彼女の敵への容赦のなさや死生観がぶっ飛んでるのは、生まれた時代と個性のせいです。
蛇腔での戦い以後の世紀末みたいな世界で育ったので、今の時代から見れば思考が物騒なのは当たり前。
学生たちは間もなく夏休み。
しかしヒーロー科の生徒に休日などあるはずがなく、夏休み中はずっと林間合宿を行う予定になっている。
楽しみだ、何をしようかとA組一同は盛り上がるが、期末テストで赤点になれば参加できないと宣告され今度は危機感を露わにする。
しかし緑谷と爆豪はずっと反応が薄い。数日前、ヒノカミに呼び出されてから授業や訓練以外はずっとこの調子だ。
(……ヒノカミはどうして今、僕らに秘密を明かしたんだろう)
(年寄りくせぇんじゃなくてホントのババアだった、くらいしか感想がねぇ)
ヒノカミは3代前のOFA継承者の生まれ変わり。衝撃の事実ではある。
しかし彼女は語るだけ語って、その後は特に何も言わなかった。
OFA関係者には全員伝えているがそれ以外には秘密で、と念を押したくらいだ。
確かにOFAに関わる者としては知っておくべき情報だろう。だが今である理由がわからない。
現在進行形で暗躍しているAFOの話ならともかく、彼女の話は緑谷が卒業してプロになり、正しくOFA継承者を名乗れるようになってからの方が良いのではないか。
今聞かされても余計な混乱が残されただけ。ヒノカミがオールマイトのサイドキックになった理由がはっきりしたくらいだ。
これが知人や過去の有名人なら印象も変わるだろうが彼らは轟舞火としてしか彼女を知らない。
敬意を払えというわけでもないだろう。そんなことを気にする性格ではないし、緑谷たちはすでに彼らなりに敬意を払っている。
「話したのかい……!?このところ彼らが上の空なのはそれかー……」
「オール・フォー・ワンとの戦い直前に明かすか、いっそ墓まで持っていこうかとも思っとったが……丁度良い機会だったのでな。相乗りさせてもらった」
「まったく、キミは勝手なんだから……」
オールマイトが責めてもヒノカミはいつも通り笑うだけ。話は終わりだと立ち去ってしまった。
師である先代の恩人、OFAの偉大なる先達である彼女に、オールマイトは強く出られない。
堅苦しいし周囲に余計な疑惑を振りまくからと、敬語やそれらしい態度は禁止されているが。
少年たちはヒノカミに残された時間がわずかだと知らない。
この機会を逃せばタイミングがなかっただけだと気づくはずもないだろう。
彼女は2度生まれ変わった。しかし3度目があるとは限らない。
ナイトアイの予知が映すのは『轟舞火』の未来。来世があるのかはわからない。
仮にもう一度生まれ変わったとしてもそれは記憶を持った別人。少年たちの知る轟舞火ではない。
大人の自分たちでも彼女の死の運命を知ってショックを受けた。
直前、もしくは直後になって知らされたとしたら、少年たちはどれほど傷つくだろう。
「……よし!」
オールマイトは職員室に戻り、完成したばかりの教員会議の資料を書き直し始めた。
そして時は流れ、期末試験が始まる。
実技試験を控えるA組生徒たちの前に並ぶのは、教師であるヒーローたち。
生徒たちは去年までの実技試験が入試でも使ったロボを相手にしたものだという情報を得ていたようだが、残念ながら今年から内容が変更となる。
USJ・保須への敵連合襲撃事件を受けて、これからは対ヴィランを意識したより実戦に近い形式を重視することとなった。
実技試験の内容は、二人一組での教師との直接対決。チームと対戦相手はすでに決定済み。
それぞれ割り当てられた演習場にて、ヴィランを演じる教師が生徒を襲う。
生徒は教師にハンドカフスをかけるか、二人の内どちらかが演習場の出口であるゲートから脱出すれば勝利。
制限時間30分以内に勝利条件を満たせなければ敗北となる。
なお、実力差を考慮して教師は手足に自分の体重の半分の重りを身に着けることになっていたのだが。
「このクラスには明らかに突出した生徒が3名いる。
諸君らも理解しているだろうが……轟、爆豪、緑谷だ。
こいつら相手は正直教師でも厳しい。ハンデを背負うのは試練にならないと結論付けた。
よって、この3名を含めたチームの相手をする教師はハンデ無しとなる」
3名以外の生徒たちがざわつく。彼らの実力が高いことは知っているが、それでも教師相手となれば安心できない。
彼らと組めれば楽に試験をクリアできるのではと考えていた一部生徒たちは、内心で一斉に手の平を返した。
「気になるだろうからこの3名を含めたチームと対戦相手を先に発表する。
まずは轟と……八百万がチーム」
「私!?」
「相手は」
「……儂じゃ」
一歩前に出たのは、完全武装のヒノカミ。
轟は表情を変えなかったが、一筋の汗を流した。
「そして爆豪と……緑谷がチーム。相手は……」
「私が、する!!」
「「!!?」」
ナンバー1ヒーロー、オールマイト。
それが一切のハンデ無しで襲い掛かってくる。
あまりの壁の高さに爆豪たち以外の生徒も息を呑む。
「……リベンジマッチだ。今度こそ……倒すつもりでかかってこい!!」
二人はオールマイトとの初めての出会い、そして初めての戦いを思い出す。
手も足も出なかった苦い記憶、しかし今なら。
「「……お願い、します!!」」
二人は抜けていた気合を入れなおし、オールマイトに負けない気迫で答えた。
年下のサイドキックに対する、オールマイトや他のOFA関係者の遠慮した態度。
主人公が病気だからというのもあるでしょうが、彼女の方が本当は年上でしかも先輩だからです。
馴れ馴れしく接しつつも態度がにじみ出るように書いてきたつもりですが……うまく表現できてたかな?