『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ストックに余裕がある今のうちは、1日2回投稿することにしました。多分1週間くらいで1回に戻すと思います。


第4話 緑谷 出久

緑谷 出久。

現在中学1年生。父は単身赴任で母親と二人暮らし。

勉強はできる方だが運動は苦手で、体育の成績はかなり低い。

近所では有名なヒーローオタクでヒーローに並々ならぬ憧れを持っているが、昨今では非常に珍しい『無個性』であり、学校ではいじめを受けている可能性有。

 

「これを見る限りではヒーローからは程遠いが……」

 

根津校長から受け取った件の少年のプロフィールに改めて目を通し呟く。

ぼさぼさの髪とそばかす。

気弱そうな表情。

体格はひ弱で頼りない。

だが仮にナイトアイの予知がなかったとしても、彼をOFAの後継者に選ぶ可能性はあったのかもしれない。

路地裏でおそらくいじめっ子だろう子供たちに囲まれる緑谷少年。

後ろに怯える一人の子供をかばい、震えながら立ちはだかる姿を目にして、そう思った。

 

「どけやデク!」

 

緑谷に襲い掛かろうとする、リーダー格らしい金髪の少年。

おそらく個性だろうが、彼の掌から爆発が生じている。

それをぶつけようと振りかざしたので、さすがに見過ごせないと個性を使い介入した。

 

「うぉっ!?」

 

「仮にもヒーローの前で、個性の不正使用と暴行とは良い度胸じゃな?」

 

金髪の少年の個性が暴発し、全員が一斉にヒノカミの方を向く。

 

「そこの爆発小僧。現行犯じゃ。

 そばかすの少年は聴取がしたい。

 他の連中は個性までは使っておらんようじゃな。

 すぐに立ち去るというなら見逃しても良いが?」

 

状況を理解したいじめっ子たちは金髪の少年を置いて一斉に逃げ出していく。

 

「っ!?テメェら!」

 

「かっかっか、美しい友情じゃな。

 類は友を呼ぶとはよく言ったものよ」

 

いつの間にかいじめっ子たちだけでなく、緑谷の後ろにいた子供もいなくなっていた。

守ってくれた相手を置いてというのは薄情だと思うが、ヒノカミとしては都合が良い。

 

「さて小僧。個性を用いて市民を傷つける者、それはヴィランじゃ。

 ヒーローとしてはヴィランを捕らえ、警察に突き出さねばならぬが……」

 

「……っ!」

 

仮称、爆発小僧は俯いて歯噛みしている。

さすがにこの年齢で逮捕されることはないだろうが、補導歴がつけば彼の将来は絶望的。

そしてここで下手に抵抗すれば余計に状況が悪くなるとわかっているから、無言を貫くしかない。

 

「……しかし儂は資格こそ残っているものの、半ばヒーローを引退した身でな。

 深く深ーく反省し、被害者である少年に頭を下げるというなら、

 この場は見逃しても良い。どうする?」

 

「っ!……わる、かった……」

 

「ん-?聞こえんのー?」

 

「……すんまっせんでした!」

 

「かっかっか。まぁ良し」

 

勢いよく下げられた爆発頭が小刻みに震えている。

歯ぎしりも聞こえてきた。

表情は見えないが、さぞ屈辱に染まっていることだろう。

 

「お主が今まで見逃されてきたのは、若さゆえの温情か、周囲が騒動になることを嫌ったか。

 いずれにせよただの気まぐれじゃよ。

 罪を犯せばヒーローだろうと裁かれる。

 自分だけが特別などという幼稚な考えは早々に捨てることじゃな」

 

「……チッ」

 

「そしてお主もじゃ少年。

 他者を守るために身を挺した気概は認めるが、勝ち目のない状況に無策で挑むのはただの阿呆よ。

 腕力、知力、権力、財力、なんでも良い。

 意思を通したいなら力を示せ」

 

「は、はいっ!」

 

さてこの場はこれで治まった。

きっかけはできたが、あとはどうやって緑谷を連れ出し話をするか。

会話が途切れてしまい悩んでいると、緑谷がおずおずを声をかけてきた。

 

「……あの、もしかして貴方は……ヒノカミ、ですか!?」

 

「……こりゃ驚いた。

 お主の年で儂のことを知っておるとは」

 

「やっぱり!すごいよかっちゃん!本物だ!

 ナンバー2ヒーローであるエンデヴァーの妹にして、ナンバー1ヒーローオールマイトの元サイドキック!

 3年前に突如姿を消した、伝説のトップヒーローだよ!!」

 

「ハァ!?……アイツか!!」

 

どうやら爆発小僧の方もヒノカミのことを思い出したようだ。

それにしても、互いにあだ名で呼び合う間柄だったとは。

もしや本当は仲が良かったのだろうか。

ともかく会話の取っ掛かりができたのはありがたいと勢いに任せることにした。

 

「自己紹介の手間が省けたの。

 フレイムヒーロー『ヒノカミ』じゃ」

 

「み、緑谷、出久です!!」

 

「……爆豪勝己だ」

 

緑谷は緊張し声が上ずっている。

ヒーローオタクというのは本当らしい。

そして爆発小僧あらため爆豪。

彼の視線と声色からわずかにトゲが取れている。

どうやらヒノカミを、彼なりに敬意を払う相手と認めたらしい。

 

「あのっ!僕、聞きたいことがあって!」

 

「なんじゃ?活動休止の理由以外なら答えるぞ?」

 

差し出された彼のノートに、久しぶりのサインを書きながら応じる。

それを受け取り大事そうに胸元に抱えた緑谷は、意を決して尋ねた。

 

「個性がなくても、ヒーローになれますか!?」




史実より2年早く、緑谷出久を見出します。
主人公の個性は名前から推測できると思いますが、はっきりと明かすのは先になる予定です。
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