『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第144話 力の大会・終結

 

舞台が粉砕されて生じていた土煙が晴れていく。

ただ一人ベンチに帰ってこなかったのは。

 

 

「勝者、第7宇宙!」

 

「ふぅ」

 

『領域』で爆発の衝撃を免れ、『浮遊』で空を飛んでいたセルだった。

 

 

 

「「「……はぁぁーーーーーーっ!?」」」

 

「セル!おめぇ、飛べたんか!?」

 

「何を言う。この背中の立派な『翅』が目に入らないのかね?」

 

「いやどう見ても飛べる構造じゃねぇだろそれ!」

 

「個性は『術』ではなく、『身体能力』の一部じゃからなぁ。げらげら」

 

「知っていたのか!?先に言え!

 貴様ら親子は揃いも揃って秘密主義か!!」

 

「フフフ、そう褒めてくれるな」

 

「「「褒めてねぇよ!!!」」」

 

騒ぎ立てる第7宇宙と対照的に、他の宇宙の面々は俯いて黙りこくっていた。

無理もない。これで界王神と破壊神の消滅が確定したのだ。

選手には、神々への恩義を感じている者も多い。

彼らの消滅を、己の消滅より重く感じている者すらいる。

 

 

「それでは、敗退した宇宙の神々は……」

 

「お待ちください」

 

大神官の発言を遮ったのは、舞台のあった空間に一人で佇むセルだった。

 

「唯一の生存者である私には、願いを叶える権利があるはず。

 そちらを先にお聞き入れいただきたい」

 

「それは後ほど超ドラゴンボールを使用して」

 

「いえ、私の願いにドラゴンボールは必要ないのです」

 

セルは全王の浮島の前にまで移動し、空中で跪く。

 

 

 

「我が願い、我が母の願いは『全宇宙の神々の消滅を思いとどまっていただく』ことです」

 

 

 

「「「な!?」」」

 

「……願いを叶える権利は貴方のものです。

 界王神のものではありませんよ?」

 

「『母の喜ぶ顔が見たい』。それが私の願いです。

 ならばそれは母の願いを叶えることと等しいはず」

 

「……ヒノカミさん?」

 

「お願い致します。

 やはり儂は、特別扱いされるのは性に合いませんので」

 

「……全王さま、いかがなさいますか?」

 

 

 

「うん、いいよ」

 

「「「!?」」」

 

「みんな頑張ってたし面白かったから、消すのはやめてあげるのね」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

 

「おい、一体どういうことだ……?

 アイツはオレたちを消そうと……」

 

「そうではなかったということだ。

 大神官さま、もう明かしても?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

大会に参加しなかった4人の破壊神が許可を得て、消滅を免れた神々に説明する。

始めから、ヒノカミは全ての宇宙と神々を守るために行動していたことを。

宇宙そのものが消される事態を避け、神々が生き残る道を模索していた。

過剰な挑発も皆に全力を出させ全王から正しく評価してもらうため。

 

「ついでに言うなら、第7宇宙の誰が勝利しても同じ願いをすることになっていた」

 

「「「ビルス!?」」」

 

「選手たちの願いは真っ当であれば、大体ヒノカミさんが叶えてしまいますからねぇ。

 彼らは特にドラゴンボールに願うことがないんですよ」

 

「オラは思いっきり戦えたから満足だしな」

 

「奴を超えるのは、オレ自身の力で成し遂げねば意味が無い」

 

「「「同感だ」」」

 

「僕は、おばあちゃんにはずっとお世話になってますので」

 

「オレも……お父さんも助けてもらったし……」

 

「うまいお菓子いっぱいくれた!」

 

「……まぁ、お前たちが全王さまに認められるかは、お前たち次第だったがな」

 

 

「……チッ、完敗だ!

 第7宇宙に完全敗北だよチクショウ!」

 

ビルスのライバルを自称していた破壊神キテラが不服そうに、しかし笑みを浮かべて投げやりに叫んだ。

 

 

 

「でも超ドラゴンボールが余っちゃった。どうしよっか」

 

「そうですね。いかがなさいますか?」

 

「ねぇセル、他に願いはある?

 ちゃんとしたお願いなら使ってもいいよ?」

 

「いえ……母上は?」

 

「ん~~~……あ、そうじゃ。では一つ」

 

「なぁに?」

 

ヒノカミは親指を立て、第11宇宙のジレンを指さす。

 

「あれの師とやらを蘇生していただきたい」

 

「「「なっ……!?」」」

 

「自分のことに使わなくていいの?」

 

「自分のことは自分で何とかしますので。

 試合中に儂が余計な暴露をしてしまった負い目もあります。

 ……というか、破壊神なみの力を持つアレが心に迷いを抱えたままというのは危険極まる。

 お目付け役と指導役は必要でしょう。

 それが転じてこの世界の、そして儂のためとなります」

 

「……『情けは人の為ならず』だっけ?」

 

「おっ、覚えておったか。偉いぞ全」

 

「えへへへ~~~~」

 

 

 

「あ……ぁ……?」

 

「……第7宇宙には借りばっか作っちまったなぁ。

 おいビルス、なんか願いはあるか?」

 

「そうだな、我らにできることであるなら……」

 

ベルモッドに続いて破壊神たちが声を上げる。

 

「だったら一つ、頼みがある」

 

「言ってみろ」

 

 

 

 

ヒノカミ(アイツ)を引き取ってくれ」

 

「「「「「「断る」」」」」」」

 

「願いを言えと言ったのは貴様らだろうがぁっ!!!」

 

「うるせぇ!あんな劇物飲み込めるかっ!

 一滴で宇宙が汚染されるわ!!」

 

「ていうかすでに胃痛がすんのよ!キリキリしてんの!」

 

『BEEP!BEEP!!』

 

「アイツが界王神になったのはお前のせいなんだろ!?

 お前が責任もって対処しろよ!!」

 

「「「そうだそうだ!!!」」」

 

ベンチの上で破壊神たちが取っ組み合いを始めた。

まるで前哨戦の焼き直しだ。

 

 

 

「やれやれ……それでは皆さんを元の宇宙に帰してしまいましょうか」

 

「いやいやお待ちくだされ、大神官どの。

 祭りの後と言えば『アレ』に決まっておるでしょう」

 

「なになに?何をするの?」

 

 

 

「宴じゃ。食って騒いで、酒と一緒に禍根を飲み干すんじゃよ」

 

 

 

大神官が再生した舞台にヒノカミがテーブルと大量の料理を具現化し、選手と神々を強引に着席させた。

全王から『無礼講』と言われても第7宇宙以外は皆委縮していたが、渋々運んだ料理の味に手が止まらなくなり、やがて賑わいが広がっていく。

100人近い者たちが、人間も神もなく、美食を喰らい酒を飲み肩を組んで歌い出す。

『こんなに楽しいなら定期的に開いてもいいかも』と全王が口にし、またも悟空がそれに食いついたことで、『力の大会』は数年おきに開かれることが決まった。

敗者の消滅は無し。ただし明らかに弱体化している場合はその限りではないとされた。

消える寸前だった神々も全王の本気度は伝わっている。

次回に備えて各々の宇宙で人間たちを育て始めるだろう。

それは転じて、全ての宇宙の成長と発展に繋がる。

 

そこで神々は、ならば大会にルールを追加させてほしいと願い出た。

全王は、全員で話し合って決めた一つだけならと許可した。

議論するまでもない。12の宇宙、23柱の神々の心は一つだったのだから。

 

 

「「「「「ヒノカミ(キサマ)は出禁だぁっ!!!!!」」」」」

 

「げらげらげら」

 

こうして宴は続き、やがて第一回『力の大会』は閉会を迎えた。

 

 

 

 

しかし強制的に全員参加となった宴において、ただ一人断りを入れ、即座に帰還した者がいた。

己の宇宙に戻り、己の星に戻り、己の故郷に戻り。

 

「あ……あぁぁっ……」

 

逆光に照らされる小さな人影を見つけ、巨漢の青年は大きな瞳から涙をあふれさせ。

 

 

「ジレン」

 

「師匠!」

 

 

二人は力強い抱擁を交わした。

青年の大きな瞳からは、大粒の涙が零れ落ちていた。




これにてオマケも完結とします。
ドラゴンボールの世界のこれからの物語は、皆さまの想像にお任せいたします。

夕方に設定紹介を2分割で投稿して区切りとさせていただきます。
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
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