでしたら辞めさせますが?」

 

「ううん、いいよ。でもパッと見は似てても、中身は全然違うのね」

 

舞台の中央にそびえ立つ真っ黒な壁が、選手を二分している。

一方では、40人近い数の戦士たちが巨大な鎧を操る女神に挑み続けている。

しかし圧倒的に女神が優勢、全滅させることは余裕だろう。

だが今のところ彼女に挑む者たちの中から脱落者は出ていない。

勿論、別宇宙の戦士たちがそうならないように助け合っているからというのもある。

それでも一番の理由は女神に彼らを場外に突き落とすつもりが無いからだろう。

彼女の目的は全王を楽しませること。

故に戦士たちが己の全力を披露できるよう、機会を与え続けている。

 

もう一方もまた、大勢が一人に挑む構図。

こちらも一人の方が圧倒的に強い。しかし大勢を退けるには至っていない。

巧みな連携に少しずつ、少しずつ追い詰められていく。

 

「いろんな人間と、いろんな戦い方があるのね。面白いね!」

 

「全王さまのお気に召したようで何よりでございます」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「「だぁぁぁぁっ!!」」

 

「ぐぅっ、このっ!」

 

ジレンの矢面に立つのは超サイヤ人ブルーとなった悟空とベジータ。

この二人はウィスやビルス、ヒノカミを相手に修行を重ねており、第7宇宙の中でも連携して戦うことが特にうまい。

本人たちはどちらかと言えばジレンに負けず劣らずのワンマン気質であり、出来るなら一人で戦い一人で倒したいと思っているところだろう。

しかしジレンは一人では勝てない相手だと理解している。

そして個人の趣味嗜好よりもチームとしての勝利を優先する理性は持っていた。

 

「魔閃光ーっ!」

「ダブルサンデー!」

 

二人の攻撃で生じる隙を縫うように、二人の超サイヤ人ゴッドが気功波で攻撃を加える。

頑丈なジレンには大したダメージは無かったが、視界を遮られ動きは止まった。

 

「づぇあっ!」

「えへへ!」

「黒鞭!」

「捕まえたぁ!!」

 

「!?」

 

ピッコロとブウが腕を伸ばし、セルとクリリンがエネルギーの縄を巻きつけ、ジレンの四肢を縛り一瞬だけ動きを封じる。

 

「ブロリー!やれーーーっ!!」

 

「うぉぉぉぉおおおおお!!」

 

「ごはぁっ!!!」

 

超サイヤ人になったブロリーが、がら空きのジレンの胴体に全力の拳を叩きこんだ。

彼は精神面は未熟だが身体能力だけなら破壊神すらも上回りかねない強者。

その一撃はジレンの腹に深々と突き刺さり、ジレンはカチカッチン鋼の壁の方に吹き飛び激突した。

 

「あらら……壁、壊れちまった」

 

「方角までは気にする余裕がなかったからな。

 外に向けて撃ち出せたなら今ので場外にできていたのだが……」

 

「あ……すまん」

 

「何言ってんだよ、オレたち全員のミスさ。

 ここから取り返そうぜ!」

 

「……あぁ」

 

 

 

壁が壊された音と衝撃は、ヒノカミに挑んでいた戦士たちの動きをも止める。

 

「ジレン!?」

 

「無事か!?しっかりしろ!!」

 

「が……はっ……」

 

同じ宇宙のプライド・トルーパーズが満身創痍のジレンに駆け寄る。

彼らはジレンに肩を貸して立ち上がらせようとするが。

 

「がぁぁぁあっ!!」

 

「「「ジレン!?」」」

 

彼は仲間たちの差し伸べた手を強引に振り払った。

 

「負けなど……許されない……!

 戦うのは、オレ一人で十分だ……一人でも、戦える……!

 亡き師ギッチンが目指した、完璧な正義に、オレは……!」

 

「『一人で』、か……」

 

震えながら立ち上がったジレンの言葉を聞いたヒノカミは、彼の矛盾を指摘する。

 

 

 

「ならばなぜ貴様の師は、貴様と言う弟子を取った?」

 

 

 

「……なんだと?」

 

「一人で十分だと考えているなら、弟子なぞとらんじゃろ。

 貴様の存在そのものが、貴様が師の教えをはき違えていることの証明じゃよ」

 

人は必ず死ぬ。寿命の無い神でさえもいつかは消える。

真に永遠の存在などない。そう見えるものはまだ滅びの時が来ていないだけ。

だから託すのだ、次に。自分がいなくなっても大丈夫なように。

 

「謎が解けたわ。貴様のような独り善がりが組織に属している理由。

 師に無理やり入れられたんじゃろ?」

 

「っ……」

 

「やはりな。貴様の師は貴様の過ちに気付き、正すために組織に放り込んだ。

 しかし師は貴様が気付く前に亡くなり、結局貴様は答えを得る機会を失いさ迷い続けている。

 ……と、言うことでよろしいかな、ベルモッドどの?」

 

ヒノカミはベンチに座る第11宇宙の破壊神に答え合わせをお願いした。

 

「チッ……あぁ100点満点だよ。

 ギッチンはジレンを強くするためにプライド・トルーパーズに入れたんじゃねぇ。

 他人を信じることを、仲間と力を合わせることを知ってほしかったんだ。

 ……自分で気付かせたかったらしいがな」

 

「そ……そんな……!」

 

「けけけ、それはギッチンどのに悪いことをした。

 したり顔で語った己を恥じるばかり。汗顔の極みじゃの」

 

ジレン以外の戦士たちも、ジレンを追って来た第7宇宙の戦士たちも、ヒノカミとベルモッドの会話を聞いて動きを止めている。

ヒノカミは満足気に頷いた後、浮島を見上げて声を上げた。

 

 

「全ーーーーーーっ!!」

 

「「「?」」」

 

「なぁにーーー?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

それに全王が応えたことで、彼女が全王を呼び捨てにするどころか略称で呼んだと気付き、神々はまたも悲鳴を上げる。

 

「すまんが儂、今からちょっと本気で暴れるわ!」

 

「え?もっと暴れるの?もっとすごくなるの!?」

 

「おうとも!ただ折角の大会が台無しになってしまうんじゃが……構わんかなぁ!?」

 

 

「……いいよーーーー!」

 

「ありがとなーーー!!」

 

 

「「「「「………………」」」」」

 

全王の会話を妨害するのは不敬だから。

しかし神々や戦士たちが言葉すら出せず硬直していたのはそう考えていたからではなく、ヒノカミの無礼に言葉を失ったから。

 

そして、彼女の恐ろしい発言の意図を理解するまでに時間がかかったから。

 

「……ばあちゃん?」

 

「詫び代わりじゃ。貴様が嫌でも理解できるよう叩き込んでやろう。

 一人の弱さを……数の暴力の恐ろしさを……!」

 

「「「!?」」」

 

「第7宇宙の諸君。お主らももう好きに動いて良い。

 いや、いっそ儂に挑んできても構わんぞ?

 折角の祭りじゃ、派手に行こうではないか」

 

「おいヒノカミ!貴様一体何をする気だ!?」

 

ベンチからビルスの叫び声が聞こえるが、ヒノカミは無視して天神武装を解除。

掌を合わせて意識を集中する。

 

 

 

「心身気影」

 

 

 

 

 

「無限増殖、『哀れな行進(サッドマンズパレード)』」

 

 

 

溢れ出した無数の女神の分霊が、舞台の上を埋め尽くし始めた。

 

「「「ぎぃやぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」」」

 




・『哀れな行進(サッドマンズパレード)

ヒーローの世界のヴィラン、トゥワイスの技。
『二倍』の個性で自分の複製を作り出し、複製は更に自分の複製を生み出し、倍々の繰り返しで自分自身を増やしていく。
複製は本体と比べ強度が落ちるが、本体がやられない限り永遠に増殖し続ける。
ヒノカミはそれを自分の分霊を造る『心身気影』で模倣し再現した。
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